佐藤凪

「どんな時でもキャプテンが顔を下げていてはチームは前を向けない」

東山は福岡大学附属大濠の高い壁を乗り越えられず71-97で敗れ、初のウインターカップ制覇を逃した。エースの佐藤凪はどちらもチームハイとなる17得点6アシストを挙げたが、チームを勝利に導くことはできなかった。

決勝戦にたどり着くまでに得点とゲームメークを任され、終盤のクラッチプレーで違いを生んできた佐藤の身体はすでに悲鳴を上げていた。「正直、身体は限界で、昨日も夜遅くまで治療してもらったり、痛みで本当に寝られないぐらいでした」

そんなコンディションの中コートに立ち続け、さらに大濠の容赦のないハイプレッシャーを受け続けたことで心まで疲弊していた。試合を楽しみ、プレー中に笑顔を見せることが多い佐藤だが、この日は苦しい表情のほうが多かった。「そう見えてしまったのは、僕の甘さ」と佐藤は言う。

「どんな時でもキャプテンが顔を下げていては、チームは前を向けないと思います。一番難しかったのは選手が頻繁に入れ替わってきたことで、常にフレッシュな選手にマッチアップされたのがきつかったです。どの時間帯でもフレッシュな選手についてこられました。今日は僕も疲労だったり痛みもあって、そういう表情見せてしまったのは反省ですし、それがゲームの展開に繋がってしまったのかなって。そこは悔しいです」

前日の準決勝の試合後、佐藤は「楽しくて仕方がない。明日も最高の舞台だと思うので、思いきり楽しみたい」と語っていた。理想の展開にはならず、悔しい結果に終わったが、それでも佐藤は「楽しめた」と清々しい表情を浮かべた。

「このゲームに限らずですけど、この東京体育館でこれだけ満員のお客さんの中でプレーできるのは、めちゃくちゃ特別なことだと思います。 結果を出さないといけないっていうプレッシャーもありましたけど、それ以上に本当に楽しんでプレーできました。多くの人に『東山のバスケは面白いな』とか、『佐藤凪のバスケは面白いな』と少しでも思ってもらえれば。すごい楽しい大会でした。それが一番です」

ちなみに連覇を成し遂げた大濠の片峯聡太コーチは「凪くんのパフォーマンスやコンディションが良ければ、やっぱり30点取られていたと思います。ピック&ロールの中で、凪くんが判断をしてプレーを進めていくことと戦いたくないと思っていました」と言い、当然ながら佐藤への対策を一番に考えていた。

『スラムダンク奨学金』の第19期生に選ばれた佐藤は、これからアメリカでの挑戦が始まる。漫画の『SLAM DUNK』の中には、監督が生徒に「負けたことがあるというのがいつか大きな財産になる」との言葉を送ったシーンがある。その状況と佐藤の状況は違うが、この敗戦から得たモノの価値は大きいだろう。実際に佐藤は「大濠さんにこれだけ止められて、もっと上手くなれるな、もっと成長できるなって今は思っています」と再び笑顔を見せた。この冬を糧に、佐藤は次のステップへと進む。