「毎試合『何かを残さないといけない』という思いで」
富山グラウジーズは10月31日、11月1日と千葉ジェッツに連勝。2試合ともリバウンドで千葉Jで大きく上回った上で、ブライアン・アンゴラを起点にインサイド、アウトサイドとバランスの取れたオフェンスで千葉Jを制した。富山はこの結果をもって今シーズン8勝5敗と好調。プレーオフ1回戦のホーム開催権を得られる地区2位も射程圏内だ。
これまでの富山の歩みを振り返ると、昨シーズンは18勝42敗、2023-24シーズンには4勝56敗でB2降格を経験するなど苦難の連続だった。しかし、今シーズンはジュリアン・マブンガとジョシュア・スミスの2大エースを軸に宇都直輝、岡田侑大、前田悟、松脇圭志と個性豊かなメンバーたちで39勝を挙げた2020-21シーズン以来となる、ポストシーズン進出の期待が高まる戦いを披露している。
今のスタートダッシュを牽引するのはメインハンドラーのアンゴラ、そしてゴール下の要ダラル・ウィリス ジュニアだが、外国籍だけでなく日本人選手もそれぞれの役割をしっかり遂行し、質の高いチームバスケットができていることが一番大きい。中でも縁の下の力持ちとして好調を支えているのが、202cmのサイズを誇る貴重な日本人ビッグマンのラシード ファラーズだ。
ラシードは31日の試合で、古巣相手に25分7秒出場で15得点6リバウンドと活躍。この試合、富山は第3クォーターに24-11と突き放したことが最大の勝因となったが、このクォーターでラシードは4本のオフェンスリバウンドをもぎとった上で9得点と大暴れし、勝利の立役者となった。
ラシードは千葉Jで4シーズン、京都で3シーズンを過ごしたが、チームの主力として1年間を戦い抜いた経験はない。しかし今シーズン加入した富山では外国籍ビッグマンの控えとしてチームに欠かせない存在となり、ここまでの13試合で平均17分12秒出場、4.9得点、3.5リバウンドを挙げる活躍を見せている。
31日の試合後、ラシードは、「ここまでプレータイムを得られたシーズンはありませんでした。今は『出られて満足』というより、『毎試合何かを残さないといけない』という思いでプレーしています」と、手応えと共に危機感を持ってコートに立っていると語った。
そして愛着ある古巣相手に恩返しをできたことに笑みを見せた。「ジェッツはお世話になったチームなので特に気合が入っていました。コーチから言われたことをやり、スタッツに残らない仕事やリバウンドで味方をヘルプする動きにフォーカスして、うまく表現できたと思います」

「代表入りは常に目標として持っています」
今シーズンからBリーグは、オン・ザ・コートフリーの新ルールが導入され、日本人選手が出番をつかむ難易度が一気に高まった。これまで安定した出番をつかめていなかったラシードは、崖っぷちに立ったような思いで今シーズンに臨んでいると話す。
「(ここまで出番を得られると)全く思ってなかったです。『今シーズン結果を残せなかったら、僕は本当にそこまでの選手なんだ』と覚悟を決めて移籍を決め、今シーズンに全てを捧げようとオフシーズンから取り組んでいたので、ここまでプレータイムを得られたことはうれしいです」
そして、ダビー・ゴメスヘッドコーチから信頼を得ている理由をこのように分析する。「ダビーコーチが僕に求めているのはディフェンスです。1対1で点を取ってほしい、ポストから点を取ってほしいと言われたことはないです。僕は身長の割に動ける身体能力があると思うので、ディフェンスでスイッチして1番から5番まで守ってほしいという指示がよくあります。そこをベースにしながら、今はオフェンスリバウンドでハッスルして、ゴール下で確率よくシュートを決めたりできているのが良い部分だと思います」
ラシードに大きな信頼を寄せているのはコーチだけではない。「外国籍選手たちは、僕が良くない時にめちゃくちゃ発破をかけてきます」と、実力を認められているからこそ苦言を呈されていることに喜びを感じていると言い、千葉J戦の第3クォーターの大暴れも同僚の叱咤に対する発奮があったと明かす。
「調子が良くないとボロクソに言われる時もあります。今日もハーフタイムで外国籍に『お前、もっと頑張れ』『もっとリバウンドを取ってくれ』と言われました。それが良い意味で本当に悔しかった。ブライアン(アンゴラ)やアミール(シムズ)は日本が初めてで、これまで日本人ビッグマンがどういう立ち位置だったのかを知らないからこそフラットな目で見てくれて、彼らのそういった言葉に影響されたこともあります」
また、ゴメスヘッドコーチはラシードについてこのようなことを話していた。「日本にビッグマンが不足しているのは周知の事実ですが、私から見て彼のピック・アンド・ロールに対するディフェンスは日本人ビッグマンの中でトップクラスです。彼は代表入りに値する選手です」
ラシード自身も「昔からめちゃくちゃあります」と代表入りへの強い意欲を示す。「大学生の時、一度合宿に呼んでもらえましたが、そこから所属チームでプレータイムを得られず呼ばれていません。代表入りは常に目標として持っていますし、選ばれるためには皆さんの印象に残るプレーやスタッツを残せないといけないので、毎試合アピールするつもりで頑張りたいです」
今のBリーグの外国籍選手は、NBAは別格として世界的に見てもかなりレベルの高いタレントが揃っている。その中で毎試合、彼らとマッチアップできるのは大きな経験であり、そこで勝利に貢献しているラシードのプレーは評価されるべきだ。今月末には『FIBAワールドカップ2027アジア予選』のWindow5があるが、その代表候補としてラシードが合宿に招集されても全く驚きはない。それくらいのプレーを今の彼は見せている。
