「共に歩んできた成長のプロセスについて、誰もまともに語ろうとしない」
セルティックスを長年牽引してきたジェイソン・テイタムとジェイレン・ブラウンの強力デュオは、今夏の大型トレードによって唐突にピリオドを打つこととなった。
そして、セルティックスのホーム開幕戦でニックスを107-103で破った直後の記者会見では、36得点9リバウンド7アシストという圧巻の数字を残したにもかかわらず、テイタムが多くの時間を割いたのは、試合の振り返りではなくSNS上で過熱したブラウンとの摩擦についてだった。
発端は、テイタムが自身のYouTube動画で語った「トレードには世界中の誰よりも僕自身が驚いた」という発言だった。これに対し、セブンティシクサーズへ移籍したブラウンがインスタグラム上に「青い帽子(スラングで“嘘”を意味するcap)」の絵文字を投稿。ネット上では瞬く間に2人の間には確執があったのではないかという憶測が飛び交った。
ブラウンの投稿について問われたテイタムは、深く息を吐き出すと、メディアや世間が作り上げるシナリオに対して数分間にわたり率直なもどかしさを吐露した。「彼に対して敵意や確執、悪意なんて一切ない。一番悔しいのは、彼がセルティックスを去った途端、僕たちが一緒に成し遂げてきた数々の功績や勝利、つかみ取ったチャンピオンシップ、そして共に歩んできた成長のプロセスについて、誰もまともに語ろうとしないことだ」
2人はともにドラフト全体3位指名を受け、2016年にブラウンが、その翌年にテイタムがセルティックスに加入した。2人が牽引したセルティックスは8シーズンで5度の東カンファレンス決勝進出を果たし、2022年にファイナル進出、そして2024年にはマーベリックスを破ってファイナル制覇を成し遂げた。その過程で、チームが勝てない時期を迎えるたびに「2人のケミストリーには限界がある」、「どちらかをトレードに出すべきだ」という外野の声が常につきまとっていた。
しかし、テイタムはそのような見方を真っ向から退けた。「僕らはシャック&コービーなんかじゃない」
かつてレイカーズで王朝を築きながらも、互いのエゴを衝突させ大々的に不仲が報じられたシャキール・オニールと故コービー・ブライアント。テイタムはその歴史的なデュオを引き合いに出し、2人の関係性が決して破壊的なものではなかったと主張した。
「揉め事なんて存在しない。メディアがドラマを仕立て上げればPVや閲覧数が稼げるのは知っているけど、僕はそんなものに興味はない。誰もがそれぞれの感情を抱く権利があるし、人生にはいろいろな局面がある。ただ、僕ももう2児の父親だ。ネットの詮索に巻き込まれて関係性を消費されるような年齢じゃないんだ」
テイタムによれば、トレードが決まった当日、すぐにブラウンへ電話とテキストメッセージを入れたという。だが、すれ違いのままSNS上で波紋が広がってしまった。また、10月上旬に行われたプレシーズンゲームでは、試合前のウォームアップ中に2人が言葉を交わさなかったことがクローズアップされた。
2024年のファイナルMVPにはブラウンが輝き、同年のパリオリンピックにはテイタムが選出されるなど、2人は常に比較され続けてきた。昨シーズン、テイタムが右アキレス腱断裂の大ケガで長期離脱を余儀なくされた際も、ブラウンはチームを東カンファレンス2位へと力強く牽引した。結果として今夏、ポール・ジョージとのトレードで10年間過ごしたボストンを去ることになったが、2人が築いたボストンの黄金期は揺るぎない事実だ。
「ただ顔を合わせて話せばいい。怒鳴り合うような話じゃなくてね。お互いの立場を理解することはできるはずだし、特にこのビジネスの世界では、そうした直接の対話がもっと必要とされているんだ」
かつてボストンの看板を背負い、頂点を極めた2人のエース。ユニフォームの色が変わっても、テイタムの胸にあるのは確執ではなく、共に戦い抜いた日々への誇りと、直接の対話によってくだらない雑音を終わらせたいという切実な願いだった。
