
「チームの勝利から逆算した判断を心掛けています」
東山は3回戦で駒澤大学附属苫小牧を64-55で破り、ベスト8へと駒を進めた。86得点を挙げた中部大学第一戦、70得点の瓊浦戦とは異なり、今回はロースコアの展開。第1クォーターこそ佐藤凪が7得点でオフェンスを牽引して20得点を挙げたが、その後は駒大苫小牧のゾーンディフェンスを攻めあぐね、第2クォーターでは13得点、第3クォーターでは11得点とオフェンスが停滞。攻撃的なバスケを身上とする東山にとっては苦しい展開となった。
44-42と2点リードで迎えた第4クォーター、オラヨリ・マーベラス・オルワトヨシのスクリーンを使って巧みに抜け出す宮森昊太を捕まえられず、宮森にタフショットも含めて4本連続でシュートを押し込まれ、一時は逆転を許した。
しかし、追い込まれた局面で東山の爆発力が発揮される。残り6分で同点の場面から、佐藤凪が3ポイントシュートを決め、中村颯斗とウェトゥ・ブワシャ・エノックの得点をアシスト。さらにマーベラスとのピックの呼吸が一瞬合わなかった隙を突いて宮森からスティールに成功。ワンマン速攻に持ち込んで62-55と突き放した。ロースコアの展開での終盤の8-0のランは決定打となる。さらに駒大苫小牧のタイムアウト後、リバウンドから走った佐藤が中村のイージーバスケットをアシストして、勝利を決定付けた。
初戦の中部大学第一との試合でも、大苦戦に追い込まれながら佐藤と中村のクラッチ力で東山が上回った。そして今回も、勝負どころで彼らが力を発揮した。
佐藤凪は16得点11アシストを記録。ゾーンを打ち破るドライブからのフローターなど得点のスキルも冴えたが、終盤にアシストで味方のイージーシュートをお膳立てする働きが目立つ。さらに言えば終盤、クラッチスティールから速攻に持ち込んでいる点も、佐藤の勝負強さを強く印象付けている。
苦しい場面でシュートに頼るのではなく、ディフェンスに集中し、味方を生かすことを優先する。佐藤のそのリーダーシップの形が、東山を接戦に勝ちきるチームにしている。
佐藤もそれを認識しており、ゾーン攻略について「かなり変則的なゾーンで、僕一人が狙いどころを分かっていても意味がなく、チーム全員で共通認識を持つのに少し時間がかかってしまいました」と反省するも、終盤に勝ち筋を見いだした方法論は正しかったと考えている。
「自分のスタッツやパフォーマンスに目を向けるのではなく、チームの勝利から逆算した判断を心掛けるようにしています。実際、シュート確率は良くないですし、スタッツも伸びていないかもしれませんが、得点やアシスト以外の部分で貢献できている自負はあります」
ここまで3試合すべてで2桁得点と2桁アシストを記録しているが、佐藤は「知らなかったです。数字は全く気にしていませんでした」と語る。実際、去年よりも得点は減っているが、それは全く違うプレースタイルを見いだしたからだ。
「これからも相手は僕を潰しに来るでしょうが、シュートやアシストだけが武器ではないというところを見せていきたい」と佐藤は言う。
ここまで3試合、激闘続きで消耗は激しい。「正直しんどいです」と佐藤は本音を漏らすが、それよりも「あと3試合しかできない」という思いが強い。「何が何でも優勝は譲れません。身体がボロボロになっても戦い続ける覚悟はできているので、最後までやり遂げます」