前半ファウルトラブルで苦戦も第4クォーターで9得点
桜花学園はウインターカップ女子準々決勝で東海大学付属福岡との激闘を61-55で制し、2021年以来となるベスト4進出を決めた。
試合序盤、桜花学園はゴール下の軸であるイシボ ディバインが右膝を痛めて負傷退場するアクシデントに見舞われた。177cmとサイズこそないが、コンタクトの強さを生かした守備に加え約4分間で8得点を挙げるなど、インサイドの要が抜けたことで東海大福岡の留学生センター、190cmのニエ カディジャ ファールのペイントアタックを止めるのに苦戦し、リバウンド争いで後手に回ってしまう。
だが、桜花学園は控えセンター水林夢翔の身体を張ったディフェンスを軸に、試合が進むにつれてファールのゴール下からの攻めにアジャストしていく。最終的にファールに9オフェンスリバウンドを許すも、フィールドゴール18本中7本成功の17得点に食い止めた。ともに相手のディフェンスを思うように崩せず、試合はロースコアの我慢比べに。
そして、接戦のまま迎えた終盤、桜花学園の2年生エース勝部璃子が、ゲームチェンジャーとなる活躍を見せる。同点で迎えた残り3分16秒、司令塔の竹内みやのキックアウトのパスを受けて3ポイントシュートを沈めると、1点差に迫られた残り1分3秒にはドライブからレイアップを決め切った。第4クォーターで9得点とエースの役割を果たした勝部の活躍もあって、桜花学園が競り勝った。
勝部は14得点5リバウンド3アシストを記録。前半はファウルトラブルに陥るなど、本来のプレーができずに苦しんだが、次のように気持ちを切り替え後半の最後の活躍に繋げたという。「前半はディフェンスもオフェンスも思うようなプレーをさせてもらえなくて、気持ちが下がりそうな場面もありました。そこでベンチにいる棚倉(七菜子)さんや金澤(杏)さんなど、試合に出られないメンバーの方たちがずっと自分に声をかけ続けてくれました。おかげで、『自分がずっと沈んでいたらチームは絶対に勝てない』と思いましたし、気持ちを切り替えて後半に臨みました」
この『自分が沈んでいたら勝てない』という言葉は、エースの覚悟があるからこそ出てくる。「本当に最後にやるのは自分だと思っています。そこの部分で自分がシュートを打ち続ける姿勢を常に持とうと思って、後半に臨みました」

4年ぶりのベスト4も「ホッとして良いのは今日までです」
そしてエースの定義は、大量得点を挙げることではなくここ一番のクラッチタイムでシュートを決めることだと勝部は言う。「白(慶花)コーチにも『20点、30点を取るのではなく、大事な場面で決めてくれるのがやはりエースだと思っている』と言われています。そこは意識していますし、仲間たち特に竹内(みや)は『最後はお前だよ』とずっと言ってくれているので、絶対に自分が決め切ってやろうと思っていました」
昨年の桜花学園は接戦を勝ちきれない試合が続いたが、今年のチームは優勝したインターハイに続きこの試合でも、我慢比べを勝ち切れる勝負強さがある。昨シーズンから主力としてプレーしている勝部はメンタル面の成長にも自信を見せる。「今まで負けている時は、接戦の場面になると『やばい、やばい』という雰囲気になりがちでした。でも今は追いつかれた時でも常に『まだ大丈夫だよ、落ち着いてやろう』など、ポジティブな声かけが増えてきています。苦しい時でも誰も下を向かず、全員が勝てるという意識を持てています」
明日の準決勝から、会場は4面ではなく1面のみの仕様となるメインコートに移る。桜花学園にとっては4年ぶりのメインコートとなり、勝部も「去年、ベスト8の精華女子さんに1点差で負けた試合にずっと出させてもらっていました。本当にくやしくて、ウインターカップのメインコートに立ちたいという思いは、多分誰よりも強かったと思います」と、メインコートへの思いを語ったが、これは優勝に向けた一つの通過点に過ぎない。勝部は言う。
「ホッとはしていますが、ホッとして良いのは今日までです。自分たちが狙っているのは日本一です。明日はメインコートで勝ち切って、日本一になれるように頑張りたいと思います」
ケガの状況から言って、ディバインが明日以降の試合に出るのは厳しいだろう。桜花学園が日本一を奪還するには我慢強く戦い、最後に勝部がエースの仕事を果たす今日のような展開に持ち込むことが必要となってくる。
