岸本隆一

お互いにロスターを入れ替えて対戦

3月22日にマカオ特別行政区で行われた『EASLファイナルズ マカオ2026』の3位決定戦は、アルバルク東京と琉球ゴールデンキングスの『Bリーグ対決』となった。互いをよく知る両者は終始拮抗した好勝負を繰り広げたが、ラストプレーに笑った琉球が77-76で劇的勝利を飾った。

セミファイナルから中1日で行われたこの試合に、A東京はマーカス・フォスターからブランドン・デイヴィス、琉球はヴィック・ローからデイミアン・ドットソンにロスターを変更して挑んだ。デイヴィスは豪快なブロックや激しいプレッシャーディフェンス、ドットソンは3ポイントシュートやペイントアタックなどそれぞれの持ち味を発揮。特にA東京は、セミファイナルの桃園パウイアン・パイロッツ戦でほぼ一人でインサイドを支えていたセバスチャン・サイズの負担が軽減され、第1クォーターから9得点を挙げて21-9とリードを奪った。

互いにオン・ザ・コート1でスタートした第2クォーターは、これも互いに堅いディフェンスを展開し、序盤は得点が伸びなかった。しかしクォーター中盤、琉球は内外角のバランスの取れたオフェンスで10-0のランに成功して一気に逆転し、38-32とリードを奪って前半を終える。松脇圭志がペネトレイトから脇真大の3ポイントシュートやジャック・クーリーのゴール下を演出し、ルーズボールでも身体を張って流れを生み出した。

ハーフタイムのフラッシュインタビューで、琉球の桶谷大ヘッドコーチは「相手の激しいプレッシャーに少し受け身になってしまい、ターンオーバーから走られる場面があった」と反省の弁を述べ、「後半は攻守ともによりアグレッシブさを出したい」とコメント。A東京のデイニアス・アドマイティスヘッドコーチは「ボーナスが溜まっていない状況で2回もバスケット・カウントを与えてしまったのは受け入れがたいミス」とファウルマネジメントに苦言を呈し、オフェンスについては「何度か焦ったプレーが見られたが打ちたいシュートは打てている」と及第点を挙げた。

デイヴィス

ラスト21.5秒が両チームの明暗を分けた

デイヴィスの起用でインサイドの不利がかなり軽減したとは言え、琉球が誇るクーリーとアレックス・カークの2ビッグを攻略するのはやはり簡単ではない。前半リバウンド本数で琉球に上回られたA東京は、ビッグマン以外の選手もリバウンドへの意識を高めて第3クォーターに入る。そしてオフェンスの主軸を、インサイド主体のサイズから外角プレーも得意なデイヴィスにシフトした。

デイヴィスはこのクォーターだけで3ポイントシュート2本を含む11得点と躍動。中村浩陸がデイヴィスに巧みにパスを出し、テーブス海はゲームメークだけでなく自身のアタックでも得点を獲りに行き、52-54と1ゴール差まで詰め寄って第3クォーターを終える。

琉球は残り1分半までクーリー以外の選手の得点がゼロ。クォーター終盤に岸本隆一のこの日1本目となるロングスリーが決まったことは、最終クォーターに向けた好材料となったが、カークのヒジが接触したドットソンが出血退場し、カークが3つ、佐土原が4つ、脇が3つとファウルがかさんでいた。

そして琉球の不安要素は第4クォーター開始早々にふくらんだ。サイズのリバウンドショットにカークが4つ目のファウルを犯したのだ。カークはベンチに下がらずコートに留まったものの、ディフェンスの強度を下げざるを得なくなった琉球に対し、A東京は続くテーブスのアタックで早々に逆転。琉球もドットソンや岸本の3ポイントシュートで食らいついたが、残り4分、デイヴィスのフリースローと小酒部泰暉の3ポイントシュートでA東京が72-66と点差を広げた。

琉球はクーリーと岸本の得点で点差を詰め、残り21.5秒、ドットソンのフリースローで1点差にまで追いついたが、バックコートからA東京のリスタートという状況からの逆転は普通に考えれば簡単でない。しかし、琉球は思わぬプロセスでこれをやってのけた。

このポゼッションの直前、琉球はカークに変わって佐土原をコートに送り出した。ファウルゲームを仕掛けるための交代かと思われたが、琉球はボールを運びに絡むテーブスや小酒部にファウルをしなかった。フロントコートで待機していたデイヴィスは、リスタートからわずか2〜3秒でボールを受け取るとドリブルなどで時間を消費することなく、ゴール下にいたサイズに得点を狙わせるような鋭いパスを出した。フリーのサイズはダンクを狙いにいくが、まさかのファンブルで失敗した。

そして、細かくパスを繋ぎ、右コーナーでパスを受けた佐土原が、佐々宜央アシスタントコーチと練習を繰り返していたというユーロステップから落ち着いて得点を決めて、残り7.2秒、琉球が逆転。再逆転を狙った小酒部のラストシュートが外れ、琉球は劇的な逆転勝利を手にした。

桶谷大

桶谷ヘッドコーチ「神様が勝利を呼び込んでくれた」

琉球は20日のセミファイナルで宇都宮ブレックスに103-96で敗北。昨年大会のリベンジが叶わなかったこと、そして大激戦を手中に収められなかったことへのショックは相当に大きなものだったようで、桶谷ヘッドコーチは「選手たちはよく気持ちをもう一度この試合に持ってきてくれたと思います」と語った。そして勝ちきれた要因については「セミファイナルと同じような負け方をしそうなシチュエーションだったにもかかわらず、最後まで平常心を保って我慢強くプレーできました。最後は神様が僕たちに勝利を呼び込んでくれたのかなと思います」と話した。

また、最終盤の戦略について尋ねられると、次のように説明した。「ファウル数は関係なく、まずバックコートでトラップを仕掛けようと伝えました。また、フロントコートに入った際は、ファウルができる選手を3人決めて『この選手がボールを持ったらこの選手がファウルをしよう』と話をしました。最終的にサイズ選手がファンブルしてくれたことでチャンスが来ましたが、あそこはレイアップを決められても時計が止まるので、タイムアウトを取ってフロントコートから攻める選択肢もありました。2点取られても、3点入れれば同点というシチュエーションだったので、悪くはなかったと考えています」

両チームは一息つく間もなく今週末のBリーグに戻り、チャンピオンシップ争いに心身を投じる。レギュラーシーズン中の両者の対戦はすでになく、次に対戦するとしたらチャンピオンシップ。この試合の結果、そしてA東京はドットソン、琉球はデイヴィスという相手の新戦力の実力を肌感覚で得られたことが、ポストシーズンの戦いにどのような影響をおよぼすかにも注目したい。