「悔しさというより儚さというか、なんとも言えない気持ちです」
Bリーグファイナルゲーム3で琉球ゴールデンキングスは64-72で長崎ヴェルカに敗戦。あと一歩で3年ぶり2度目のタイトルを逃した。
琉球は立ち上がりから長崎の平面での激しいプレッシャーディフェンスに圧倒され、自分たちのやりたいオフェンスの形に全く持ち込めず、前半をわずか23得点に終わる。後半に入ると徐々に強みであるフィジカルを生かしたアタックで盛り返し、第4クォーター中盤には1ポゼッション差にまで肉薄した。だが、懸命の反撃もここまでで、最後まで食らいつくも追いつくことはできなかった。
琉球の看板選手である岸本隆一は、「悔しさというより儚さというか、なんとも言えない気持ちです。やっぱり長崎さんが自分たちより素晴らしいチームだったことが結果として出ました。純粋に自分自身の力不足だったと受け入れます」と、敗戦直後の気持ちを明かす。
5年連続ファイナル進出の偉業を成し遂げた琉球だが、これでファイナルは3年連続で敗退。しかも、3回続けてゲーム3での敗戦と、文字通りあと一歩で栄冠を逃している。来シーズンから新たなフォーマットへと生まれ変わるBリーグにおいて、今シーズンは大きな節目であり、岸本も「もちろん勝って終わるのが一番良かったと思います」と言う。ただ、一方で大きな充実感も得たシーズンだった。
今シーズンの琉球は、開幕節での連敗に始まり、中心選手の予想外の離脱もあっていつも以上にチームがまとまるのに時間がかかったことで、シーズン後半戦に入ってもチャンピオンシップ圏外にいた。ここ5年間で、最も苦しいレギュラーシーズンを送ってきたが、様々な困難を乗り越えてファイナルに辿り着いた。
岸本はこの道のりをこのように振り返る。「この場に向かうまでの時間は僕にとって本当に財産です。本当に楽しくて充実していました。もちろん上手くいかないことはたくさんあり、ぶつかることもありました。ただ、自分を擁護するつもりはないですけど、優勝を目指しチームを作り上げていく時間が大事で、もしかしたら自分にとって好きな時間だったかなと思います」
そして敗戦の悔しさを、さらなるステップアップの糧にすると前を向いた。「ここから自分がどう振る舞い、生きていくかでこの負けの意味を見出せる。むしろ、そうすることで見出していくしかないと今は思っています。試合が終わった後は『もったいない』と正直、自分でも思いましたが、これはこれで僕の人生だと受け入れて、次に進んでいくしかないです」

「日本のバスケットボール界が変化していく中で、本当に必死でした」
この10年を通して琉球はリーグの強豪であり続けた。それはチャンピオンシップ皆勤賞が何よりの証拠だ。そして、岸本はこの常勝軍団の大黒柱として、今回のファイナルでも当然のように取り上げられ、常にスポットライトの中心にいた。だが、岸本は今の地位を最初から得ていたわけではない。
Bリーグ初年度にチャンピオンシップクォーターファイナルで敗退した琉球は、2年目を迎えるにあたりbjリーグ時代から継続路線だったロスターを刷新する。その結果、チームは2年目にセミファイナル進出と躍進を遂げるが、その中で当時は若手だった岸本はポジション争いに負け、チャンピオンシップの大舞台で満足に出番を得られない悔しさを味わった。
そこから自らの努力で中心選手の地位を勝ち取った岸本だが、2020年春には指定難病である潰瘍性大腸炎と診断されたことを発表。体調管理に細心の注意を払わないといけない中で移動を繰り返し、年間80試合前後の過酷なスケジュールをずっとこなし、試合でハイパフォーマンスを続けてきたことは驚嘆に値する。
この誰もが称える10年の歩みについて、岸本本人がどう感じているかを聞くと「もっとやれたんじゃないか、というのは率直に言えることかなと思います」と語り、自身が大切にしてきたこだわりを明かした。
「Bリーグが始まって日本のバスケットボール界が変化していく中で、本当に必死でした。僕の感覚では荒波にどうにかバランスを取って立っていたら、今の立ち位置に個人、チームがいたという感覚です。気づけばすごくあっという間に過ぎたと思います」
「ただ、周りの状況とか見られ方とかいろいろと変わっていっても、やっぱり『コート上で何ができるか』だけに本当にこだわってきたつもりです。そこに対しては一切、後悔がないですし、これからも続けていくことで、大事にしていきたいです。この10年、いろいろな感情にさせてもらって、その一つひとつにちゃんと自分なりに向き合った自負はあります。これからもそういった部分を大事にしながら進んでいきたいです」
最終的に優勝回数は一度で、ベスト5などの個人アワードを受賞したこともない。だが、岸本がこのBリーグ10年間を象徴する選手の1人であることは間違いない。リーグ随一の強さ、人気を誇る琉球の地元出身選手として、大きな期待と重圧を真っ向から受け止め、卓越したプレーでファンの期待に応え続けてきた。彼こそが、地域創生を掲げるBリーグの理念を体現するフランチャイズプレーヤーの代表格だ。
#14 岸本隆一選手が2Pシュートを決め切り、10点のランに成功!#団結の力
▽バスケットLIVEhttps://t.co/qSdaxzScV6#琉球ゴールデンキングス pic.twitter.com/2ERRgmzGMP
— 琉球ゴールデンキングス公式 (@RyukyuKings) May 26, 2026
