仲間から信頼してもらうために「ハードにやる」のが大事
──プロ選手からヘッドコーチに転身されましたが、そもそも「ヘッドコーチになろう」と思った経緯はどんなものでしたか? また、ヘッドコーチという仕事の面白さを教えてください。
僕は5歳からバスケットを始めて、逆にバスケットしかやってきていないので、自分が感じた面白さや経験を次の若い選手に伝えたいと思ったのがきっかけです。
僕はまだコーチ経験が浅く、「何をすれば勝てるか」がまだ発見できていないのが正直なところです。それでも、選手たちと一つになって、勝つという目標に一生懸命に取り組むことがまず楽しいですね。あとは試合ごとに設定した目標をクリアしたり、選手が喜んでいる姿を見ることが幸せです。
──一言で表すのは難しいかもしれませんが、どんなバスケを目指していますか?
ハードなディフェンスから速い展開、トランジションのバスケットを常に心がけてここまでやってきています。
──この1年間、B1やB2のバスケットをご覧になって感じたことは?
Bリーグが誕生して、B1、B2、自分が所属していたB3の試合を数多く見てきました。B1のディフェンス力、オフェンスとディフェンスの間合いの強さの差を感じました。オフェンスに関しては、bjリーグのチームには勢いで行くチームがすごく多かったですね。そこで押しきれちゃう部分がありました。ところがNBLのチームはうまく頭を使ってスペーシングを生かしたり、仲間を生かしたり。なのでドリブルの数が少ないとか、そういったところに大きな差を感じます。
──選手からコーチになって、バスケットへの取り組み方は変わりましたか?
今はコーチをやっているんですけど、正直なところ、かなり反面教師でやっている部分があります。コーチとしての僕が選手に求めることを、僕が選手の時にやっていたかと言うとそうではないですし。ただ「ハードにやる」というのは一番大事だと考えています。仲間から信頼してもらうために、チームメート同士でハードにやるところを一番大事にしてチーム作りをしています。
同級生で頑張っているコーチと同じ土俵で挑戦したかった
──金沢でB3を戦った1シーズンはどんなものでしたか?
あの環境の中で1試合も気を抜かずやってくれた選手たちを誇りに思います。僕たちの目標は優勝云々よりも、1年でB2に昇格するということでした。ゲームを重ねる上で、試合に勝ててしまうことでメンタルの部分に波が出るんじゃないかという心配があったんですが、それをよそに選手たちは目標に向かってハードに取り組んでくれました。結果的に思ったよりも波がなく、1シーズンを乗り切ることができました。
──振り返って、昇格できた最大の理由は何でしょう?
ウチのチームはディフェンス力がブレませんでした。最後は福岡に連敗して優勝はできなかったですけど、ディフェンス力が一番のカギだったと思います。
──これからの金沢は、B2でどんな戦いを見せると思いますか?
今回、地区分けが決まりましたが、地区優勝は決して不可能ではないと僕は思っています。それでも上位2つには入るだろうというところで、どれだけチームパワーを高められるかですね。
──金沢をB2に昇格させた実績を引っ下げて、B1の島根に来る形となりました。島根のヘッドコーチを引き受けるまでの経緯を教えてください。
末松(勇人)GMには、かねてからオファーをいただいてました。最初はもう数年も前です。その時にお断りしたにもかかわらず、「B1で失敗したくない」、「B1で成功するために必要だから」と会いに来てくれて、その熱意が一番大きかったです。
──金沢に残ってB2を戦い、B1を目指すという選択肢もあったと思います。環境を変えて島根を選んだ理由は、B1の舞台で戦いたかったからでしょうか。
それもありますし、同級生で頑張っている桶谷(大)コーチだったり、大野(篤史)コーチだったり、彼らとはシーズン中もバスケットの話はしていたんですけど、同じ土俵で彼らに挑戦したいという思いがこみあげてきたから、というのが大きいですね。
島根のために、持っているものすべてを出し切る
──まだ新シーズンを戦うロスターが確定していませんが、B1ではどんなバスケで戦っていきたいですか?
まだ分かりませんが、B1の上位チームに比べると、選手層で恵まれているチームにはならないと思っています。なので、まずはディフェンスで73点以下。そこで抑えられるようなディフェンスのチームを目指してやっていきます。
──今決まってる選手以外だと、構想の中にはどんな選手が欲しいですか?
まずは日本人ビッグマンが2人欲しいです。そしてサイズのあるウイングマンですね。そこを獲得したいと思ってます。
──B1では能力が高い選手が必要になってきますね。
それはおっしゃるとおりで、B1は個の力がある上でチームに徹することのできる選手の集まりなので、そこに対応するために能力のある選手が欲しいです。ただ、選手がいれば勝てるわけではありません。同じように選手がいないから勝てないのかと言えば、そうじゃないと思っています。僕はそれを証明したい。だから来年は勝負の年だと思ってます。
──選手の気持ちが分かる上に、ヘッドコーチのあるべき姿として選手を平等に扱うイメージがあって、それで選手が鼓舞されているイメージが鈴木ヘッドコーチにはあります。
それは僕が実際に感じたことで、エースや外国人は怒られないのに若手は怒られる。僕はそれが嫌でした。「良いプレーは良い、悪いプレーは悪い」と、そこをしっかり徹底して、選手みんなを平等に扱っていきたいというのがあります。できる限りそれは実践するようにしています。
それは、出ている選手だけで試合に勝てるわけではないからです。メンバーの最後の12人目までの力があって初めて勝てると僕は考えています。選手のネームにコーチが負けることなくやっていきたいと思っています。
──初めて島根に行くことになりましたが、ファンへのメッセージをお願いします。
選手、スタッフ、ブースターの方たちのこの1年の頑張りがあって、島根は来シーズンのB1に挑戦できます。まずはそこに敬意を表したいと思います。この島根を改革しB1常連チームにするために、僕は持ってるものすべてを出して、島根県のために頑張ります。是非とも応援していただきたいと思っています。
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