八村や河村が個で打開し、韓国に快勝

バスケットボール男子日本代表は8月15日、韓国代表との『買取大吉カップ2026 (東京大会)』に88-66で快勝した。

試合開始直後から異彩を放ったのは、2年ぶりに代表に復帰した八村塁だ。圧巻のフィジカルと圧倒的なシュート力で、瞬く間にチームに2桁リードをもたらした。八村がベンチへ下がると韓国の猛追を受ける場面もあったが、第2クォーターには再び八村が力ずくで局面を打開。引き寄せられるように河村勇輝や富永啓生らも個のスキルを発揮し、一気に点差を広げていった。

インサイドではジョシュ・ホーキンソンが相変わらずの安定感でゴール下を支配し、泥臭いディフェンスやオフェンスリバウンドでインパクトを残した馬場雄大や高島紳司の貢献も見逃せない。みなが自らのストロングポイントを発揮し、韓国を圧倒した。

会場のファンは圧巻のプレーに酔いしれた。しかし、その爽快感の裏側で違和感が残ったのも事実。この日の勝利は、これまでにテーマに掲げていた連動したチームバスケットの成果ではなく、八村を筆頭に個の力で強引にねじ伏せた印象が強かったからだ。

試合後の記者会見で、桶谷大ヘッドコーチは八村と河村という世界基準の『個』がもたらす影響について、次のように語った。「チームでなかなか点が取れない時間帯に個で打開できること。チームとして強くなるためには、尖った部分がないとチーム力は上がっていかない。これくらい尖っている2人がいるということは、自ずとチームの総合力も上がってくると思っています」

指揮官が言うように、世界と戦う上で個の強さは不可欠だ。八村自身も「僕らが入って、今までやってきたバスケのケミストリーを崩さないように、プラスのパワーが今日の試合で出せた」と言い、河村も「世界になればなるほど、個で打開しないといけない時間帯も必要となってくる。僕たち2人が入ることによって、そういった役割も増えてくる」と、個の威力がもたらすポジティブな側面を口にした。

だが、その『個の尖り』に依存したことは否めない。特に第4クォーターにはオフェンスの連動性が影を潜め、噛み合わないシーンやターンオーバーが散見され、14-22と唯一下回った。河村は「韓国だけではなく世界レベルで勝つためには、40分間自分たちのバスケットを維持し続けないといけない。特に第4クォーターはいろいろなラインナップだったものの、僕もターンオーバーを2回してしまったり、ストロングポイントを出せなかったのは自分の責任だったと思う」と反省を口にした。

「チームとしてちゃんと設計されていないのが一番の問題」

この『チームとしての未熟さ』を象徴する出来事が会見で起きた。NBAでプレーする八村や河村に対し、ルールやスタイルの違うFIBAバスケへの個人の対応力にフォーカスした質問が投げかけられると、桶谷ヘッドコーチ自らマイクを握り、毅然とした口調で割って入った。

「ちょっといいですか、(質問が)個人的な話になりすぎていて。塁がボールを持った時に誰がカットするのか、スペーシングをどう取るのか、そういったところがまだチームとしてちゃんと設計されていないのが一番の問題です。NBAだから、FIBAだからという話にしてほしくなく、これはチームとして僕自身がまだまだ選手に伝えられていなくてこういう状況になっているので。もうちょっと皆さん、良い質問をしてほしい」

指揮官は選手個人をメディアの追及から守り、自らに矢印を向けて準備不足を肯定した。もちろん、合流から数日しか練習していない事情はあるが、日本の目標はアジアで圧勝することではなく、ワールドカップでアジア1位を獲得し、ロサンゼルスオリンピックに出場すること。チームとしての連動性やケミストリーが伴わなければ、世界の強豪を相手にした時、個の力だけでは戦っていけない。

とはいえ、桶谷体制の日本は個の尖った力を存分に発揮させ、それをチームバスケに昇華させていく方針。だからこそ、3ポイントシュート多投のスモールボールといった明確なスタイルを掲げることはない。最も重視するのは高い生産性で、相手に応じて自分たちのアドバンテージを生かすことだ。

八村と河村が出場する試合では、彼らに個の力を存分に発揮してもらうことが、最も生産性が高い。ただ、これは2人にオフェンスを丸投げするのではない。彼らと一緒にコートに立つ選手がチャンスでしっかりとアタックをし、シュートを打ち切らないと、八村と河村も本領を発揮できない。どうしても2人の個が目立ってしまうが、あくまで日本代表は『最高の一体感』を持ってチームで戦う。これが根幹であり、だからこそ指揮官は個人の問題はなく、すべてはチームの問題で自身に批判が向けられるべきものと強調した。

八村と河村の合流直後の実戦でいきなり連携が上手く行かないのは想定の範囲内であり、昨日の初戦は、彼らと上手くチームに融合させる『最高の日本代表』に向けた第一段階として上々のスタートとなった。ただ、NBAのスケジュールもあり、八村と河村が代表参加できる時間は極めて限定的。八村がWindowに向けた代表活動に参加するのはゴンザガ大在籍以来と、画期的な出来事だが、今後に向けてケミストリーを構築していくために残された時間が少ないのも事実だ。今日の第2戦も含め、日本にとって未来に向けた大事な挑戦は続いていく。