意欲的にフロアバランスを整えるベテランの仕事ぶり
5月14日、サンロッカーズ渋谷は川崎ブレイブサンダースに敗れ、Bリーグ初年度のシーズンを終えた。第1戦は終盤に突き放され、第2戦では序盤の大量失点を挽回できずに連敗を喫した。
伊藤駿とともにSR渋谷のキャプテンを務める広瀬健太は、特筆すべきスタッツは残さなかったが、数字以上にコートでの存在感を際立たせた。神出鬼没のオフェンスリバウンドとスティール、速攻と3ポイントシュート。冷静に戦況を見つめ、ここぞという場面で顔を出し、チームのバランスの舵取り役を担った。その広瀬は「ベテランでキャプテンでもありますし、そういうところも率先してやっていかないと」と言う。
SR渋谷は2試合とも最後まで王者川崎を苦しめた。特に2戦目の大量ビハインドからのカムバックは圧巻だった。「あのまま終わってしまうのは、あまりにも不甲斐ない」という気持ちから、広瀬の連続スティールが追い上げムードを作り出した。
「追い掛ける展開でディフェンスを激しくしなければいけないので、その延長線上でスティールが出たと思います。僕だけじゃなく、ボールマンにプレッシャーかけたりとか、しっかりヘルプポジションにいる選手がいた結果のスティールです」
1試合平均2.0を記録してB1のスティール王になったことについても、「個人よりチームとしてディフェンスが機能した結果です」と、あくまでチームディフェンスの中でのスティールであることを強調する。それでも「ディフェンスは以前よりも良くなったと思います。自分の良さはもっと向上させたい」と、自信と手応えを見せた。
Bリーグの初年度は「今までで一番苦労したシーズン」
チャンピオンシップ出場を決定させた時に広瀬は、「今までで一番苦労したシーズンだと思います」と語っている。開幕から思うように勝ち星を増やせず、ロバート・サクレが加入し欠けていたピースを埋めた後も、なかなか結果が出なかった。
NBL時代の実績から考えれば、「もっと上に行けるはずだった」というのが本音だろう。理想と現実のギャップに苦しんだレギュラーシーズンの最後に、チャンピオンシップへの切符を手にしたことが、逆にチームの推進力をなくすという現象を引き起こしていた。
広瀬はチームの雰囲気を率直に語ってくれた。「ファイナルまで行きたいということから、チャンピオンシップ出場が目標になってしまった。目標が変わってしまったところで、最後まで戦っていく気持ちの面でエネルギー切れかなという時がありましたね」
指揮官のBTテーブスは「アップダウンの激しかったシーズン」と今シーズンを表現した。上がっては沈み、沈んでは上がる、まさにチャンピオンシップの2試合を象徴している言葉だった。
広瀬は最後に、この苦しんだシーズンにあえて点数を付けるとしたら、という野暮な質問にこう答えた。「チームの勝利に貢献しきれなかった面もありましたが、チームが壊れかけたところをしっかり立て直したところもあるので……。正直、チャンピオンシップ出場も厳しい状態までいったところから、チャンピオンシップに出れたことを考えると『50点』くらいかなと思います」
プロキャリア9年の中で最も苦しいシーズンを終えた広瀬。経験豊富なプレーヤーだけに、今回の苦労や悔いも今後の糧とするだろう。いずれにしても、SR渋谷と広瀬のBリーグ最初のシーズンは終わった。来シーズンも『50点』というわけにはいかない。プロ10年目の来シーズン、『100点満点』の笑顔の広瀬に再会できることを願う。
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