『素材型』はドラフト回避、大学で報酬を得つつ成長へ
NBAファイナルも終わり、話題は来シーズンへの補強へと移ります。まずはドラフトですが、今年のドラフトでは2つの大きな変化があり、各チームの戦略も変わりそうです。
一つの変更点はロッタリーが『3-2-1』方式に移行すること。適用は来年のドラフトからですが、上位指名権の入手は完全に運頼みになり、しかもボトム3に割り当てられる確率は『2』に下がります。従来であれば目先のチーム強化よりも将来性を重視して選手を選んでいたドラフトで戦力アップをしなければ、翌年にボトム3に沈むリスクが生まれました。
ドラフト上位は基本的に『ワン&ダン』の大学1年生で、現時点での実力よりもポテンシャルを評価され、未完成の素材もいます。歴史を紐解けばポテンシャルは持っていても花開かない選手もいて、チーム側はそこに賭けていました。そういう選手は才能が花開くまでに時間が必要なケースがほとんどで、ビクター・ウェンバニャマであってもルーキーシーズンにチーム成績が上向いたわけではありませんでした。
従来のルールであれば、チームの成績が向上しなくても、翌年のドラフトで再び上位指名権を手に入れられる計算ができました。ポテンシャルの高い選手を指名し、試合で使うことで経験を積ませ、次のドラフトで新たな上位指名権を手に入れる。この成功パターンで再建を果たしたのがサンダーやスパーズです。
しかし、新たなルールでは再建中のチームでもボトム3は避ける必要があり、今回のドラフトから『間違いのない指名』をしなければいけなくなります。こうして評価の指標はポテンシャルから確実性へとシフトするはずです。
もう一つの変更点は、NCAAで大学が選手へ報酬を支払うことを可能にした『NIL契約』が、NBAのサラリーを上回る規模へと成長したことです。有力選手であれば500万ドルを超える報酬を手にすることも珍しくなく、より高い報酬を手に入れるための転校がスタンダードになりました。昨シーズンのドラフトで言えば500万ドル以上の報酬を得られるのは13位指名までですが、NBAレベルに届かない選手でもNCAAでは似たような額を稼げる計算になります。
これによりNBAドラフトから撤退するアーリーエントリーの選手が増えています。特に高いポテンシャルを持ちながら、まだNBAレベルの完成度に至っていない若手が大学に残ることを選択し、身体能力では劣っていても多彩さとプレー精度が特徴の選手がドラフトへ進む傾向が出てきました。
現実を見れば、2022年のドラフト1巡目で指名された選手のうち半分近くが、4年目の今シーズンでもローテーションに定着できておらず、上位指名が確実でなければ確実に高額報酬を手に入れられる大学に残る方が賢い選択と言えます。
2つの変更点でチーム側も選手側も『ポテンシャル』への評価が少し下がる形になりますが、チームの核となれるスーパースター候補を手に入れたい考え方は変わりません。ただ、各チームの評価基準が微妙に変化することで、意外な選手が1巡目後半まで残る可能性も出てきます。ドラフト当日のトレードも含めて様々なドラマが生まれそうです。
