ハンドオフの起点を増やしポーターJr.の個性を生かす

ネッツはホーネッツとブルズを相手に、今シーズン初の連勝を収めました。そこでマイケル・ポーターJr.は35得点、33得点とオフェンスを牽引しています。

高校時代のポーターJr.はドラフト1位候補として騒がれましたが、実際のドラフトでは腰のケガへの懸念が大きく、2018年のNBAドラフトでは14位まで順位を落としてナゲッツに指名されました。度重なるケガに見舞われながらも、多彩なオフボールムーブと高精度のシューティングを武器にナゲッツの優勝に貢献し、マックス契約も手に入れる成功を収めました。

しかし、すべてのプレーはニコラ・ヨキッチにお膳立てされたもので、自分でボールを持って仕掛けるプレーをしないこともあって、その能力は常に懐疑的な目を向けられてきました。今シーズンはネッツへとトレードされ、オンボールでのプレーを増やすかと思われましたが、むしろ従来以上にオフボールムーブの素晴らしさで得点を量産。昨シーズンを6ポイント以上上回る平均24.9得点を、トゥルーシューティング61.2%とナゲッツ時代と変わらぬ高精度で奪っています。

最大の得点パターンはハンドオフでパスを受けてのフィニッシュにありますが、その前段階のディフェンダーを引き離してしまうオフボールムーブこそがポーターJr.の真骨頂です。進行方向を細かく変えつつ緩急をつけた動きに加え、自らがスクリーナーになるのか、それともスクリーンを使うのか、多彩なフェイクを織り交ぜていきます。ボールをもらう時点でフリーになり、そのままジャンプシュートを決めるパターンもあれば、ドライブから高さを生かしたフィニッシュもできます。

センターのニック・クラクストンはアシストで4.0と昨シーズンの倍近くを記録するようになりましたが、ほぼ半分がポーターJr.へのアシストになっており、ヨキッチレベルのパス能力がなくても、効果的な得点パターンが構築されています。ネッツのオフェンスレーティングはポーターJr.がコートにいる時は115ですが、彼がベンチに下がると103へ急降下します。ポーターJr.のオフボールを警戒されれば、オンボールプレーも上手くいく好循環が生まれています。

しかし、このオフボールはポーターJr.にしかできない動きのため、オフェンスの形は限定的になるのですが、ここでネッツは思いもよらぬ新たなプレーパターンを見せてきました。211cmながらハンドリング能力もあるセンターのダニー・ウォルフをクラクストンと同時起用し、2人でのパス交換を多用しました。つまり、ハンドオフの起点を2箇所に増やし、ポーターJr.がオフボールでどちらへ動くのかを、さらに分かりづらくする形を導入したのです。

ツインタワーでミスマッチを狙いながら、センター同士がパス交換している間にポーターJr.がフリーになってパスを受けに行く。これまで見たことのないネッツの新たなオフェンス戦術は、オンボールでの攻略を全く必要とせず、それでいて多様なプレーへと派生する良さがあります。ポーターJr.の特殊な才能が、ネッツに新たな戦術を生み出しています。