勝又絆

「積み上げてきた自信が確信に変わったウインターカップ」

ウインターカップ決勝、福岡大学附属大濠は東山に97-71で圧勝し、史上7校目となる大会連覇の快挙を成し遂げた。

試合の出だしはともにシュートが入らない重い展開だったが、ここで大濠に流れをもたらす立役者となったのが勝又絆だった。4-5で迎えた第1クォーター残り6分から、188cmの勝又より一回り以上もサイズのある(203cm)ウェトゥ ブワシャ エノックをスピンムーブでかわしてレイアップを決めると、再びエノックを相手に強気のアタックを仕掛けてバスケット・カウントを獲得。この勝又の連続得点でリードを奪った大濠は、ここから一度も東山に追いつかれることがなかった。

この試合で勝又はこの連続得点以外にシュートを沈めることはなかったが、チームを勢いに乗せる貴重な5得点だった。そして7リバウンドを挙げるなど、守備の中心としてしっかりと自分の仕事を遂行した。そして、3年生の勝又は、このように優勝へのよろこびを語る。

「3年間、片峯(聡太)先生の下でバスケットの部分と人間力を育ててもらい、最後に優勝という形で恩返しできてホッとしています。やりきった気持ちで一杯です」

今年の大濠は、1年生の白谷柱誠ジャック、2年生の本田蕗以と下級生に世代随一のスコアラーを有しており、タレント力では他のチームより頭1つ抜けた存在だった。だからこそ、勝又や榎木璃旺と、昨年の優勝チームでも先発を務めていた3年生2人には大きいプレッシャーがのしかかる状況とだったが、見事にチームをまとめ上げた。

勝又は「特に下級生に素晴らしい選手が揃っていて、『このチームで日本一を取らないといけない』という気持ちもありました。確実に優勝するため、一つひとつ細かい部分を突き詰めてきました。その積み上げてきた自信が確信に変わったウインターカップでした」と安堵の表情を見せる。

一時は3年生のリーダーシップに苦言を呈する時もあった片峯コーチだが、最後はこのように称えていた。「3年生の真面目さ、ひたむきさを見て、いつも生活、練習を一緒にしている1年生、2年生の本田、ジャックや櫻井(照大)たちから『この3年生を勝たせてあげたい』という発言がちょっとずつ増えていきました」

勝又絆

「泥臭いプレーを自分の武器として、チームにエナジーを与える」

この真面目さ、ひたむきさを誰よりも体現していたのが勝又だ。中学時代の彼は3年時にライジングゼファーフクオカU15の得点源として、決勝で佐藤凪を中心とした横浜ビー・コルセアーズ U15を撃破してジュニアウインターカップ優勝をもたらした。スタッツを残し脚光を浴びる立場にいたが、大濠に入学後は真逆の部分に活路を見出した。中学から高校、高校から大学とカテゴリーが進むにつれ主役から脇役へと立場が変わるのはよくある。とはいえ、U15チームで日本一のエースが、高校に入って守備とハードワークこそが自分の仕事と路線変更するのは簡単なことではない。

だが、この難題を勝又はやりきった。「大濠に入った時、プレータイムをもらうために何ができるのかを考えました。そこで自分の得意としているルーズボール、リバウンドに加え、他の選手がきつく感じたり、やりたくない仕事を極めて武器にしたら戦っていける。そう思って1年、2年とやり続けてきました。そして泥臭いプレーを自分の武器として、チームにエナジーを与える。3年間、この役割を続けて優勝に貢献することができたと思います」

また、「ディフェンス、球際の部分を頑張ってきたので、そこに関して譲れないプライドはあります」と語ると共に、プレー以外でもチームを支えた。「ベスト8やベスト4は自分の思ったようにいかなくて、プレーでチームを勢いづけることはできなかったです。でも、そういう時こそ、声とかでベンチからチームを盛り上げることで貢献できるとやり続けました。そこはやりきったと思います」

2年連続先発としてウインターカップ優勝を経験と、勝又は最高の形で高校バスケットボール生活を終えた。将来に向け、「大濠で培ったバスケットボールに対する考え方、バスケIQや戦術を高いレベルでやり続ける。そこに加えて自分から得点に絡むことを上のカテゴリーで身につけていきたいです」と意気込んだ。

カテゴリーが上がるにつれ、得点力で生き残っていける選手はほんの一握りとなる。そして、トップカテゴリーになれば勝又のような粘り強いディフェンス、ハッスルプレーを高いレベルで遂行できる選手こそ、出番をつかみやすい。優れたスキルを持ちながら、高校時代からチームを勝たせるための献身的な仕事をやり続けた勝又には、これからより多くのスポットライトを浴びる機会が訪れるはずだ。