ヤニス・アデトクンボ

移籍の噂に「僕はここにいる。無礼なことを言うな」

現地12月27日のブルズvsバックス、ふくらはぎのケガで3週間欠場していたヤニス・アデトクンボが戦線復帰し、出場時間を25分に抑えながらも29得点8リバウンドを記録し、チームを勝利に導いた。

5連勝中のブルズは連戦の2日目でエネルギー不足。バックスもアウェー2連戦だったが、アデトクンボ復帰のインパクトはそれを補って余りあるものだった。

アデトクンボはエネルギーがありあまっていた。それは3週間ぶりの試合ということもあり、欠場している間に流れた移籍の噂への怒りでもあった。そのエネルギーが試合の最後に騒動をもたらした。

112-103とリードして残り7秒、もう勝敗が決した場面でジョシュ・ギディーのシュートが外れ、アデトクンボがリバウンドを押さえる。この状況になれば、あとは時間の経過を待つのがNBAの暗黙のルールなのだが、アデトクンボはボールをプッシュし始めた。試合終了を待つだけだったアリーナの雰囲気が再び張り詰める。それを予期したシカゴのファンがブーイングのうなり声を挙げる中、アデトクンボはウインドミルダンクをリムに叩き付けた。

礼を失するダンクに、ニコラ・ブーチェビッチが、コービー・ホワイトが詰め寄る。それを阻もうとするバックスの選手たちが集まり、プライドを傷付けられたブルズの選手たちも駆け寄る。ホワイトとライアン・ロリンズはつかみ合いとなり、ボビー・ポーティスも激高。試合が終わっていたことで騒ぎはすぐに終息したが、後味の悪い結末となった。

アデトクンボは試合後の会見で、自身の行いをこう説明する。「今、僕たちは東カンファレンスで11位で、自分たちのアイデンティティを見付けなければならない。それが試合終盤の荒っぽいプレーになるとしても、それが必要なら僕はやる。僕たちは王者じゃない。今まさに命を懸けて戦っているのに、なぜ時間を消費してフェアプレーやリスペクトを示す必要があるんだ?」

「僕はNBAに長くいるけど、負け続ければチームの半分はここから去ることになるし、プレーオフにも行けなくなる。僕はただ健康であること、チームの勝利に貢献することだけを願っている。『死に物狂いで戦うしかない』とみんなに分からせるために必要なら、僕はああいうプレーを厭わない」

バックスはこの試合に勝っても13勝19敗で、プレーオフ進出の目安となる勝率5割はまだ遠い。アデトクンボが復帰して勝利したが、彼は過去に何度かふくらはぎのケガを負っており、無理は禁物だ。連戦でプレーすることはできないし、しばらくは出場時間にも制限がかかる。

現状のバックスは楽観視できる状況ではなく、それが「アデトクンボがバックスに見切りを付けてトレードを要求する」という噂の根拠となり、それが事実のように人々の間に伝わることが怒りのエネルギーになっている。

「バックスが優勝争いができない状況になっても、このチームに残るつもりか?」。そう問われたアデトクンボは「僕はここにいる。無礼なことを言うな」と質問をさえぎった。

「その質問は僕自身とチームメートに失礼だ。僕はこのユニフォームを着ている。多くの人がこのチーム、コーチ陣、そして僕のために一生懸命頑張っているのに、そのすべての人に失礼だ。僕はここにいて、このユニフォームを着ている限りは、最後の1秒まで持てる力のすべてを注ぐつもりだ」