「一人でバスケをしているわけではないです」

B1第21節、8勝25敗で東地区12位に沈む川崎ブレイブサンダースは、同7位のサンロッカーズ渋谷とホームで対戦。ゲーム1をロスコ・アレンの劇的なセカンドチャンスポイントで競り勝った川崎だったが、ゲーム2は58-73と力負けを喫した。今シーズン初の同一カード連勝はならなかったが、直近の6試合では3勝3敗と、チーム状況は上向きつつある。

川崎が掲げるクラブのアイデンティティ『BE BRAVE』。チームは今の成績以上にこの言葉を重要視している。昨年の11月にネノ・ギンズブルグヘッドコーチが退任となり、新たにヘッドコーチに就任した勝久ジェフリーは、就任に際してチームの文化を再構築すること、チームアイデンティティを作ることにフォーカスすることを語っている。その新体制で徐々にプレータイムを増やし、現在は先発を任されているのが長谷川技だ。

長谷川に求められているのはディフェンスのトーンセットで勝久ヘッドコーチも「ディフェンスの遂行力、チームとしてどういうバスケットをしたいのかをすごく理解して、それを体現してくれる選手」と信頼を置く。

しかし、この試合では相手のビッグラインナップに手を焼き、ファウルで止めるシチュエーションも多く見られ、ディフェンスのトーンセットは試合を通じて成功していたわけではなかった。1月下旬に復帰した山内ジャヘル琉人は長谷川の代わりにコートに立つも、約5分半の出場で5ファウルとまったくリズムに乗れなかった。ビッグラインナップに対しては3番の選手のパフォーマンスがカギになってくるが、長谷川は『個』ではなく『集』が大事と語る。

「一人でバスケをしているわけではないです。得意、不得意な部分はみんな持っていて、そこをカバーし合うというのがバスケットボールの競技特性だと思うので、もっとチームのコミュニケーションを高めて連携を強くしていきたいです」

長谷川からすれば、若手のミスはチームのミスとしてとらえているのだろう。若い選手が多い川崎では、「思い切りの良いプレーを求めている」と勝久ヘッドコーチも話すように、ベテランはその姿勢を理解している。だが、すべてのプレーを許容しているわけではない。この試合ではアレンがリング付近のシュートを落としたことで、流れがSR渋谷に傾いていった。大黒柱のミスがチームに与える影響は大きい。だからこそ長谷川は「ロスコの笛頼みのレイアップシュートとか、ああいうの止めてくれと、ちゃんとジャンプストップして、自分で判断してパスをするなり、シュートするなりしてほしいと言った」と苦言も呈した。

このバランスが今の川崎には必要な感覚である。アレンのプレーをすべて否定しているわけではない。チームの流れが悪い時に如実に出てしまう雑なプレーを最小限にしていくことが、チームのムラっ気をなくし堅実なプレーの連続へと繋がっていくことに必要なのだ。

「バスケットボールは人生と一緒だ」

試合に勝つことがファンやブースターへの最大の恩返しになることは間違いない。だが、最後まで戦い続ける姿勢を見せることは、勝利を届けられなくてもできる。そしてそれは時に勝つことよりも重要視される。勝久ヘッドコーチはそう考える一人で「最後まで戦い続けるのが我々のアイデンティティ」と強調し、試合の趨勢が決まっているタイミングでコートに送り出した長谷川についてこのように語った。

「選手側からこちらに『今これやりますよね?』っていうコミュニケーションが出てくるのはうれしいことで、長谷川選手はそういう共通理解があります。最後まで戦えたことは自分たちにとってはすごく大きいですし、絶対にやるべきことで、それがないと成長はないと思っています。それを体現する一人として、長谷川選手はすごく貴重な存在です」

スポーツの世界では常にトップ争いを続けるのは困難である。連覇を達成するチームはもちろん存在するが、必ずと言って良いほど衰退する時期は存在する。長谷川は酸いも甘いも経験してきた。だからこそ、この再建の道は必ずや古豪復活の礎となるはずだ。それは彼の言葉からも強く感じ取れた。

「『バスケットボールは人生と一緒だ』と賢次さん(佐藤賢次アシスタントゼネラルマネージャー)がよくおっしゃっていましたが、辛い時もあれば良い時もあるので今は、やるしかない。絶対良くなっていると思うので前向きに捉えて続けていきたいと思います」