『TTC』体験レポート、プロ選手が置かれた実情と『プレーヤーファースト』の想い

2017/07/12
プレイヤー
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文=丸山素行 写真=丸山素行、TTC事務局

「下手の横好き・32歳」の下半身が悲鳴を上げる

今年で5回目を迎えた『Tamagawa Training Camp 2017 supported by UPSET』(以下TTC)は「オフシーズンのプロ選手への質の高いトレーニング環境を提供することを通じ、バスケットボール振興に貢献すること」を目的としている。

プロ選手がオフ期間に行うトレーニングがどのようなものか──。良質なバスケットボール情報を提供することを信条とする『バスケット・カウント』は、その実態を伝えるべく、編集部から「下手の横好き・32歳」がキャンプへ参加することを決めた。

だがこの断固たる決意は一日の最初、トレーニングルームでのウェイトの時点でグラッグラに揺れた。午前に行われたストレングストレーナーの上原雅也によるトレーニングでは、基礎的な動作を正しいフォームで行うだけで尋常でない負荷がかかり、「下手の横好き・32歳」の下半身は悲鳴を上げた。苦しい、苦しすぎる。

午後にはチーフトレーナーを務める島袋彩乃(一般社団法人スポーツおきなわのマネジメント兼メディカルスタッフ)の指示の下で、体力測定が行われた。メディシンボール投げや短距離走など、身体を追い込むものではなくあくまで『体力測定』なのだが、ランチタイムの回復もむなしく、運動不足の下半身はこれでトドメを刺された。

その後はコート上でのパワー系のトレーニング、さらにはスクリメージとメニューが進んでいくのだが、「下手の横好き・32歳」はもう付いていけず。スクリメージはレベル差がありすぎて選手の迷惑になるため「遠慮してくれ」と言われるだろうと予想しつつ、プロ選手とプレーできる機会など滅多にないので「1分でいいからやってみたいな!」とウキウキしていたのだが、体力的に限界。運動不足の身体ではとても付いていけず、あらためて「プロってすごい」と感嘆させられた次第だった(その後、筋肉痛がしばらく続いたことは言うまでもない)。

華やかな舞台の裏に隠された選手の実情

『TTC』には昨シーズンにBリーグでプレーしていた14人の選手が参加したが、よほど恵まれたチームに所属していない限り、オフ期間にトレーニングをする環境があまりないと口を揃えた。そうした中で知り合いのクラブチームに参加したり、個人的にジムに行ってトレーニングをしているという。Bリーグが開幕したことで日本のバスケットボール界は大きく発展したように映るが、練習環境はまだまだ不十分なのだ。

プロともなれば、いつでも練習ができる体育館やトレーニングルームがあり、スキルコーチやフィジカルトレーナーにいつでもアドバイスを求められるといったイメージを抱く人が多いと思う。だがそうした環境があるのは一握りのクラブだけだという。B1でさえ、選手が望めばいつでも個人練習ができる環境を整えているのは数クラブしかない。オフ期間であればなおさらだ。だからこそカテゴリーを問わずオフシーズンに質の高いトレーニング環境を提供する「TTC」の取り組みには意味がある。

プロ選手でも練習場所を自分で探さなければならなかったり、バスケットボールだけで食べていくことができずアルバイトをしながらトレーニングを続ける選手も多い。華やかに見えるBリーグの世界だが、選手が試合や練習だけに集中できるような環境が整っていないのが日本のバスケ界の現状だ。特にB2やB3など下のカテゴリーに行けば行くほど、それは顕著になる。

真の「プレーヤーファースト」を目指して

『TTC』を主催する井上涼上馬(株式会社PHYSIOFLEXの代表取締役)はこうした状況に警鐘を鳴らし、『プレーヤーファースト』の実現を常に考えてきた。「スタッフがチームにいなかったり、自分にノウハウを持っていなかったり、そして契約がなくてどこに行くかも分からない。そんな状況で何をしたらいいか分からないという選手に環境を提供したいです。特に自由契約選手は明日の状況が分からない状況ですので」

このキャンプの特別協力を務める、バスケットボールやサッカー、野球、アメリカンフットボールを扱うスポーツメーカー、株式会社アップセットの片岡秀一も井上の理念に賛同した一人。運営実務、スポンサーシップ交渉なども井上とともに進めている片岡は「キャンプの趣旨を大事にしています。知名度の高い選手が来ればキャンプも有名になるでしょうが、それが目的ではない。環境がなく、練習場所を求めている選手に来てもらうことです」と目的を見誤らない。

「使命感と情熱のある人、それを必要としているであろう選手をつなぐ場にもしたかったです意欲ある若者にチャレンジできる場を作ることができればと思い、今回はプロ志望の若手コーチの募集もしました」。そう語る片岡の口調は熱を帯びてくる。「とはいえメーカーのロゴが入っていたり、メーカー色が強くなってくる中で、我々の理念を理解し選手を快く出してくれる関係者の理解にも感謝しています」

今後の活動については「高望みはしていないので、この規模を維持したいです。パッケージがあるので、要望があって場所さえ取れれば回数も増やせます」と井上は柔軟な姿勢を見せた。

今回『TTC』を体験したことで、「何よりも選手により良い環境でオフシーズンを過ごしてほしい」という思いが2人から伝わったきた。口先だけではない、本当の意味での「プレーヤーファースト」が『TTC』にはあった。この考え方をスタンダードにした環境整備が選手レベルの底上げを実現し、ひいては日本バスケットボール界の発展につながっていくのではないだろうか。