長崎ヴェルカ

『小さくないスモールラインナップ』も機能

Bリーグチャンピオンシップファイナルはすべてロースコアの戦いとなりました。琉球は3試合合計143リバウンドを奪い、102本の長崎を大きく上回り、高さとフィジカルの強さを存分に発揮しました。しかし、長崎は3試合で22スティールと琉球の14スティールを上回り、フィールドゴール成功率でも琉球のシーズン平均44.6%を10ポイント以上下げる34.0%に抑え込むことに成功して、優勝をつかみ取りました。

5年連続ファイナル進出という結果が示すように、Bリーグにおいては琉球のスタイルが王道です。特に第3戦は琉球が26ものオフェンスリバウンドを奪っており、通常のチーム作りにおいては、この高さとフィジカルに対抗できる選手をロスターに加えることが重視されがちです。

しかし、長崎は197cmのスタンリー・ジョンソンと201cmのジャレル・ブラントリーを中心に機動力を重視した構成で、206cmのアキル・ミッチェルもペリメーターまで守れる機動力を持っています。またイ ヒョンジュン、馬場雄大、山口颯人とオールラウンドに守れるウイングも揃えており、時には200cm前後の5人を並べた『小さくないスモールラインナップ』も組み、従来のBリーグとは一線を画した戦い方をしてきました。

このファイナルでも様々なマッチアップで琉球のオフェンスを止めていきましたが、象徴的なのはスタンリーが岸本隆一にマッチアップする形でした。インサイドでのミスマッチは生まれやすいものの、ピック&ロールにもハードなショーディフェンスとダブルチームを駆使して起点となる岸本にパスを出させないことを重視しました。また、スクリーンが強くヒットした場合はスムーズなスイッチも可能でスタンリーの万能性を最大限に生かしています。シンプルにブラントリーとのスイッチもあれば、ロールマンを他の選手がカバーし、スタンリーは空いたスペースを埋め、さらにその後でミスマッチをオフボールスイッチで解消します。この一つひとつの連動があまりにも早く、瞬間的にフリーの選手が生まれてもパスを出される前にマッチアップを正常化してしまうのは驚異的でした。

ファイナルの3試合で岸本は27本の3ポイントシュートを打ったものの、決まったのは4本だけでした。これはシュートタッチが悪かったというよりも、長崎のプレッシャーディフェンスによりオフェンスの組み立てが上手くいかず、ショットクロックを消費したことで苦しくなって打つシュートが多かったことが要因です。

琉球に限らず、各チームが長崎の機動力ディフェンスの前ではオフェンスを組み立てるのが難しく、ターンオーバーを多発していました。外国籍選手にはリムプロテクトとリバウンドを求めるチームが多い中で、ポイントガードへのハイプレッシャーもできれば、スイッチやカバーリングも上手いタイプを集めた異質な構成の長崎には、相手も従来とは異なる攻略が求められます。

長崎のディフェンスはBリーグでは異質なものでした。ただし、NBAファンにとっては常識に近いシステムでもあり、特にプレーオフではスピードにもフィジカルにも対応できるディフェンスは必須です。その一方でNBAでも長崎レベルでチームディフェンスが徹底されているチームは多くはありません。

ヘッドコーチのモーディ・マオールは「システムももちろん大切だが、システムが良かったから勝てたとは思っていない。やりたかったことを高いレベルで遂行できたから勝てたのであって、たとえ別のシステムであったとしても勝つことができただろう」とコメントしていますが、実際にグローバルな視点で見れば、システムそのものが革新的というわけではありません。

しかし、単にオールラウンドな選手を揃えれば作れるシステムではなく、高度な連携をし続ける集中力と運動量が求められ、しかも日本でプレーしていた選手にとっては異端なシステムです。それを完璧と表現して良いレベルで遂行したことは偉業とすら言いたくなります。

Bリーグの節目となるシーズンで優勝した長崎のディフェンスシステムは、Bリーグ全体の流行を大きく変えるかもしれません。ただし、このレベルで遂行しなければ穴だらけのディフェンスにもなり得ます。Bプレミアとして初めてのシーズンで何が起こるのか、楽しみでもあります。