CJ・マッカラム

「プロセスを踏んで、より強くなっていく」

ホークスは今年1月にエースのトレイ・ヤングを放出した。『解体』ではなくとも大きな方針転換で、若手主体のチームが機能するには時間を要するとの予想とは裏腹に、トレードが決まった時点では負け越していたチームは快進撃を見せ始め、46勝36敗でプレーオフに進出。ファーストラウンド敗退に終わると選手たちは「不甲斐ない負け方をした」と嘆いたが、結果としてプレーオフでニックスから2勝を挙げたのはホークスだけで、シーズン序盤の停滞を思えば上々の結末となった。

この成長を継続させる意味で、今オフのチーム編成は非常に重要となる。ジェイレン・ジョンソン、ダイソン・ダニエルズ、ニキール・アレクサンダー・ウォーカー、オニエカ・オコングといったコアメンバーの周囲にどんな選手を配置するか。中長期視野に立ったチーム作りの最初の一手として、ホークスはCJ・マッカラムとの契約延長を決めた。

2100万ドル(約32億円)の1年契約。直近でトレイルブレイザーズと3年1億ドル(約150億円)、ペリカンズと2年6400万ドル(約96億円)の契約を結んできたマッカラムが譲歩した形だが、彼は9月に35歳になるベテランで、ブレイザーズを離れた2022年以降は勝てないチームに身を置き、その役割も安定しなかった。それを考えれば、プレーオフに進出した今シーズンからさらなる成長が確実なホークスで、主力として、リーダーとして信頼される立場を選んだということだろう。

さらに言えば、トレードからの数カ月間で彼は間違いなく『勝利』した。移籍が決まった時点では、ホークスは新体制移行のためのヤング放出が大前提で、マッカラムはサラリーを合わせるためにトレードに組み込まれたに過ぎなかった。

それでもマッカラムは、すぐに若いタレントの個性をチームとして繋ぎ合わせる役割を見いだし、チームに不可欠な戦力となっていく。新生ホークスではフォワードのジェイレン・ジョンソンがプレーメークを担う。そのジョンソンがボールを持つ時のマッカラムはオフボールの役割に回り、攻めが手詰まりとなればハンドラーを引き継ぐ。長らくデイミアン・リラードとコンビを組み、その負担を軽減しつつリラードを絶対的なエースとして輝かせてきたマッカラムにとっては手慣れた仕事でも、ホークスにとっては非常に有益な発見だった。プレーオフではクラッチタイムに勝負を任される責任も負い、レギュラーシーズンの18.7得点を上回る19.2得点を記録した。

シーズン最後の会見はプレーオフで敗退した翌日に行われたが、この時点でマッカラムは「フロントとはすでに非常に有意義な話し合いができた」と明かしており、残留で基本合意はできていたのだろう。

その上で彼は「これまでプレーオフに出たことのないチームがこの先に進むには、経験が必要になる。成熟のためのプロセスは飛ばすわけにはいかない」と語った。

「勝てるはずのない試合に勝ち、負けるはずのない試合に負ける。そんな経験をみんなで一緒に積んでいく。今回の負け(ニックス相手の敗退)も、51点差で負ける必要はなかったにしても、飛ばせないプロセスの一つだ。質の高い選手を揃え、長く一緒にいるチームとプレーオフで対戦し、ああいう相手にどうやったら勝てるかを考える。どうアジャストし、どんな部分で成長が必要なのかを分解して落とし込む。このチームはそういったプロセスを踏んで、より強くなっていく」

『エプロン時代』になったNBAではサラリーキャップの縛りが以前よりずっと厳しくなり、選手寿命が延びて35歳を過ぎたベテランが数多くいても、彼らに巨額の契約を与えることにはどのチームも躊躇する。その状況を把握できているからこそ、マッカラムは契約面で譲歩し、自分が自分らしく輝けるチームに残留することを選んだ。

「オフはもう予定でいっぱいだよ」とマッカラムは言った。まだ契約交渉が始まってもいない時点で、彼はホークスの若手を引き連れて有意義なオフを過ごすための準備を始めていた。

「毎日ずっと同じ顔を見ていたんだから、しばらくの間は距離を置こう(笑)。一人の時間や家族との時間、趣味の時間も大事だからね。それからどこかに集まってワークアウトをして、一緒に遊ぶのも良いだろう。強制はしないよ。自然に集まることが大事なんだ。みんな今はプレーオフで負けたことに怒り、ショックを受けているだろうけど、頭を冷やして落ち着いて受け止めて、それから集まればいい。秋に良いスタートを切るために何をすべきか、じっくり時間をかけて考えるんだ」

マッカラムは2013年のNBAドラフトで1巡目10位指名を受けた。同期の多くがすでにNBAを去っており、そうでなくても不本意な立ち位置に置かれている者も多い(出世頭のヤニス・アデトクンボでさえキャリアの岐路に立っている)。自分が望む環境で、周囲から必要とされて充実したキャリアを続けられるのは一握りしかいない。マッカラムは自らの手でそれをつかみ取り、現役14年目のシーズンに向かおうとしている。