河村勇輝との意外な接点
右足の血栓を克服した河村勇輝が11月中旬、ブルズと2ウェイ契約を結び直したことは、日本バスケットボール界にとっても大きなニュースになった。この報道に喜んだのはアメリカで活動する選手たちも同じ。小柄なポイントガードという点で、河村と共通点のあるボストンカレッジのテーブス流河も刺激を受けた1人である。
ボストンカレッジがホームでピッツバーグ大と対戦し、65-62で勝利を挙げた1月21日。その試合後、テーブスは笑顔で河村の功績を称えた。「自分より小さいポイントガードですし、日本の高校、大学、プロからの経由でNBAまで繋げたという点でもすごい経緯ですよね。そういうところは尊敬しています。活躍を見ていると刺激にもなりますし、日本人としてうれしい気持ちでいっぱいです」
河村とテーブスは年齢的に3歳離れており、プレーしてきた舞台も異なる。テーブスが昨夏、初の日本代表入りを果たした際、河村は参加していなかった。そういった背景から接点は少なそうにも思えたが、実は昨夏、日本に帰国した2人のガードは東京のナショナルトレーニングセンター(NTC)で一緒にワークアウトをこなしていたのだという。その際、Wリーグなどでコーチを務めてきた父BT・テーブスと日本代表のトム・ホーバスヘッドコーチの関係が接点になった。
「トムさんが僕のお父さんに連絡し、『ワークアウトするから入ってみないか』と言ってくれたらしいです。それで河村君、富永君(富永啓生)、ハーパージュニア君(ジャン・ローレンス・ハーパー・ジュニア)と練習をしました。その前には馬場雄大さんとも一緒にワークアウトして、そこでけっこう繋がりができた感じですね。河村くんとも話はしました」
現在、主戦場にしているステージは違くとも、プレーしている国とポジションが同じであればシェアできるものが多かったことは容易に想像できる。そして、そのトレーニングにも重要な意味があったことは間違いない。気の強いテーブスだが、現時点で自身の前を走っている河村に対してのリスペクトは隠そうとしない。
「(河村の良さは)1対1のディフェンスをしたら誰もついていけないような素早さと、判断力ですよね。シュートはどんな位置からでも決められるし、試合に対応して、アシストに繋げたりもしている。個人スキルがあった上で、判断力も優れているのはどのガードも尊敬する部分。そこは一番すごいなといつも思います」

「得点しにいくか、周りを生かすか、そのバランスが課題」
ボストンカレッジの一員として2年目を迎えたテーブスも着実に実績を積み重ねている。昨年12月3日のLSU戦で14得点を挙げて実力を誇示すると、その次の試合からスタメン入り。以降、10戦連続で先発として起用されている。12月10日からの9試合でターンオーバー2以上のゲームはゼロという安定感を首脳陣にも認められ、ACC(アトランティック・コースト・カンファレンス)という強豪カンファレンスに属するチームで立場を確立させた。
もっとも、確かに堅実ではあるのだが、まだインパクトを埋め切れないゲームも多い。自己最多の21得点を挙げたフェアリー・ディッキンソン大戦を除けば、勝利を手繰り寄せるような働きが頻繁にできているわけではない。
「得点しにいくか、周りを生かすか、そのバランスが課題です。自分としてはもっと自由に得点しにいきたい気持ちがあるんですけど、そうなるとチームの形が崩れてしまう部分がある。どっちもできるようにしていきたいですね」
多くの試合を接戦に持ち込むボストンカレッジだが、今季9勝10敗、ACCでは2勝4敗という戦績が示す通り、勝ち切れないことも多い。ポイントガードの価値はやはりチーム成績で測られるもの。テーブス本人も、「チームを勝たせるバスケが次のステップです」と話していた。そして、そのネクストステップを考えた時、ポイントガードとしてのタイプは少々違っても、河村のプレーは参考になるに違いない。
「自分はスキルでかわすようなガードですけど、河村君はスキルとスピードの2つを繋ぎ合わせて、駆け引きしていくような感じ。スピードの使い方、どのタイミングでチェンジ・オブ・ペースを使うのかとか、彼はすごくうまい。そういった部分はビデオを見たりして、見習っています」
確実に力をつけているテーブスだが、パリ五輪で世界的に名を売った河村を『ライバル』と呼ぶ位置にはまだ到達していないのかもしれない。ただ、テーブスも2028年までには日本代表に定着し、ロサンゼルス五輪に出場することを夢見ている。だとすれば、今からの2年間で河村に近づき、肩を並べなければならない。
「はい、それが目標です。彼はもう(立場は)定まっているので、自分も追いつかなければいけません。お兄ちゃん(テーブス海)もポイントガード争いには絡んでくるでしょうし(笑)。2026年も自分のできる限りの努力をして、悔いのない年にしたいです。自分の日々の行動、日々の頑張りに注力すれば、結果は自然とついてくるはずなので」
今はまず激戦が続くACCで、ボストンカレッジに勝利をもたらせるような司令塔になるのが21歳の当面の目標。その道は間違いなく未来に繋がっていく。アメリカ仕込みの河村とテーブスが、いずれよりハイレベルで共闘するような流れになれば、日本のバスケットボールにとっても大きな財産になるはずなのだから。
