ニックスが得る『ハック戦術を受けるメリット』とは

ホームで連敗して敵地ニューヨークへと乗り込んだスパーズは、3連敗を阻止するためにゲームプランを変更する必要がありました。試合展開を左右する変更点もあれば、細かなマッチアップにおけるディティールの変更も準備していたはずです。そんな中で第3戦で目立ったのは『ファウル』でした。

スパーズの大きな変更点は、試合序盤からステフォン・キャッスルのピック&ロールを増やし、ロールマンのビクター・ウェンバニャマをリングにダイブさせることでした。先の2試合では、前半はウェンバニャマをストレッチさせることが多く、後半にリング近くでのプレー中心へとシフトしていましたが、3ポイントラインの外からカール・アンソニー・タウンズ相手に仕掛ける1on1の成功率が低かったこともあり、ツーメンゲームから崩していくようになりました。

ウェンバニャマがダンクでフィニッシュするシーンも増え、この変更は成功しました。一方でニックスから見るとウェンバニャマにイージーなフィニッシュを許した形でもあります。西カンファレンスでは簡単にダンクさせるくらいならばファウルで止めてフリースローを打たせる選択をするチームばかりで、それは『ファウル以外では止められない』と表現しているようなものであり、スパーズ優位という印象を与えていました。しかし、ニックスにはオフェンスで取り返せる余裕も感じられ、実際に第2クォーターで逆転しています。

スパーズの細かい変更点は、ミッチェル・ロビンソンへのハック戦術を止めたことでした。第2戦ではウェンバニャマがベンチに下がった際にハックを多用し、ロビンソンに6つのフリースローを与え、ロビンソンはそのうち3本を外しました。この時間帯の得失点差はスパーズの+7点と計算上は成功でした。

そのハック戦術を第3戦では止めています。特に第3クォーター、ロビンソンがコートに入ってきた時点でスパーズは4点ビハインドと『ハック向き』でしたが、ハックを選ばずにタウンズが戻って来る時には3点リードへと逆転しています。ロビンソンはオフェンスリバウンドを4つ奪ってゴール下での強さは見せましたが、流れを持ってくることはできませんでした。

ロビンソンへのハック戦術は多くのチームが仕掛けており、ロビンソンにフリースローを与えても決められないという点では成功するケースがほとんどですが、最近のニックスはこのハック戦術を逆手に取るようになりました。ハック戦術をやらせることで相手のファウルを増やしてその後の展開を楽にしたり、オフェンスのことを気にせずディフェンス主体に意識を統一したり、そして何より頻繁にクロックが止まるため、ロビンソンのスタッツ上のプレータイムの何倍も長くタウンズを休ませることができます。

ハックそのものは有効な作戦ですが『ファウルで止める』ことが増えると、守れていない雰囲気が生まれ、心理的にマイナスに働く側面もあります。ウェンバニャマに対してファウルを使わず対峙した前半のニックス。ロビンソンへのハック戦術を選択せず流れを呼び込んだ後半のスパーズ、という攻防が見られた第3戦でした。