ジェイコブス晶

アクシデントで急遽与えられた役割も見事に遂行

フォーダム大は2025-26シーズン最初の6戦中、4勝とまずまずのスタートを切っている。そのゲームを少しでも見れば、ジェイコブス晶がチームに不可欠の存在であることは誰の目にも明らかだ。

センターが負傷欠場中というチーム事情からビッグマンの役割を任された序盤戦。ゴール周辺のディフェンスに奔走し、オフェンスでも繋ぎ役として貢献している。転校したての新加入選手ながら平均25.2分のプレータイムはチーム3位であり、ジェイコブスがコートにいない時間帯はチーム力が明白に落ちる印象がある。

「私はアキラを本当に信頼している。彼はオフェンス面でもチームをしっかり整理してくれるし、ペイント内で身体を張ることも厭わない。守備は非常に安定している。それらは私たちが彼に求めてきた部分なんだ」

今シーズンからフォーダム大の指揮を執るマイク・マグパヨヘッドコーチの信頼も当然のように厚く、『攻守の要』であると言っても大袈裟ではないだろう。

もっとも、その一方で、ジェイコブスのプレーを見ていると『実力を考えればもっとやれるのではないか』と思わされるのも事実だ。前述の通り、プレータイムは多いにもかかわらず、平均6.7得点はチーム7位、5.0リバウンドは同4位。もちろん数字に残る働きがすべてではなく、マグパヨヘッドコーチは「スタッツには出にくいけど、アキラは本当にいろんなことをやってくれている」とその点でも感謝している。

ただ、非常に好バランスで多才な今のジェイコブスなら、もっと支配的な活躍をすることも可能だろう。とにかく謙虚な21歳も、その点は否定しなかった。

「これだけ長いプレー時間をもらっているんで、それだけの活躍はしなきゃなとは思っています。数字的にも、今はハワイ大の頃と同じぐらいですよね(注:昨シーズンのハワイ大でのジェイコブスは平均6.9得点、2.6リバウンド)。もう少しやらなければ、という感じです」

ジェイコブス晶

「やるべきことをやらなきゃいけないというのはわかっています」

今後、フォーダム大の戦いはより厳しいものになっていくだろう。昨シーズン12勝21敗、A-10カンファレンス内でも3勝15敗に終わったチームは、新たにUCリバーサイド大からマグパヨヘッドコーチを迎え入れての再建をスタートさせたばかり。ジェイコブスを含めて何人かの新戦力が加わったが、現実的にまだ上位争いをするのは難しい。

「今シーズンのA-10カンファレンスには良いチームが揃っている。フォーダムの目標は全14チーム中10位以内に入ることじゃないかな。もしも8位以内に入れたら『成功』として記憶されるシーズンになるだろう」

A-10カンファレンスのファンサイト『A10 Talk』のサム・ベイゼル記者がそう述べていたが、実際に4勝2敗でアメリカ最大の休日である感謝祭を迎えた現時点でも、フォーダム大はカンファレンスのパワーランキングで最下位だ。対戦相手のレベルが上がるにつれ、徐々に難しいゲームが増えることが想定できる。そういった背景もあって、ジェイコブスもとにかく一戦ごとに向上することを当面の目標に掲げていた。

「今は先のことを考えるよりも、(大事なのは)次の試合の準備ですね。3月のA-10トーナメントには全チームが出られるので、そこで勝てるようにしたいという気持ちはあります。とにかくそこまでに準備を積み上げていきたいです」

来春以降に好結果を出すために、客観的に見てもジェイコブスのさらなる奮起は必須だろう。自身の数字などにはこだわらず、汚れ役を厭わないのは彼の長所ではある。とにかくアンセルフィッシュなナイスガイがコーチだけではなく、チームメートからも好まれているのは容易に見て取れる。それでも毛色の違う才能を持つ俊才は、状況に応じてもっと強引にプレーする場面があっても良いのではないか。筆者がそう尋ねると、マグパヨヘッドコーチも間髪入れずに「本当にそう思うよ」と同意してくれた。「私はいつもアキラには『もっと打て』と言っているんだ。1試合5本は3ポイントを打ってほしい。もっと積極的に狙ってほしい」

ジェイコブス自身もためらいつつ、自身の課題と呼べる部分は理解している。「チームメートに上手い選手が多いんで、どうしても周りを信じてしまうところがあるんです」と苦笑いした上で、少し厳しい表情で決意を感じさせるコメントも残していた。

「『もっと積極的に』というのはバスケを始めた頃からずっと言われています。自分が活躍しても、それはやらなければいけないことなので喜べないですけど、チームメートが活躍すると本当にうれしいんですよ。でも、試合を振り返って『ここではシュートを打てた』と思うことが結構あります。自分がやるべきことをやらなきゃいけないというのはわかっています」

今夏には日本代表でも活躍したジェイコブスは、遠くない未来に日本の看板になり得るだけの能力と魅力を持った選手に思える。だとすればもっとガツガツ攻めても良いし、よりアグレッシブで熱い姿を見せてほしい。周囲を弾き飛ばすようなプレーができれば、自分自身だけではなく、フォーダム大のためにもなるのだから。

大きく成長するために、『すべては自分次第』のニューヨークは適した場所でもあるのだろう。今シーズンを通じて、スキルやチームプレーの精度だけではなく、好漢ジェイコブスが精神面でどれだけたくましく成長していくかを楽しみに見守っていきたい。