ジャ・モラント

スターから問題児へ、グリズリーズはオファーを検討中

ジャ・モラントのトレードが成立間際と見られている。2019年のNBAドラフト全体2位指名を受けてグリズリーズに加わったモラントは、驚異的な運動能力とフィニッシュのスキルを駆使したリムアタックで、エースの重責を担ってきた。

1位指名のザイオン・ウイリアムソンを上回ってルーキー・オブ・ザ・イヤーを受賞すると、2年目はチームを4年ぶりのプレーオフへと導き、3年目にはMIPを受賞するとともにオールスターに選ばれた。4年目の2022-23シーズンもオールスターに選出されるも、これと前後して『拳銃を巡るトラブル』が噴出する。ナイトクラブで拳銃を持つ様子を自らSNSで配信して2試合の出場停止に。ところが問題はこれで収まらず、彼はSNSのライブ配信中に再び拳銃を持ち出した。これにより、2023-24シーズン開幕から25試合の出場停止となった。

この出場停止が明けて9試合に出場しただけで、右肩の脱臼でシーズンを終えることに。その後のモラントは、足首やふくらはぎなど相次ぐケガに悩まされる。昨シーズンは50試合出場、今シーズンもここまで39試合のうち15試合でしかプレーしていない。

素行の問題を別にしても、ビッグマンが待ち構えるゴール下に飛び込んで『何とかする』プレースタイルはケガのリスクが高い。彼自身、「もうダンクはしない」とアクロバティックなプレーの封印を宣言したこともあるが、相手にとって一番の脅威となるリムアタックなしでは、これまでとは全く異なるバスケをプレーすることになる。

グリズリーズがモラント依存を減らす新たなスタイルを模索したのが昨シーズンだったが、これが上手くいかずに、テイラー・ジェンキンスが解任された。ルーキーイヤーからモラントの庇護者だったヘッドコーチが去ったことで、再び彼のメンタルは不安定になっていく。新たな指揮官トゥオマス・イーサロとモラントは噛み合っていない。

今シーズン開幕6試合目のレイカーズ戦で事件は起きた。ボールを持っても隣のチームメートへのパスを繰り返すだけで攻め気を全く見せず、チームの敗戦後にイーサロからその態度を批判されると、侮辱的な言葉で応戦したという。これで科された1試合の出場停止処分が明けた後も、モラントのプレーは低調なまま。チームは17勝22敗の西カンファレンス10位と下位に沈んでいる。

現在のモラントはふくらはぎのケガで4試合連続で欠場中。この間に『ESPN』は、グリズリーズが彼のトレードを交渉中だと報じている。先日、ホークスが『チームの顔』だったトレイ・ヤングを実質的なサラリーダンプで手放さざるを得なかったように、今の市場は高給取りのポイントガードへの評価が厳しい。モラントは5年1億9700万円(約300億円)の契約3年目で、あと2年は重い年俸が残っている。まだ26歳ではあるが、運動能力に依存するタイプのプレースタイルの選手がケガを抱えると将来性は不透明になるし、オールスターレベルから脱落した今は才能よりも素行の面に目が向く。

これら複数の要因から、モラントのトレードは「チームを勝たせるスターがどこへ行くのか」ではなく、「落ち目の問題児に興味を示すチームはあるのか」というネガティブな注目のされ方をしている。

厳しい世界でここ数年は結果が出ず、半分は自分の素行不良という自業自得の面もあるため、そう見られるのも無理はない。しかし、チームメートは彼への変わらぬ愛を示している。『ESPN』がトレードについて最初に報道した日は、サンダー戦の当日だった。モラント不在のこの試合の開始早々に3ポイントシュートを決めたジャレン・ジャクソンJr.は、両耳を塞いで雑音をシャットアウトするモラントのパフォーマンスを行った。1年後輩のエースに対する愛情と、くだらない報道には耳を貸さないという姿勢を示すものだ。

この試合後、ジャクソンJr.は「バスケのビジネスは人を消耗させる」と言った。「いろんなことがあったけど、僕たちは兄弟だ。いつもジャのことを本当に気にかけている。こんな雰囲気だけど、あいつはこの会場に来た。その意味は分かるだろう? 僕たち全員が世間の厳しい目に晒されているけど、特にあいつには同情するよ。あいつがこのチームに来たことで僕の人生は変わった。ジャ・モラントが誰なのか、君たちも分かっているはずだ」

しかし、彼らの結び付きがいくら強くても、別れの時は近いように見える。モラントはイーサロだけでなくフロントにも不信感を持っており、フロントは他のチームからのオファーを吟味する段階に入った。サンダー戦の時点でイーサロは「モラントの状態は悪くないので復帰は近い」と語ったが、現地1月11日のネッツ戦でもモラントの復帰はなかった。

グリズリーズはここからヨーロッパに飛び、ベルリンとロンドンでマジックと対戦する。モラントのトレードが秒読み段階に入っているとすれば、彼はこの遠征に参加しないだろう。チームが戻って来た時には、エースはもう去った後かもしれない。