
琉球ゴールデンキングスから千葉ジェッツへ。なぜ田代直希はプロキャリア10年を迎えた今も強豪クラブで求められるプレーヤーとして第一線を走り続けられるプレーヤーになることができたのか。そのきっかけとなった出来事、そしてそんな彼だからこそバイウィーク前の宇都宮ブレックスに2連敗を喫したことで見えた課題があったと語ってくれた。
キャリアを重ねるごとに本質を知った恩師の言葉
──ご自身は成功体験を得るためにしたことはありますか?
試合のビデオチェックをしたり、コーチ陣に疑問に思ったことは聞きに行ったり、さまざまなことをしました。たくさん怒られて、たくさん指摘もされましたが常に頭をフル回転させていました。たくさんエラーをしていくと「どういったシチュエーションでミスが起きやすいのか」という予測がある程度立てられるようになり、そこにアドバイスや指摘が乗っかることで判断が明確になっていきます。恐れずにたくさんの人にアドバイスを聞くということは非常に重要だと僕は思っています。
──アドバイスが重要だと気付いたきっかけはありますか?
厳密に言うと「それをやらなきゃ試合で使ってもらえなかった」ということです。大学生の頃までは、どちらかというと感覚でバスケットをやっていたので「その状況になったら判断をすれば良いでしょ?」と思っていたのですが、選手層が厚く、レベルの高い琉球に入った時に「この時にパスをしたほうが良いよね」「ここはシュートを打ったほうが良いよね」と、たくさん指摘を受けることがあって「こういうことをしないと試合では使ってもらえないんだ」「こういうことをしちゃうとコーチ陣としては使いづらいんだ」と気付かされました。
──そこからはかなり考えてバスケットをするようになったのですね。
でもすごく矛盾するのですが、さっき話したことって結局は頭を使ってロジカルに物事を考えて「こういう時はこうだ」「ああいう時はああだ」と自分の頭の中でバスケットを組み立てているわけで、試合中も「あそこで攻めたほうが良い」「こう攻めたほうが良い」と考えすぎると、結局頭でっかちになっちゃうんですよね。試合中は理論武装よりも、自分の感じたことや直感に従うべきだと思うんです。
専修大時代のコーチだった中原雄さんに「感覚や才能を信じてバスケットをやりなさい」と言われたことがあったんです。その時はその言葉を鵜呑みにして、感覚だけでバスケットをしていました。でも琉球でさまざまなことを経験して、初の移籍でジェッツに加入して、また違うバスケットに順応していく過程で中原さんの言っていることの本質が分かってきたんです。
動画を見て研究したりアドバイスを聞いたり、ロジカルに考えることを重ねて実践に持ち込む。トライ&エラーを繰り返していくことで「やってはいけないこと、やるべきこと」の判断が明確になり、頭で考えるよりも身体が動くようになる。そうやって得た成功体験を積み重ねてできた土台があるからこそ、感覚や才能を信じてバスケットをする必要があるのだと。だから、中原さんの言葉は今でも僕の中の羅針盤になっています。

「宇都宮の2連敗は往復ビンタをされたような感覚」
──バイウィーク前の宇都宮ブレックスとの試合で2連敗を喫しました。課題は挙がりましたか?
宇都宮は良い意味でも悪い意味でも波がない。一定というか、平常心というのか、この波のなさ、淡々とやり続けられる能力が宇都宮の強みだと思います。一方で僕たちはガンっと上昇気流に乗った時は、相手が誰であろうと勝てるバスケットが展開できるのですが、そうではない時にどうやってバスケットをやるのかという課題が見えた試合でした。 そういう時にこそ冷静にというか、AIっぽくというか、機械的で良いので淡々とチームルールをやり続ける重要性を認識できたのは良い収穫だったと思います。
──代表選手も数多く輩出している千葉Jは他チームよりも調整が難しいと思いますが、バイウィーク明けも好調を維持するために必要なことは何ですか?
今はコアメンバーがいないので、ディフェンスのポジショニングやシュートシチュエーションの確認といったことを中心に練習を重ねています。これからもこの成績を維持していくために重要なのは、強度高くバスケットをすることだと思っています。試合で勝ち続けると「今日はこれぐらいの強度で勝てた」という経験がどんどん積み重なっていきますが、僕はそれが強度を下げてしまう要因になるとも思っています。裏を返せば「これぐらいの強度で良いや」という油断が生まれかねない。もちろん、誰もそんなことは思っていないと思うのですが、チームが目指したい場所から遠ざかっていく気がしています。
そういった意味でも宇都宮の2連敗は往復ビンタをされたような感覚で、目を覚まさせられる試合でした。個人の能力に任せて勝つことがないようにしながら、みんなが強度を高く保ち、激しくバスケットをやり続けられるかが重要だと思います。