
「本当にあれが『西村文男』という男」
「彼に助けられました」。千葉ジェッツの看板選手として一線を走り続ける富樫勇樹と、高校時代からの付き合いでともにプロキャリアを歩み千葉Jでチームメートとして再会した荒尾岳、二人の口から出た西村文男への思いは同じだった。
6月3日に西村の引退試合『LAST RUNWAY #11』が船橋アリーナ(千葉県船橋市)で行われた。試合は今シーズンをともに戦い抜いた日本人選手を中心とした『TEAM RED』と、歴代の千葉J選手で構成された『TEAM WHITE』によって繰り広げられ、エキシビジョンマッチでありながら質の高いプレーが連発された。西村が後半に所属したTEAM REDが2点ビハインドで迎えたラストポゼッション。富樫がトップから左45度にドライブをしていくと、バック・ビハインド・パスからコーナーステイしていた西村にボールが渡り、西村が放った3ポイントシュートはブザーとともにリングに吸い込まれ、劇的な逆転勝利となった。
このシュートシチュエーションは2018-19シーズンのチャンピオンシップセミファイナル、宇都宮ブレックスとの第2戦の再現となっている。西村はこの試合の第4クォーターで立て続けに3ポイントシュートを2本外していたが、残り4分を切った場面でこの試合の最大得点差となるコーナースリーを沈めてハイライトとなった。このプレーをタイムアウトで再現するために指示をした富樫は、プレーヤー最後のシュートを決め切った西村について「本当にあれが『西村文男』という男で、最後の1本を決め切るところは彼らしかったですね」と称賛した。
そして彼のこれまでの千葉Jでの功績を振り返った。「彼なしでは千葉ジェッツの成長はなかったし、僕にとって常に自分の後ろから出てきてくれるプレーヤーとして頼もしい存在でした。あれほどの頼もしい存在は他にいなく、一番助けられたのは僕だったのかなと思います」
2016年に大野篤史ヘッドコーチが就任してから先発ポイントガードが西村から富樫に変わった。当時29歳だった西村はプレーヤーとしても成熟期を迎え、他のチームに行けば間違いなく中心選手として活躍できる力を持っていた。しかし、バックアップガードとしての道を選び富樫を支え続けたことで数々の栄冠を勝ち取る要因となった。富樫にとって西村は背中を支えられる存在であったが、コートに送り出される彼の背中は大きかった。「ずっと見てきた背中でした。本当に素晴らしいバスケットキャリアだったと思います」
ノールックで後ろの味方へ👀👀
— B.LEAGUE(Bリーグ) (@B_LEAGUE) May 5, 2019
千葉#2 富樫のバックビハインドパスから#11 西村の3Pシュート👌@YukiTogashi @fumionishimura@CHIBAJETS
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荒尾もまた、あのシチュエーションで決め切った西村について「やっぱり持ってるな」と率直にコメントし、「文男の雰囲気、人柄が出た温かみを感じる引退試合だったと思います」と続けた。選手は満面の笑みでプレーし、インターバル中には西村に所縁のある選手やスタッフからの引退を祝したビデオメッセージが流れ、終始笑顔の絶えない温かい雰囲気で進んだ。
様々な人を惹きつける西村の魅力はプレーだけではない。オフコートでも気遣いのできる選手だからこそ多くの選手やスタッフが協力してこの会場の雰囲気を作っていた。西村と付き合いの長い荒尾は、その気遣いについて触れた。「僕はサポートをする立場で、チーム全体を見て『今、あの選手が落ち込んでいるな』というようなことに気付くこともあったので、それを文男に共有して2人でケアしていました。彼はそういったことも上手でしたし、チームとして締めなきゃいけない時は締めるということもしてくれました」
コミュニケーションにも長けていた西村に救われたのはチームメートだけでななく、荒尾本人もその一人だったと続ける。「僕はコミュニケーションがあまり得意じゃなかったので、その部分ではプロ生活を送っていく中で助けられました」
そう語る彼だが、仙台89ERSに所属していた時は『荒尾先輩』の愛称でチームメートやファンから親しまれ、お茶目な性格を垣間見せていた。コミュニケーションが苦手だったわけではなく、タイミングがつかめていないだけで、その解答を示したのが西村だった。「彼は空気を作るのが上手なので僕をちょっといじったり、何か面白いことを言ったりして、僕が過ごしやすいような空気を作ってくれて自分を出しやすくしてくれていました。感謝していますね」
オンコートだけでなくオフコートでもチームのバランサーとして活躍し続けた西村は、千葉Jのアドバイザリーコーチとしてチームに残ることが決まっている。プレーでサポートすることはできないが富樫も認めるバスケットIQとコミュニケーション能力の高さで、これからもチーム支えてくれるに違いない。