長谷川「圧倒的に自信となる試合になった」

将来の海外挑戦を見据える若手有望選手で構成されるB.LEAGUEの育成・選抜プロジェクト『B. LEAGUE UNITED(以下B.UNITED)』の2年目の活動が終了した。

アメリカ・ラスベガスでNBAサマーリーグを戦うチームと対戦した昨年に続いての実施となった今夏、B.UNITEDチームはオーストラリアへ遠征した。同国プロリーグでB.LEAGUEとはパートナーシップ関係にあるNBLの2チームと練習試合を行うなどの活動を通し、選手たちは貴重な国際経験を得た。

活動期間は8月2日から10日と短期間ではあったが、海外の地でB.LEAGUEとは異なるプレースタイルの選手やチームとの対戦によって化学反応が起きたのか、選手たちの言葉には抑えきれない高揚が滲み出ていた。

B.UNITEDは9日の遠征最終戦で、NBLの名門でかつて馬場雄大も所属したメルボルン・ユナイテッドと対戦。68-83で敗れはしたものの途中までは接戦を演じ、確かな手応えを得る内容となった。

そのことは、自チームとは異なる役割のセンターとしてプレーする時間が長くなった渡邉伶音(アルティーリ千葉)や長谷川比源(横浜エクセレンス)がそれぞれ「数回はディフェンスでフィジカルに一人で守ることができた場面もありました」、「プレーのすべてがうまくいったわけではありませんが、圧倒的に自信となる試合になった」と振り返ったことが指し示していた。

元シカゴ・ブルズアシスタントコーチで、今回B.UNITEDの指揮官を務めたダミアン・コッター氏の指導の影響もあり、新井楽人(横浜ビー・コルセアーズ)や中村拓人(群馬クレインサンダーズ)、岡田大河らを筆頭に、選手たちは果敢にリングへアタックする場面を創出した。このあたりは年々レベルの高い外国籍選手が流入し、総じてフィジカルレベルの上がっているB.LEAGUEでプレーしてきたことの恩恵であるようにも思われた。

貴重なオフシーズンの時間を割いてB.UNITEDに参加した理由や、2試合の感想を求められる中、選手たちの多くが口にしたのが「刺激」という単語だった。経験が浅く、日々の伸び幅の大きい若手選手たちにとって、海外の地でのプレー体験は頻繁に訪れるものではないだけに、そう述べることは自然なことだった。

メルボルン・ユナイテッド戦の3日前、B.UNITEDは昨シーズンのNBLで3位となった強豪、サウスイースト・メルボルン・フェニックスを相手に60-113と大敗を喫した。選抜チームを編成し、わずかな練習機会のみで臨む難しさはあったにせよ、フィジカルに戦うオーストラリア人の圧の前に、B.UNITEDは十全にプレーをさせてもらえなかった。

しかし、だからこそメルボルン・ユナイテッド戦までの短時間で気持ちを入れ直し、総じて体躯に勝る相手に善戦をすることができたことは評価に値した。若手育成の手腕に定評のあるコッターヘッドコーチをして「非常に誇らしい」と言わしめる内容だった。

海外挑戦へ、背中を押す経験に

今シーズンで11年目を迎えるB.LEAGUEはビジネス規模においても競技面においても成長著しく、待遇も年々向上しているが、「2030年までに5人のNBA選手輩出」という目標が示すようにプレーヤーたちの海外挑戦を後押ししている。B.UNITEDというプロジェクトが企画されたのもそうした方針を表しているだろう。

一方で、選手の待遇や彼らを取り巻く環境が良くなればなるほど、あえて海外へ飛び出していく利点は小さくなる。リスクが大きくなると言ってもいい。だが、今回B.UNITEDに参加した選手たちはいずれもが高みを目指す意志を示し、自身の成長に繋がるのであれば海外に挑戦したいといった旨を述べる者も少なくなかった。

長谷川は今回のB.UNITEDへの参加の理由を「居心地の良い環境でやっているとその先の成長がない」と語った。湧川颯斗(三遠ネオフェニックス)は「B.LEAGUEでも結果を残していないので」としつつ、昨シーズンはブルズでプレーをした「河村勇輝さんが僕の理想。日本代表に入ってワールドカップやオリンピックでインパクトを残して」から羽ばたいていきたいと話した。

中には岡田や渡邉のように、国外のリーグでのプレー願望をもっと直接的なもの言いで口にする選手もいた。「海外とかNBAで活躍できる、世界のトップレベルの選手になるために作られたのがB.UNITEDの目的。こうした経験を自分のチームに持ち帰って今後の結果で返していかないと意味がない」と語った岡田。スペインやフランスのプロリーグに所属した経験を持つ左利きポイントガードは、再びヨーロッパを中心とした海外でプレーしたいという「気持ちは本当に強い」と付け加えた。

渡邉の場合は、父の出身地でもあるオーストラリアでやってみたいという思いが急速に大きくなった様子だった。B.UNITED遠征に先立って渡邉はアルティーリのチームメート、黒川虎徹とともにNBLブリズベン・ブレッツの練習に参加し、トレーニングを共にする中でNBLに挑戦したいという気持ちが芽吹いてきたという。B.UNITEDで再びNBLの選手とコートを共にすることでその思いはさらに強くなったと言えた。

「まず前提としてB.LEAGUEでしっかり活躍して日本代表で戦える選手になりたいというのが一番の目標なんですけど、そこを目指していく中で自分がなりうる最高の選手になるために、NBLというチョイスがあるんだったらどんどん挑戦したいです」

このように話した20歳の渡邉。メルボルン・ユナイテッド戦後には、昨季まで長年NBAで活躍し、渡邉がプレーの参考にしてきたというジョー・イングルスにディフェンスやスティールをする時の意識などについて質問をした。

昨年、NBAの下部組織Gリーグの国際ドラフトで指名を受けた長谷川も、海外でのプレーの希望について「間違いなくあります」と力強く語りつつ、B.UNITEDの活動は短い期間ではありながらも濃密なものとなったと振り返った。「NBAという世界一のリーグでやってきたコーチの下でワークアウトや試合ができたことは明らかに自分の財産になりました。1週間という期間で成長ができオフシーズンを充実させられたので、参加をして良かったと思っています」

B.LEAGUEの国際事業グループを統括する、執行役員の岡本直也は遠征終了後、今夏は日本代表を中心とした様々な大会があり選手の選抜が容易でなかったと話しつつ、その中で「次の世代を中心的に担う選手たちを連れてこられたのは一つ前進だった」と総括した。

立ち上がってからまだ2年のB.UNITED。リーグとしてはこのプロジェクトを継続的に実施していくことが肝要であると考える。アメリカ、オーストラリアと遠征を行ってきたが、今後はどの国へ選抜チームを派遣し、どのような取り組みをしていくのか引き続き注目だ。