スペンサー・ジョーンズ

この契約延長でナゲッツはセカンドエプロンを超過

ナゲッツのスペンサー・ジョーンズは、今オフに制限付きフリーエージェントとなった。その彼にサンダーは2年1200万ドル(約18億円)のオファーシートを提示し、ナゲッツはこれにマッチ。ジョーンズの残留を決めたことで、2026-27シーズンに向けて唯一のセカンドエプロン超過チームとなった。

ジョーンズはスタンフォード大から2024年のNBAドラフトにエントリーするも指名を得られず、2ウェイ契約からNBAキャリアをスタートさせた。2年目の昨シーズンは、ヘッドコーチ交代を機に若手へ積極的にプレータイムを与えるようになったチーム方針もあってローテーションに食い込み、今年2月には本契約を勝ち取った。

ディフェンスでハードワークをこなし、3ポイントシュート成功率は39.6%を記録。新型コロナウイルス禍による特例措置を受けて大学で5年間プレーしたことで成熟した25歳のウイングは、NBAキャリアこそ2年目ながら即戦力の『3&D』として高く評価されている。サンダーも、放出したアイザイア・ジョーやアーロン・ウィギンズに代わる存在として、ジョーンズの獲得に動いた。

それでも、サンダーの本当の狙いはジョーンズ獲得だけではなく、ナゲッツにオファーシートを飲ませてセカンドエプロンへと追い込むことだったと見られている。

ナゲッツはニコラ・ヨキッチの全盛期に、再びNBA制覇を目指している。同時に、優勝後に若手育成を軽視したことでロスターの層みを失った反省から、生え抜きの若手を育てる方針へと舵を切った。その象徴とも言えるのがジョーンズであり、たとえセカンドエプロンに踏み込むことになったとしても、簡単に手放すわけにはいかなかった。

実際、ジョーンズの2年1200万ドルという契約は、現在のNBAの市場価値を考えれば決して高額ではない。もしサンダーに引き抜かれれば、その穴埋めはベテラン最低保証額の選手に頼るしかなくなり、戦力的なダメージは小さくなかった。

しかし、この決断の代償は大きい。ヨキッチ、ジャマール・マレー、アーロン・ゴードン、キャメロン・ジョンソン、クリスチャン・ブラウンの先発5人だけで、新シーズンの年俸総額は約1億8400万ドル(約280億円)に達する。すでにラグジュアリータックスのラインを大きく超えており、ジョーンズとの再契約の後にもペイトン・ワトソンとの契約延長が控えている。

ワトソンはブラウンと同水準となる年俸2000万ドル(約30億円)規模の複数年契約を求めているとされる。ナゲッツが若手育成の路線を貫くのであれば、彼もまた手放したくない存在だ。しかし、そのためにはジョンソンを放出するなど、大きな戦力の組み替えが必要になる可能性が高い。

ここ数年、NBAでは優勝チームが例外なくサラリーキャップ制度との戦いを強いられている。若手を育てれば契約延長が待っており、そのたびにチーム編成の難易度は上がっていく。ナゲッツは今まさに、そのジレンマと向き合うことになった。

ヨキッチを擁して2度目の優勝を狙うのか。それとも、そのために誰かを犠牲にするのか。ジョーンズとの再契約は、ナゲッツが『優勝』と『若手育成』の両立をあきらめないというメッセージだ。