ジョナサン・クミンガ流出は損失ではなく『計算通り』

ジョナサン・クミンガのティンバーウルブズ移籍は、ホークスにとっては数カ月前に手に入れた戦力を何の見返りもなく手放したように見える。しかし、今オフ全体の動きを追えば、巨額の不良債権処理から始まったプロジェクトをただ完了させたに過ぎないことが分かる。

昨年夏のホークスは、セルティックスがサラリー削減のために放出したがっていたクリスタプス・ポルジンギスをネッツを含めた3チーム間トレードで獲得した。この時点ではトレイ・ヤングとポルジンギスを両エースとして押し立て、ジェイレン・ジョンソンやダイソン・ダニエルズの若手を引っ張る形で東カンファレンスの上位進出を目指した。

しかし、チームはこれに『オールイン』したわけではない。ポルジンギスの契約は1年3000万ドル(約45億円)で、チームにフィットしない場合のリスクは最小限に抑えられていた。シーズン序盤からトレイがケガで離脱する誤算が起き、その間に若手が爆発的成長を見せるうれしい想定外が重なると、フロントは重大な方針変更を決断する。生え抜きエースのトレイをトレードに出し、ポルジンギスも放出。この時に目をつけたのが、ウォリアーズでローテーション外に置かれ、トレードを要求していたクミンガだった。

若手中心に切り替える以上、ポルジンギスは必要ない。セルティックス時代に患い、完治したはずの起立性頻脈症候群も再発したポルジンギスはコンスタントにプレーできていなかったが、クミンガを放出しなければチームの雰囲気が悪くなるばかりのウォリアーズは不利を承知でトレードに応じた。

こうして獲得したクミンガは、2026-27シーズンまで契約を残していたが、これはチームオプションで破棄できるホークスにとって扱いやすいものだった。ホークスでもシックスマンとして起用されたクミンガは、平均12.3得点に留まる『まずまず』の出来。これでは新シーズンに2430万ドル(約36億円)の価値はないと判断したホークスは、チームオプションを破棄した。

プレースタイル的にも、ホークスがクミンガを中長期的な構想に組み込む可能性は低かったと言える。クミンガはオンボールで長所を発揮する選手で、逆の場合にパフォーマンスを出せないからウォリアーズで出番が限られた。ホークスでボールを持つべきは『次期エース』のジェイレン・ジョンソンであり、彼からボールを取り上げる選手は必要ない。

逆に、同じトレードで加入したバディ・ヒールドを、ホークスは300万ドル(約4億5000万円)の違約金で解雇できたにもかかわらず、1000万ドル(約15億円)の契約を保証して彼を新シーズンもホークスに残した。ジョンソンやCJ・マッカラムのためにスペースを広げるピュアシューターとして、ヒールドの能力は必要とされた。

不良債権になりかけていたポルジンギスを上手く放出し、クミンガの『試験運用』は成果が出なかったが彼の助力で若い選手たちがプレーオフを経験できた。そしてクミンガの契約満了により空いたキャップスペースは、堅実な補強に活用した。サンダーで優勝経験があり、まだ働き盛りのルーゲンツ・ドートとアーロン・ウィギンズ、キングスからデビン・カーター、マーベリックスからライアン・ネムハードという新戦力の獲得だ。

ジョンソンを筆頭とするヤング・コアを中心に、マッカラムやドートのような経験あるリーダー、ジョック・ランデールやヒールドのような一芸に秀でた選手で周囲を固め、それでもなおタックスラインの手前でサラリー総額を抑えている。

しかも、マッカラムとドート、ランデールの契約は今シーズン限りで、他の選手も含めると来夏には5000万ドル(約75億円)規模のキャップスペースが空くことになる。サラリーの柔軟性が他の何よりも価値を持つ今、ホークスはまずこのロスターのポテンシャルを見極め、その上でシーズン中にも来夏にも自由自在の戦力補強ができる。東カンファレンスの競争が激化するであろう新シーズン、ホークスからも目を離すべきではない。