日本バスケ界屈指のオールラウンダーは大都会で新たな一歩を踏み出した。ハワイ大からニューヨークのフォーダム大に転向したジェイコブス晶は3年生になった今シーズン、32試合(スタメン30戦)で平均7.2得点、4.8リバウンド、0.9アシストという成績をマーク。ほとんどのカテゴリーでキャリアハイを残し、攻守の要的な存在になった。アトランティック-10(A-10)カンファレンス内では苦戦が予想されたチームも、シーズン通算17勝15敗と健闘。カンファレンスゲームでは最初の7戦中6敗と厳しい滑り出しだったが、徐々に追い上げて8勝10敗でA-10の9位に入った。

昨夏は日本代表の一員としてアジアカップでも活躍した成長株は、ニューヨークでの生活になじみながら過ごした1年をどう振り返るのか。これから先の人生、キャリアにどう繋げていこうと考えているのか。シーズン終了からしばらく経った3月27日、Zoomでのリモートインタビューでじっくりと語ってもらった。

来シーズンもフォーダム大でプレーすることを決意

──今シーズンをあらためて振り返っていかがでしたか?

いろいろあった1年、という感じでした。チームとしても、自分としても、良い部分も悪い部分もあったと思います。もちろんそれらはどんなシーズンもあることではありますが、最終的には良いシーズンだったと振り返れると思います。

──事前の予想では、フォーダム大はA-10内では最下位争いではないかという厳しい下馬評でした。それが中位まで上がったのだから、健闘と言えると思います。

(カンファレンスゲームの)出だしは悪かったですが、そこから上がっていって、チームのケミストリーも良くなっていきました。コーチ、チームメートもすごく仲が良かったですし、最後のカンファレンストーナメントでこそ初戦で負けてしまいましたけど、そこで戦えるということを見せられたのは良かったです。

──徐々にペースを上げ、カンファレンスゲーム最後の7戦を5勝と力強く締めくくりました。反省材料はスタートが悪いゲームが多かったことでしょうか。A-10トーナメントのジョージ・ワシントン大戦でも序盤に大量リードされ、一度は勝っている相手に敗れてしまいました。

最後の試合は本当に象徴的だったと思いますね。最初にめちゃくちゃ大差をつけられ「ちょっとやばいかな」という気持ちから、後半に追い上げるも届かず。そんな試合がシーズン中から多分5〜6回ぐらいあったと思います。それが2025-26年のフォーダム大のアイデンティティだったんでしょう(笑)。そういう終わり方になったのは残念でしたが、トータルでは楽しい1年になったと思います。

──ご自身のプレーはいかがでしたか?

正直、もう少しできたという気持ちはあります。それでも良い部分はあったし、より高いレベルのA-10カンファレンスに来て、そこでもやれるということは見せられたかなと。次のシーズンはもっと力を出せるようになりたいですね。

──今シーズンの思い出深いゲームは?

良いスタッツを残せるゲームがいくつかありました。 特に2月末のバージニア・コモンウェルス大戦(13得点、13リバウンドと活躍)が今シーズン一番良いプレーができたゲームで、強豪相手にそれができたのは大きかったです。マイク・マグパヨヘッドコーチはほぼ毎試合スタメンで出してくれて、信頼も感じられました。シーズン終了のミーティングでも、「スタッツでは残っていなくても、試合に出ていると信頼できるし、 チームのためにもいつもプラスになっている。コートにいると安心できる」と伝えてくれたんです。そういったベースがあると、プレーをするのはより簡単になります。 オフの間も上達できると思うので、次のシーズンを今から楽しみにしています。

──課題として残ったのはどこになりますか?

これまでと同じ感じですね。ビッグマンとのマッチアップをよりしっかりやるということと、ボールハンドリングとかガード系のことをもう少しできるようになること。それらは練習が必要というよりも、できること自体は自分もコーチも分かっているから、試合で実際に発揮できるようにならないと、ということですね。

──ゲームを見ていると、ジェイコブス選手は「もっとできるのでは」と思うことも多いです。オフェンス面ではシューターに特化したような役割でしたが、もっといろいろなスキルを持ったオールラウンダーだと思うので、アタックもしてほしいし、ポストプレーも使ってもいいんじゃないかと感じます。もちろんチーム戦術ありきですが、そういった周囲の見方をどう思いますか?

