「コートに足を踏み入れるたびに試合を支配したい」

キングスは他のチームのような熱狂や期待感がほとんどないまま2026-27シーズンをスタートさせた。2022-23シーズンに2006年以来のプレーオフに進出するもファーストラウンド敗退。その後は再びプレーオフ進出から遠ざかり、46勝、40勝、22勝と勝ち星も減っている。勝てないにもかかわらずベテランに依存したチームをついに解体したが、それでもドマンタス・サボニスやキーガン・マレーに2023年当時の勢いはなく、かと言ってチームの将来を託せるような若手もいない。今シーズンも22勝前後、というのが大方の予想だ。

メディアデーで最も注目されたのがベン・シモンズなのも、チームの苦しい事情を表している。10年前のドラフト全体1位指名選手で、オールスターに3回選出されている大型ポイントガードではあるが、フロントやファンと対立してセブンティシクサーズを去った2021年からは膝や腰のケガを繰り返している。

2024-25シーズンにネッツとクリッパーズでプレーした後、昨シーズンはどのチームとも契約を結ばずに1年を過ごした彼を『もう終わった選手』と見なす向きもあった。しかし、1年間の休養でコンディションを整え、キングスに加わった彼は、復活に燃えている。

「コンディションは万全で、何の制限もなくプレーできる」とシモンズは言う。「本来いるべき場所に戻って来たという感覚だ。この1年、しっかり時間をかけて自分の身体と向き合った。1年間プレーせずに治療に専念することが、これまでのキャリアで最高の決断だったと思う」

その間はほとんどボールに触れることもなく、試合をテレビで見ることもなかったという。「ただただ自分の心と身体を正しい状態に戻そうとした。バスケができないのは寂しいけど、身体が万全じゃないままプレーするのは難しい。今回は精神面より純粋にケガの問題だったけど、批判は勝手な雑音だと思ってシャットアウトした。みんな再生数が欲しいだけ、自分のポッドキャストをバズらせたいだけ、と思って気にしないようにした。以前は限界だと思うこともあったけど、今は全然気にしなくなった」

キングスは勝てないと思われているし、勝つつもりがないから戦力としてどれだけ機能するか未知数のシモンズと契約したと見られている。シモンズはそれを承知の上で、低評価を結果で払拭するつもりだ。

「このチームは周りからほとんど期待されていない。それは僕自身がずっと背負ってきたものでもある。だからお互いに共感できる部分があるんだと思う。僕たちには反骨心がある。ただ、僕のそれは他人ではなく自分自身に向けるものだ。1年間プレーから離れることは、NBAにもう戻れないリスクのある選択だった。でも僕自身がそこに賭けて、今こうしてこのチームにいて、自分のプレーでチームに貢献できると感じている。それをコート上で見せるつもりだ」

その方法は? と問われたシモンズは「試合を支配することだ。コートに足を踏み入れるたびに試合を支配したい」と答えている。

「誰も僕たちに期待していないけど、それをポジティブにとらえている。僕たちがコート上で勝てる力があることを示せば、周囲の見方は変わってくる。このチームなら十分にやれると思っている。僕はもう『かつての自分』に戻れたと感じている。それはマインドセットの問題なんだ。ここからは毎日自分を追い込んで、どんどん良くなっていく。開幕が待ちきれないよ」