育成キャンプは「自分のためになっているし、楽しい」
バスケットボール日本代表は若手中心のメンバーを集めて育成キャンプを行っている。今回の招集メンバーの身長は平均199.5cmとサイズ重視。A代表の先発ガードを務める富樫勇樹が167cm、キャプテンの篠山竜青が178cmと、他のポジションに比べて大型化が進んでいないポイントガードにあって、190cmの中村太地は一際目を引く存在だ。
育成キャンプと銘打たれてはいるが、参加している選手にとってはジョーンズカップに向けた選手選考の意味合いも強い。中村は「アピール合戦です」と気持ちを込めながらも、レベルの高い環境でバスケができることを何よりも楽しんでいる。
「心からこういう環境を求めていたので、ここでバスケットができることがまずうれしいです。コーチからは『プレーをシンプルに』と言われていて、それをいかに体現するかですね。平均身長が高い中で、自分がガードとしてできることを毎日学べる環境にいるので、自分のためになっているなって思うし、楽しいです」
自分を高めることに夢中な中村は、自身の強みをこのように語る。「ペイントの中に入ってクリエイトができたり、外も打てます。スコアもしながら、味方が気持ち良く攻められるようにパスを回すことが強みになっていると思います」
ポイントガードとしては背が高くても、2m級がズラリと並ぶ今のチーム内で得点を挙げるのは容易ではない。フィジカル自慢の選手がひしめくペイントエリアにアタックすることはなおさらハードだ。それでも中村は当たり負けせず、緩急を使ったドリブルムーブで敵陣に侵入し、次々とクリエイトして見せた。
「自分の中では思ったよりできている感じがありますね」と、自己評価は上々。「やっぱり日の丸を背負いたいですし、日本代表でめちゃくちゃプレーしたいです」と、代表生き残りへ強い意欲を見せた。
プロの世界を経験し、メンタル面で変化
中村は過去3シーズン連続で、Bリーグの特別指定選手としてプロの世界を経験している。初年度のシーホース三河、2年目の富山グラウジーズではそれぞれ1試合のみの出場に終わったが、昨シーズンの横浜ビー・コルセアーズでは43試合に出場し、平均8.5分のプレータイムを得た。
目立ったスタッツは残せなくても、この3シーズンで積み重ねた経験は決して無駄にならない。「上のレベルの選手と張り合う中で、今までだったらビビっちゃうこともありましたが、今は難なくできます。去年のアジア大会、Bリーグと、すごい経験をこの1年でしてきたので、そこは自信に繋がりました。自信を持つことで、より積極的にプレーできるようになりましたね」
こうした自信は、プレーだけでなく態度にも変化をもたらした。中村からの絶好のパスを受けた太田敦也がシュートを外した場面で、中村は太田に駆け寄りシュートミスを指摘した。
「Bリーグでは20歳上の選手もいるので、一回り上とかが当たり前の世界で2年間やってきました。コートの中に入ってしまえば同じバスケットボール選手ですし、コミュニケーションというか会話ができないとダメです。『WIN-WIN』の関係を作るためにも、そういう言い合いは嫌いじゃないですね」
もちろん、太田の温和な性格が意見を言いやすい状況にさせていることもあるかもしれない。それでも、この合宿で最年長の太田に対し、いわば『ダメ出し』をすることは決して簡単なことではないはず。
それでもリーダーシップを必要とするポイントガードにとって、誰にでもモノ申す資質を備えることは大事なポイントだ。強いメンタルを兼ね備えた中村が司令塔を務め、過去最高身長のラインナップで世界に挑む日もそう遠くないはずだ。