
京都ハンナリーズはホームタウンを京都府内全域となる26市町村に設定し、社会貢献活動に注力した。その結果、今シーズンには年間400回を超えるイベント実施を達成し、地域に根ざすクラブへと着実に進んでいる。2022年から立ち上げた社会貢献チームの責任者である田中裕一にこの活動の意義を中心に、自身がこのクラブに携わることになった経緯などについても語ってもらった。
「目の前の集客に追われてはいけない」
──早速ですが、この仕事に就いた経緯についてお聞かせください。
学生時代は屋外スポーツを楽しむ程度で、実はバスケはやったことも見たこともありませんでした。出版業界に20年ほど携わり『GOETHE』という雑誌を担当していた時にスポーツをする読者コミュニティを立ち上げ、スポーツを楽しむ人がいて、応援する企業がいるというビジネスサイクルに興味を持ち始めました。その中でローンチ前だった卓球のプロリーグの『Tリーグ』でオーナーになる方と知り合うことができ、一念発起して出版社を退社してTリーグの立ち上げに携わりました。
その時に同じアリーナスポーツの視察ということで琉球ゴールデンキングスの試合を観に行かせていただく機会があって、観戦したのがBリーグとの最初の出会いでした。地元の人でも年に1回観に行けたら良いというほどチケットは入手困難で、会場の一体感や熱量に心が震えました。その経験からBリーグで働きたいと思うようになりました。
──なぜ京都ハンナリーズだったのでしょうか?
これまで営業職をしていたこともあって、当時はその方向で考えており、スポンサー営業をしていくためには街のポテンシャルもある程度必要だと思っていました。そこで当時フロントスタッフを募集していた京都に応募したのがきっかけですね。あとは、ずっと東京に住んでいたので京都に絶対的な憧れを抱いていました。「京都に住みながら仕事ができるなんて最高じゃん」という気持ちもありました(笑)。
──Tリーグで学んだことはありますか?
1年ちょっとの在籍で、当時はスタッフも4名くらいしかいなかったのですが、『ゼロイチ』の楽しさはありました。「会場はどうやって作ったら良いの?」「チケットはどうやって売る?」といった手探りの状態から「やっと500人集まったね」という喜び、他のスポーツの試合を視察に行って「こんな興行ができるんだ」という学びは純粋に楽しかったです。Tリーグはオリンピック選手が多く在籍しているので、その方たちと一緒に仕事ができたことは刺激になりました。
──憧れのBリーグで仕事ができるようになりましたが、理想と現実のギャップはありましたか?
Tリーグの時のほうが労働力的にも大変でしたが、『B1クラブとしてのあるべき姿』というのは、成長途中だということを感じました。
──今の部署に異動となった経緯について教えてください。
2022年にオーナー企業が変わり、松島(鴻太)が社長になったことをきっかけに『地域に愛されるクラブであるべき』という枠組みができて、社会貢献活動に注力する方針となりました。その時に今の部署の責任者に任命されました。雑誌の時も含めて20年以上営業をしていたので、職種が変わる異動は初めての経験でした。最初は僕が務まるのか心配でしたが、クラブのビジョンとして地域は重要な部分ですし、ゼロイチから作る分野は好きだったので、やってやろうという思いでしたね。

「やらせてください」から声がけしてもらえる立場に
──実際に社会貢献活動の部署はどのようなことをメインに活動されているのでしょうか?
今は地域貢献活動も成熟してきていて、一番重要視しているホームタウン活動を進めています。京都ハンナリーズは京都府内の全26市町村全部がホームタウンになっています。全市町村の住んでる方、自治体の方たちに『京都ハンナリーズが京都にあって良かった』と思ってもらえるようなイベントだったり施策を進めています。
──最終的に集客に繋がるベースの部分を作っているイメージでしょうか?
そうですね。ただ間違えちゃいけないのが『目の前の集客に追われてはいけない』ことです。やっぱり町に愛されるためには、自分たちがまず必要とされなければいけないということです。はんニャリンが祭りに来てくれて楽しかった、来てくれて良かった。バスケットボール教室に参加したことで子どもたちがスポーツをするきっかけになったと、親御さんに思ってもらえることがまずは大事なことです。
その先に、『チケットを買ってあげようか』という思いに繋がっていきます。あまり目先の集客を目的にせず、どちらかというと種まきじゃないですけど、下に下にじわじわとファンが増えてほしいと思って活動をしています。
──京都府内全域がホームタウンということで物理的な広さ、気持ちの部分での距離もあると思います。そのあたりの難しさというのはありますか?
そうですね、北の果てまで行くと車で片道2時間ほどかかるので遠いのは遠いです(笑)。でも赴けば温かく迎えてくれるので気持ちの距離は思うほど離れていなく、合理性で切り捨てちゃいけないなといつも思わせていただいています。メールや電話で済ませるのではなく、直接会いに行くことで僕らの熱量も伝わると思っています。
──実際に年間どれくらいの活動をされているのでしょうか?
この部署ができる前は年間40回くらいしか行っていませんでした。2022年に部署を立ち上げた時は、年間300回は活動したいという目標から始めました。最初の2年ぐらいは250回ぐらいしかできませんでしたが、去年に初めて300回を超えて、今年は約420回まで伸ばすことができました。
──実施回数もさることながら伸び率もすごいですね。
やはり求められてきたことが大きな要因になっていると思います。最初はいろいろな自治体や団体、学校に「何でもやるので声をかけてください」というところから始まって、今は「こういうことを一緒にやりたい」「コラボしたい」というお声がけをいただくことが増えました。あとはホームタウンが26市町村になったことで、各自治体とのコミュニケーションが増えたことが爆発的に伸びた要因だと思います。