ダミアン・コッター

河村について「彼以上に日本を代表するような選手はいない」

『FIBA U17男子ワールドカップ2026』で男子日本代表が厳しい結果に終わったことを受け、日本バスケットボール協会(JBA)の伊藤拓摩強化委員長は「育成年代の指導者は、今までの自分の指導を疑わなければいけない」と危機感を口にした。

その言葉に対し、ブルズで6年間アシスタントコーチを務め、オーストラリア代表の育成にも長年携わってきたダミアン・コッターが語った育成論は「何を変えるべきなのか」という問いの一つの答えになりそうだ。

コッター氏は、日本の育成そのものを否定することはなく、むしろ「U17の結果だけに過剰に反応すべきではない」と冷静な視点を示した。「彼らはまだ非常に若いです。現実として、その年代からシニア代表へ進む選手は1人か2人程度でしょう。重要なのは、彼らが国際大会を経験することです」

U19の世界選手権で5度コーチをした経験があるコッター氏自身も、初めて国際大会を指揮した際には「自分も準備ができていなかった」と振り返る。だからこそ、若い選手ほど国際舞台へ出る機会を増やすべきだと強調する。

「国によってプレースタイルは違うので、その経験は非常にポジティブなものになります。もちろんお金はかかり、協会にとっては大変なことだと思いますが、重要なのはそうした露出を増やしていくことです」

では、育成現場では何を重視すべきなのか。コーチクリニックでコッター氏が繰り返したキーワードは「競争」と「カオス」。選手は予定調和のドリルではなく、不確定な状況の中で判断を繰り返し、競争しながら成長する。それを繰り返すことでバスケIQが養われると考えている。「もちろんスキルも必要ですが、タフであることや優れたバスケットボールIQを持つことは、身体能力よりも重要です」

その象徴として挙げたのが日本代表の河村勇輝だった。コッター氏は「私ではないアシスタントコーチが彼の担当をしていたので、彼をコーチしたというのは大げさだと感じます」と前置きをした上で、河村をこのように称賛した。

「彼は仕事に対するキャパシティが非常に大きく、信じられないほどハードに練習します。どん欲に学ぼうとする姿勢、そして彼の競争心の高さは素晴らしいレベルでした。また、チームメートのことをよく気にかけていて、チームの中でも人気者でした。2ウェイ契約なのでNBAとGリーグを行ったり来たりするチャレンジがある中、常に素晴らしい態度を保っていました。彼以上に日本を代表するような選手はいないんじゃないかと思います」

男子U17日本代表は16チーム中14位でワールドカップを終えたが、コッター氏は前述のように結果を気にし過ぎることを良しとせず「勝つことよりも育成です。もちろん勝とうとはしますが、育成こそが非常に重要です」と持論を展開する。ただ、これは勝利を軽視するという意味ではない。

「国にはそれぞれ強みがあります。一貫したプレースタイルを持ち、その中に基準を設けること。U17ではそれが勝つことよりも重要です。私にとって基準とは結果ではありません。日々どのような態度で取り組んでいるか、どのようなトレーニングをしているか、状況判断力が向上しているか。そうしたことのほうが重要です」

育成の基準をどこに置くか。その問いに向き合うことこそが、日本のバスケットボールが次の一歩を踏み出すための出発点なのかもしれない。