比江島慎

デ・ラファエレHCの信頼「チャンピオンはどんな時でもチャンピオン」

11月7日、宇都宮ブレックスは琉球ゴールデンキングスとのダブルオーバータイムの激闘を79-76で制し、連敗を3で止めた。

宇都宮はトレイ・ケル、琉球はデイビッド・ヌワバと共に攻撃の起点が欠場したことも響き、両チームとも相手の激しいプレッシャーに苦しみタフショットを強いられる。その結果、前半を終えて琉球の26-18とリードの、ロースコアの我慢比べとなる。

後半に入ると、宇都宮は本来のやりたいボールムーブを取り戻し、守備のズレを次々と作り出すことで第3クォーターはフィールドゴール17本中11本成功と高確率でシュートを沈め、26-9のビッグクォーターを生み出して逆転する。このまま一気に押し切りたい宇都宮だったが、第4クォーターに入ると琉球の粘りに再びオフェンスが停滞し、オーバータイムへと持ち込まれる。

互いに譲らない一進一退の熱戦はダブルオーバータイムに突入するが、宇都宮は同点で迎えた残り12秒、比江島慎が値千金の3ポイントシュートを沈めると、琉球のラストポゼッションを抑えて大きな勝利を挙げた。

ゲームウィナーを決めた比江島だが、この試合は5得点に終わった。ラストショットを打つ前はフィールドゴール11本中1本成功のみ、5リバウンド4アシストを挙げるも5ターンオーバーとパフォーマンスは低調だった。それでもウォルター・デ・ラファエレヘッドコーチは、比江島に最後を託すことに迷いはなかったと語る。

「コーチ陣はすべての選手を信頼しています。その最たる例がマコ(比江島)です。この試合の彼はシュートが不調でしたが、私は彼を心から信じています。彼はチャンピオンですから、最後のシュートを決めてくれると確信していました」

「マコには、『君は何かを証明する必要はない』と伝えました。重要なのはシュートを打つことです。ただ、11本、12本と続けて外していたら、次にシュートを打つには勇気が必要です。だから彼には、『チャンピオンはどんな時でもチャンピオンで、君はシュートを決められるし、外しても大丈夫だ』と言いました」

比江島慎

「どういう風にプレーをしなければいけないのか段々と分かってきてはいます」

指揮官の厚い信頼に応えた比江島だが、「正直、個人としてのパフォーマンスは最低だったと思います」と厳しい自己評価を下す。同時にラストショットはエースの責任を全うする覚悟を持ってプレーしていたと明かす。「ミスを恐れるのではなく、強い気持ちがないと今日のような展開では決めきれないです。最後の最後で、やっとメンタルが整ったプレーができました。最後はシュートを打ち切ろうと決めていたので、入ってホッとしたのが一番の感情かもしれないです」

最後に千両役者ぶりを発揮した比江島だが、今シーズンはスタッツも低下し苦しんでいる。36歳となり肉体面の衰えと向き合いながら、これまでと大きく違う新しいシステムにフィットするのも簡単ではない。「難しいシーズンになっているのは間違いないです。年齢的な部分もありますが、それを言い訳にはしたくないです」と率直な思いを明かす。

ただ、同時に確かな進歩も感じている。「今やろうとしているシステムの中で、どう自分のパフォーマンスを出していけばいいのか、まだ探している部分はあります。ただ、どういう時に攻めたい、どういう風にプレーをしなければいけないのか、僕もヘッドコーチも段々と分かってきてはいます」

今シーズンの宇都宮について、指揮官は勝利と育成の両方を目指していると明かす。「我々の目標に、若い日本人選手を成長させることがあります。成長するためには彼らのミスを許容しないといけない。時にはそれで試合に負けることもあるかもしれないです。だが、そうでなければ成長していかないです。若手の成長は、このクラブが私に求めていることです」

そして、デ・ラファエレヘッドコーチは「私たちの哲学は日本人選手に力を与えることで、外国籍選手はそれをサポートする準備ができていないといけません」と続けるが、メインハンドラーのケルが離脱中の今、彼の役割を担いつつ若手を支えられるのは比江島しかいない。

比江島も「自分がオフェンスを引っ張らないといけない。そこはしっかりと意識してやっていきたいです」と強い責任感を持ってプレーしている。クラッチシュートを決めたが「今日は本当にダメでした」と反省を口にするなど苦しい戦いは続くが、宇都宮の浮上は比江島の復調なしではあり得ない。