「タイムアウトを取ることは2つのネガティブな意味をもたらします」
女子日本代表は『FIBA女子ワールドカップ2026』の初戦でマリと対戦し、102-97とハイスコアリングゲームを制した。
日本は試合序盤からサイズの有利を生かしたマリのペイントアタックを止められず、WNBA選手のシカ・コネには21得点に加え、7本のオフェンスリバウンドを取られるなどゴール下を制圧された。また、巧みな連携によるカットインからイージーシュートを許し、効果的な3ポイントシュートも決められ、内と外の両方でやりたい放題にやられた。
その結果、出だしから主導権を握られ、第4クォーター残り5分までビハインドの展開が続いた。最終的に20本の3ポイントシュート成功と、日本の生命線である長距離砲の爆発で勝ち切ったが、ディフェンス面では反省しかない一戦となった。
日本(FIBAランキング10位)の所属するグループリーグAはドイツ(同11位)、スペイン(同6位)、マリ(同18位)の4カ国で、FIBAランキングが示すようにマリは最も地力で劣る。もちろんワールドカップに簡単な試合はないが、それでもマリ相手にディフェンスが全く機能しなかったことは大きな不安が残る。
コーリー・ゲインズヘッドコーチは守備で苦しんだ理由として、大会直前に強化試合を行ったベルギーとマリが全くタイプの違う相手だったことが影響したと分析する。「マリはペイント内で58得点を挙げました。ゴール下が相手の強みであることは分かっていました。ただ、ベルギーはどのポジションにも3ポイントシュート成功率40%の選手がいるので、ヘルプに躊躇していました。この動きが身体に残っていて、今日の試合では最初ヘルプに行くのが遅れてしまった。後半になって、積極的にヘルプに行くことで激しいディフェンスができるようになりました。バスケットボールではありがちなことで、正しい指示を出し正しいプレーをしようとしてもアジャストするのに時間がかかることがあります」
また、ゲインズヘッドコーチらしい采配と言えばそれまでだが、負けたらグループリーグ突破が崖っぷちとなる試合で、劣勢となってもタイムアウトを取らなかったのは印象的だった。特に第3クォーターの出だしに一度は逆転するも、すぐに再逆転を許し61-71とこの試合最大のビハインドを負った時は、さすがにタイムアウトを取るべきタイミングだったのではないか。
その疑問を指揮官にぶつけると、タイムアウトに対する自身のスタンスをこのように語った。「私の恩師であるポール・ウェストヘッド(NBAとWNBAで優勝している名将)からコーチングとは練習やビデオセッションですべて行うものと教えられました。タイムアウト中に、状況を一変させる奇跡的な特効薬や画期的なアイデアを与えられるわけではないです」
「選手たちは何をするべきか分かっていますし、タイムアウトを取ることは2つのネガティブな意味をもたらします。まず、相手に対して、私が焦っていると感じさせてしまう。そして相手に休む時間を与えてしまいます。私は相手に1試合を通してプレッシャーをかけ続けたいです。そして苦しい状況になっても打開できるように十分な練習を積んできました」
マリは前半に一回、後半に3回タイムアウトを取ったのに対し、日本は試合を通じて一度も取らなかった。指揮官は、このやり方がチームに浸透していると自信を見せる。「これが私たちのやり方で、選手たちも分かっています。私が冷静さを保ち、後ろから支えていることを示すことで、彼女たちは何でも成し遂げられる。時にはタイムアウトを取るべき状況もあるかもしれないですが、それは私のコーチングスタイルではないです」
選手はこの采配をどう感じているのか。林咲希に聞くと「慣れました」と言い、「良くない状況になっても自分たちで打開しないといけない気持ちにさせてくれます」と、選手たちに迷いはない。
悪い流れになってもタイムアウトを取らないのは定石とは違うが、これこそゲインズのコーチング哲学だ。あとはタイムアウトを取らないアドバンテージを生かす、日本のやりたい走るバスケを貫くだけだ。
