ターンオーバーをすれば「プラマイゼロになる」
八村塁、渡邊雄太、ニック・ファジーカスの『ビッグ3』揃い踏みとなった22日のアルゼンチン戦、日本代表で彼らを上回る鮮烈なパフォーマンスを見せたのは馬場雄大だった。
その身体能力は代表の中でも抜きん出ている。縦へ仕掛ける迫力は、世界の強豪アルゼンチンに対しても十分通用していた。相手守備陣の綻びを見逃さずに仕掛け、強引にフィニッシュに持ち込む。しつこいディフェンスでボールを奪うと一気にリングまで走り切る。そんなアグレッシブな持ち味を存分に発揮し、コート上で一番目立つ存在となっていた。
アルバルク東京での2シーズンで2度のリーグ優勝、日本代表ではアジア予選で主力としてフル回転し、この夏にはNBAサマーリーグにも挑戦した。すべての経験を自分の力に変えて、馬場はプレーヤーとして完成の域に達しようとしている。
チームが108失点を喫して敗れたこともあり、ディフェンス面では「自分のマッチアップした選手を抑えられず、足が動かず手で行って4回ファウルしてしまった」と反省を語るも、「積極的にリングにアタックすることはできた。ぶつかり合いは世界レベルだと感じたが、自分は自信を持ってプレーできた」とオフェンス面では大きな収穫が得られたようだ。
特筆すべきは、攻守のアグレッシブさを発揮しながらミスをしなかった点。がむしゃらなプレースタイルにはミスも付き物だが、馬場は26分のプレータイムで長所だけを出し続けた。それを問うと、馬場は「おっしゃるとおり、僕の課題はリングにアタックはするんですけど、ターンオーバーのところでプラマイゼロになってしまう形が多いこと」と答える。
成長を続ける馬場に渡邊は「頼もしく思っています」
積極的に行けば行くだけミスは出る。その矛盾を解決できたのだとしたら、馬場にとっては大きなブレイクスルーだ。そのきっかけを馬場はこう語る。
「冷静にやれている、自分の中で客観視できているのは成長したところだと思いますし、最近はコートに立つ上で考えていることが、結局は自分の力以上のものを出そうとすると空回ったりしてチームのみんなに迷惑をかけてしまう。自分がやれることを徹底するっていう意識です。雄太は雄太、塁は塁の役割があるってところで、今導き出した結果でプレーができています。そういう意味で冷静なパスの判断、ターンオーバーの減少に繋がっていると思います」
NBAサマーリーグに代表合宿と、その馬場の取り組みをすぐ近くで見ている渡邊雄太にも意見を求めた。渡邊は少し考えて「良い意味で遠慮が最近はなくなったんじゃないかな」と話す。
「去年まではどこか僕とか塁に少し遠慮ではないですが、自分よりも僕たちを、という気持ちが多少はあったのかなと。彼とそういう話をしたわけじゃないので分からないですけど、ただ最近は自分でリングにアタックする気持ちが前に前に出ていますし、彼はもともとそういう力がある選手なので、それが結果として出ている部分があります」
その渡邊はまだ足首を痛めた影響でプレータイムを制限されての出場だったが、ベンチにいる時間は馬場のプレーに感心して過ごした。「しんどい時間も彼がウイングで先頭を走って日本を引っ張ってくれた。そういう部分がどんどん出てくると彼の良さもまだまだ出てきます。彼の成長は一日一日感じているので、頼もしく思っています」
馬場雄大と渡邊雄太、アグレッシブに走るスタイルを体現する2人の活躍が、日本代表には欠かせない。