ジェイレン・ブランソン

クラッチタイムに真価を発揮、勝利をもたらす30得点

第3クォーター残り6分半の時点で51-65と14点差。ニックスはNBAファイナルの初戦で窮地に追い込まれていた。立ち上がりはカール・アンソニー・タウンズを中心に素晴らしい組織ディフェンスから速い攻めに持ち込んで優位に立ったが、セカンドユニットでスパーズに盛り返され、エースのジェイレン・ブランソンが2度のケガに見舞われて失速していた。

最初は接触でバランスを崩した相手が彼の膝に倒れてきた。右膝を抱えたブランソンは一度ロッカールームに下がってケアをしており、簡単なケガではなかったはずだ。コートに戻った後も、フローターを放って着地する際に相手に足首を踏まれた。プレーは続けられたものの、リムアタックが減ってコーナーで待機することが多くなる。第2クォーターは代わって入ったホセ・アルバラードが、第3クォーターはタウンズが得点を引っ張るも、ブランソンが攻め気を失っていてはニックス本来の力強いバスケは見られない。

第3クォーター終了時点でブランソンはフィールドゴール22本中7本成功の17得点と平凡な出来。それでも第4クォーター残り7分半、いつもより少し長く休養を取ってコートに戻ると、ケガを乗り越えて強烈なパフォーマンスを発揮し始める。

戻った時点で86-86の同点。ここからステフォン・キャッスルをスピードでかわしてフローターを沈め、フリースローで2点を追加。続くポゼッションでも速攻からジュリアン・シャンペニーとフォックスの間を割って入るレイアップを決め、スパーズのタイムアウト(加えてコートへの闖入者による一時中断)を経て、ミッチェル・ロビンソンがビクター・ウェンバニャマを抑えて作り出したコースに飛び込んで左手でのレイアップを成功させる。コートに戻ってからエンジン全開の1分半で、彼一人で8-0のランを作り出した。

そこからスパーズの反撃があり、94-95と逆転を許す。この間にブランソンは4本のシュートを落とし、ニックスの勢いも止まってしまった。それでも残り2分を切って、味方のシュートが外れたところをティップで繋ぎ、最終的に右コーナーでパスを受けて3ポイントシュートをねじ込んで再逆転に成功。シュートの当たりは止まっていたが、ディフェンスで粘り、リバウンドで繋いで勝ち筋を引き寄せた。

4点リードの残り1分、ウェンバニャマのハンドリングミスからジョシュ・ハートがスティールに成功。そのままブランソンのアイソレーションに持ち込み、難しいシュートを彼が成功させて勝負に決着をつけた。

第4クォーターのブランソンはフィールドゴール9本中5本成功の13得点を記録。試合を通じてゲームハイの30得点を挙げた。

ニックスを率いるマイク・ブラウンは、ケガを乗り越えたブランソンの精神力を称えた。「ケガをした時点で私は彼抜きで戦うことを考え、アルバラードに準備をさせ、タイラー・コレックをどのタイミングで使うかを考え始めた。そうしたらすぐに戻って来た。彼の状態について医療スタッフとはまだ話をしていないが、あれだけのプレーをするんだから心配はないだろう。ジェイレンは勝負に生きる男だよ。最高の舞台、最高の瞬間に真価を発揮する。彼に託し、それに応える。シーズンを通して何度も何度も見てきた姿だ」

指揮官ブラウンは「決して最高の試合ではなかった」とうれしそうに言った。華麗なバスケが展開できなくても、ディフェンスに力を注ぎ、リバウンドを泥臭く取りに行き、消耗戦を制したことを誇ったのだ。

ブランソンも同じで、自分の得点ではなくチーム全体の戦う姿勢でつかみ取った勝利であることを喜んだ。「お互いを支え合い、粘り強く戦い続けた結果だ。コート上で団結し、お互いのためにプレーする。壊れたレコードみたいに何度も同じことを言うけど、本当にそれが僕らの強みだと思っている」

大差を付けられてから巻き返す展開は望ましいものじゃないけど、常に『次のプレーに集中する』という姿勢で戦い続けることで、良い流れを引き寄せることができた。試合の中で相手の時間帯は必ずあるもので、そこからどう立ち直るか。僕たちは解決策を見いだし、少しずつ点差を詰めた。一発のプレーで挽回できるわけじゃないから、粘り強く戦い続けるしかないんだ」

ブラウンは「良いプレーはできなくても、素晴らしい勝利だった。選手たちが本当によくやってくれた」と選手全員を称えたが、ブランソンへの称賛は特別に大きかった。そしてブランソンの父、アシスタントコーチのリック・ブランソンが前半の悪い流れから抜け出すきっかけを作ったことも、忘れずに言い添えた。

「前半、私は判定が気に食わずに熱くなり、審判に詰め寄ってしまった。そこでリックに『黙れ!』と一喝されたんだ。『静かにしろ、審判のことは放っておけ』と彼は言った。私と同じように選手も冷静さを失っていたんだが、リックの一言がエネルギーを正しい方向に向けるきっかけになった。彼の言葉には本当に助けられたよ」