
ビール復活は『ローリスク・ハイリターン』の賭け
キャリア15年目を迎えるベテランガードのブラッドリー・ビールが、クリッパーズと2年1320万ドル(約20億円)での再契約に合意した。
ビールは2012年の1巡目3位指名を受けたウィザーズで『チームの顔』として11シーズンに渡り活躍するも、キャリア初期から右足の疲労骨折が相次ぎ、2021-22シーズンには左手首の腱断裂で40試合にしか出場できなかった。その後もハムストリングのケガが癖になり、2023年のサンズ移籍後は腰痛や鼻骨骨折、ふくらはぎの肉離れに指の骨折と度重なるケガに苦しめられた。昨シーズンはクリッパーズと契約を結ぶも、開幕早々に股関節を骨折して出場わずか6試合に終わっている。
1億ドル(約150億円)超の契約をバイアウトして5年分割で支払う『負債』を残したことに、フェニックスのファンは怒っており、サンズ戦では盛大なブーイングを浴びる羽目となった。ケガの連鎖から抜け出せないビールは『不良債権』の代表格にまで地位を落とした。
そんなビールにクリッパーズが新たな2年契約を与えたのは、チームが抱える編成上の都合がある。ジェームズ・ハーデンを獲得するトレードで、2027年の1巡目指名権の交換権をサンダーに譲り渡しており、今シーズンはどれだけ負けても高順位の指名権は得られない。再建に舵を切りながらタンキングが事実上機能しない状況でビールに目を付けた。
サンズでのビールは5年2億5100万ドル(約380億円)のスーパーマックス契約を抱えていたが、今は2年1320万ドルまで下がり、股関節のケガからの回復が思わしくなくても財政的なダメージは最小限で済む。一方で、もし本来の得点力を取り戻せば貴重な資産となる。おそらくクリッパーズに彼を長く保有するつもりはない。シーズン前半に結果を残せばトレードデッドラインまでに優勝を狙うチームにトレードを持ち掛け、指名権や若手を回収するのが狙いだろう。
これまで契約下にあっただけに、ビールの手術後のコンディションを確認した上で『賭ける価値がある』との判断を下した。いずれにしてもクリッパーズにとってリスクは低く、当たった時のリターンは大きい。
そして、今シーズンからクリッパーズでプレーする八村塁にとって、ウィザーズで長く一緒にプレーして気心の知れたビールの加入はプラスに働きそうだ。ビールはドライブからのパスで、外で待つ八村にキャッチ&シュートのチャンスを作り出せる。ウィザーズのファンにとっては懐かしいコンビネーションが、クリッパーズで再び見られることに期待したい。
一方で、ビールとの契約はクリッパーズの新シーズンをポジティブに変えるものではない。『サラリーキャップ逃れ』の疑いでカワイ・レナードのトレードは凍結されたままで、チームの先行きにはいまだ不透明感が漂っている。