バッセルとシャンペニー、好調のシューターを外すことに
NBAファイナルはニックスが劣勢を跳ねのけて逆転する展開が続き、4勝1敗で決着となりました。第4戦の試合後にはスパーズのミッチ・ジョンソンヘッドコーチが「ニックスのプレーには敬意を表するが、すべての試合で自分たちが勝敗を決めることができた」と語ったように、スパーズには常に勝つチャンスがありました。
NBAファイナルになって突然、終盤の戦いぶりに課題が出た要因の一つが、ディアロン・フォックス、ステフォン・キャッスル、ディラン・ハーパーを並べたことです。この3人が並んだ時間帯のオフェンスレーティングは75.0で、これは20分以上プレーした3人の組み合わせで最低の数字でした。
ファイナルが始まるまでチーム2位の19.2得点を記録していたキャッスルは、攻守に渡ってハードなプレーを続けてきた影響か、アタックする回数が減り、さらに高確率だったはずのインサイドのフィニッシュにも苦しみました。ファイナルでは平均で14.6得点を奪ったものの、第4戦はアテンプトが7本しかなく、第5戦は6得点。無尽蔵のスタミナを見せていたキーマンが、最後の最後で失速しました。
それ以上にフォックスは苦しみました。OG・アヌノビーにマッチアップされていたこともあり、フィールドゴール成功率は34.3%と完璧に抑え込まれました。第4戦の終盤での判断ミスで戦犯扱いされましたが、その一方でフォックスの得失点差は5試合中4試合でプラスになっており、マイナスになったのは勝った第3戦だけ。フォックス不在の時間帯、スパーズは安定しません。
マークが厳しかった2人に対して、ドライブを効果的に決められたハーパーは平均18.0得点とオフェンスの中心になっていきました。特にオフェンスが停滞する時ほど、ハーパーの個人技での突破が有効だったため、強いインパクトを残しました。それだけに終盤にハーパーを使いたくなり、ガード3人を並べることになりましたが、それはスパーズ本来の形ではありません。
ファイナルの5試合を通してデビン・バッセルは3ポイントシュートを46.7%で決め、ジュリアン・シャンペニーも40.5%とシューター陣は好調でした。ガード陣がドライブアタックで侵入し、ビクター・ウェンバニャマが中でも外でも合わせていき、マークが集中したところでシューター陣に展開するのがスパーズの形です。
ガード3人はいずれも3ポイントシュート成功率が30%以下でシューターとしての役割を果たせず、しかもボールを止めてしまうのでアシストよりもターンオーバーが多くなっていました。この数字からすれば3人のうち1人はベンチに置くローテーションにすべきでしたが、ハーパーの好調さ、フォックスのゲームコントロール、そしてキャッスルのディフェンス力のいずれも削ることができず、結果的にオフェンスの停滞を招きました。
NBAファイナルまでの17試合で3人同時起用したのは19分だけ。レギュラーシーズンでも25分しかありません。それがファイナルでは5試合で合計25分と大きく増えています。NBAファイナルという究極の舞台で従来とは異なる構成を持ち込み、それが自分たちを苦しくしたわけですが、それは『何か変えなければ勝てない』と思わせるほどニックスの圧力が強かったことも意味します。3ガードをレギュラーシーズンから使っていくのか、それとも誰かを削るのか、スパーズにとっては来シーズンの課題にもなる敗因でした。