自分としてもそういったプレーを増やしていきたいと思うし、コーチからももっとやってほしい、他のプレーも使いたいと言われています。このオフの間からコーチと一緒に練習して、次のシーズンではどういう場面で使えるかを考えていきたいです。

──昨シーズン中に一つ残念だったのが、一時期はスモールフォワードで良いプレーをしていたのに、センターの選手が途中離脱してからはパワーフォワード寄りに役割が変わったことでした。

確かにスピードとか流れなどといった面で難しかったですが、そういうことがあってもどうにか勝ち続けられるチームにならなければいけませんでした。まだどうなるか分かりませんが、昨シーズンのメンバーの多くに残ってほしいですね。ビッグマンのリクス・シュルテは転校しちゃうんですけど、他のメンバーはプレーも分かるし、残ってくれれば来シーズンも良いチームになると思います。

──それではご自身は来年もフォーダム大でやるという方向で変わっていないですね?

はい。

「It’s life(これも人生)」

──ニューヨークの生活は慣れましたか?

かなり慣れました。雪が降らなくなって、やっとニューヨークが戻ってきたっていう気持ちになっています。あの寒さにはもうならないでほしいです(笑)。学校に行って、バスケをやってという日々でしたけど、それがしたいという気持ちでここに来たので、全然悪くはないです。

──シーズン途中で食中毒になるというアクシデントもありましたが、身長と体重は今シーズンを通じて変わってないですか?

身長は204cm、体重は103kg。開幕の時と変わっていないです。

──オフになったばかりですが、今夏は日本に帰る方向でしょうか?

多分帰ると思います。日本代表のこともありますが、まだ帰国の日にちとかは決まってないです。学校の授業は5月までなので、帰るなら6月になるでしょう。

──日本代表は2月に監督の交代という大きなニュースがありました。

(前任の)トム・ホーバスヘッドコーチのおかげで代表の道が始まって、パリ五輪にも連れて行ってもらいました。個人的にも多くのことをやってもらったと思うし、感謝もしています。(ヘッドコーチ交代は)日本のバスケが次のステップアップのために必要だとJBAも考えて、みんなで話し合ったんだと思っています。新しいコーチ、スタッフを入れるのは良いことだと思うので、楽しみにしています。

──関係が深かったホーバス前ヘッドコーチに連絡はしたのでしょうか?

自分から「ありがとう」という連絡はしました。そうしたらテキストメッセージで返事が来て、少し話すことができました。連絡したい時はいつでもできるし、アドバイスがほしい時はいつでももらえるので、大丈夫です。

──日本代表の強化試合の際、シュートが決まらない時にでもホーバスヘッドコーチに「打ち続けろ」とアドバイスを受けたというエピソードがありましたね。

そういうところで自分のプレーも変わったと思うし、心の持ち方も変わりました。今、自分がここにいられるのはトムさんのおかげによるところが大きいです。だから、いないのは悲しいですが「It’s life(これも人生)」ということなのでしょう。次に向けて頑張っていきたいと思っています。

──桶谷大新ヘッドコーチに会ったことはあるのでしょうか?7月のFIBAワールドカップアジア予選は出場可能と思いますが、どうなるのでしょうか?

日本代表合宿の時に一度会って、挨拶させていただいたことがあったと思います。アジア予選についても、これからいろいろと話し合っていきたいですね。

──9月に開催されるアジア競技大会は日程的に難しいのでしょうか?

それもコーチと話さなければいけないことです。もちろん代表でのプレーもすごく大事だと思いますが、 できればこのオフシーズンはフルに使って自分のスキルをアップさせたいという気持ちもあるんです。先ほども言った通り、今後に向けてシュート以外の面も伸ばしたいんです。

──日本代表とともに、カレッジでの最後の1年にかける思いも伝わってきます。

自分が日本代表にいっても、同じことをやっているだけではチームのためにもならないですよね。しっかりと上達すれば、いずれ日本代表の役にも立てるんじゃないかという考えがあります。

──それでは最後に来シーズンの目標をお願いします。

4年生になり、これで大学は終わりです。自分がこの3年間でやってきたことを、コート上での活躍というしっかりとした形で示したいと思います。もちろんこれは自分の頑張り次第ですが、チームの中でもメインになりたいし、NBAのサマーリーグからも声がかかるくらいのプレーヤーになりたいです。それぐらいのプレーができれば、もちろん日本代表のためにもなります。そういった気持ちでやっていきたいです。