ラメロ・ボール

2020年ドラフト1位エドワーズ&3位ラメロのコンビ誕生

ティンバーウルブズがジュリアス・ランドルに続く大型トレードを決めた。ホーネッツとのトレードでラメロ・ボールとジョシュ・グリーンを獲得。ホーネッツにはナズ・リード、2033年の1巡目指名権、2028年から2030年の3年分の1巡目指名交換権、3つの2巡目指名権が譲渡される。

ウルブズがこのトレードに踏み切る動機、そのすべては「アンソニー・エドワーズにとって何がベストか」だ。エドワーズが加入した2年目の2021-22シーズンから、ウルブズは常にプレーオフに進出し、カンファレンスファイナルに2度進出している。チームとしては成功を収めているのだが、「まだ足りない」という切迫感が常にある。ティム・コネリーGMは今オフに際して「今のチームは優勝への道にない。ハイリスク・ハイリターンのトレードを前向きに検討していく」と明言しており、その言葉を実践している。

エドワーズとラメロは2020年NBAドラフトの同期。1位がエドワーズでラメロが3位だが、ルーキー・オブ・ザ・イヤーを受賞したのはラメロだった。ラメロの評価は大きく分かれる。最高のスキルと感性を見せるが、安定感を欠く。足首のケガに何度も悩まされており、コンスタントにプレーできない。例えばプレーインのヒート戦では30得点を挙げたがフィールドゴール試投数31本とボールを独占したし、倒れる際にバム・アデバヨの足を手ですくってケガをさせる危険なプレーもあった。勝つも負けるもラメロ次第のワンマンぶりが、このリーグで最も色濃く出ている選手だ。

しかし、ウルブズの方針は『ハイリスク・ハイリターン』だ。今シーズンは72試合出場とコンスタントにプレーし、20.1得点、7.1アシスト、3ポイントシュート成功率は36.8%と及第点でも成功数272本はリーグ2位。力強いボールプッシュとスキップパスを多用する創造性溢れるスピーディーなプレーメークは他のガードとは一線を画す。エドワーズからプレーメークの負担を取り去るとともに、ルディ・ゴベアへのロブパスが強力な攻めの一手となる。5年1億1200万ドル(約170億円)で契約延長したアヨ・ドスンム、年齢的な衰えは見せるも抜群のリーダーシップを発揮するマイク・コンリーとバックコートの層は厚い。

その一方で、ランドルに続いてリードも放出することでロスターのバランスは崩れた。インサイドはルディ・ゴベア以外にはジョアン・ベリンガーにロッコ・ジカースキーと実績に乏しい若手だけ。エドワーズとラメロ、ドスンムのガード3人が大型契約を得る状況で、即戦力を補強するのは簡単ではない。

もっとも、そのすべてがコネリーGMが望んで引き受けた『ハイリスク・ハイリターン』だ。最善のシナリオは、ラメロの悪癖すべてが移籍を機に消え去ることだろう。ボールを独占して派手なハイライトシーンを連発すると同時に、致命的なターンオーバーもしてしまうのは、『勝てないチームのエース』に典型的な悪癖だ。ウルブズ移籍によりチームの勝利にコミットするだけで、ラメロのプレーは良い方向に激変する可能性がある。もともとチームメートの特徴を引き出すセンスにも長けた選手で、だからこそホーネッツのチームメートは彼に絶対的な信頼を寄せていた。意識の変化と言っても、ほんの少しのアジャストだけで、ラメロは優勝を争うチームの司令塔として大成するポテンシャルを秘めている。より大きなリスクはケガだが、それも今シーズンはコンスタントにプレーできている。多くの試合を欠場してきたが、その一部は『勝たなくてもいい』ホーネッツの事情もあった。その前提が変われば『ハイリターン』を出せる可能性は高まるはずだ。

ウルブズがラメロの『ハイリターン』に賭けた一方で、ホーネッツはその不安定さを避けて将来の資産とトレードした。出場が70試合を超えたのは6シーズンで2回のみ。今シーズンは72試合に出場したものの、プレータイムを平均28分にまで絞った結果だ。ラメロがどれだけ『ハイリスク』かを身をもって経験したからこそ、生え抜きのエースを放出した。

ラメロとの契約は残り3年で1億3000万ドル(約200億円)で、後任のポイントガードであるコービー・ホワイトに3年7400万ドル(約110億円)の契約を与えてもサラリーキャップに大きな余裕が生まれる。さらに4070万ドル(約61億円)という巨額のトレード例外枠も得られる。

リードはキャリア2年目から6シーズン連続で68試合以上に出場している。派手ではなくてもチームプレーを優先してハードワークのできる安定感抜群のビッグマンで、ラメロとはあらゆる意味で対照的だ。4年目のシーズンにブレイクした24歳のムサ・ディアバテ、あるいは先日のドラフト1巡目14位で指名したハネス・シュタインバッハとともに、強力なフロントコートを形成する。

プレーオフまであと一歩と迫ったホーネッツは、ラメロ放出でむしろ一歩後退となる。それでも26歳のホワイトとリード、23歳のブランドン・ミラーと20歳のコン・クヌッペルというヤングコアを育てて強力なチームを作り、今回のトレードで得た2028年から3年分の1巡目指名交換権を使わずに済ませる(ウルブズを成績で上回る)のが、ホーネッツにとっては最善のシナリオとなる。