文=丸山素行 写真=B.LEAGUE

前半で25点差をつけるロケットスタート

チャンピオンシップのクォーターファイナル、川崎ブレイブサンダースvsサンロッカーズ渋谷の第2戦は、前半で大量リードを奪った川崎がそのまま逃げ切る形で勝利した。

「昨日の試合は忘れろ、負けたら終わりだぞ」と選手に伝えていたという川崎の北卓也ヘッドコーチ。同じく立ち上がりの重要性を十分に認識していたであろうSR渋谷に先制点こそ奪われたが、ニック・ファジーカス、長谷川技の3ポイントシュートですぐに逆転。そこからライアン・スパングラー、篠山竜青による圧巻の4連続速攻で突き放す。さらにハーフコートバスケットでも、篠山がドライブから6連続得点を挙げ、長谷川の2本目の3ポイントシュートも決まって25-12で第1クォーターを終えた。

SR渋谷はドライブからのレイアップが決まらず、キックアウトのパスも川崎の守備網に阻まれた。ディフェンスを崩せず1対1からシュートを放つが、それが外れて走られるという悪循環に。第2クォーターも川崎のペースは揺るがない。流れの中からファジーカスがペイントエリアで得点を重ね、栗原貴宏がオフェンスリバウンドからゴール下で加点する。

インサイドを支配されたSR渋谷が中を固めると、栗原が2本の3ポイントシュートを射抜くなど、理想的なインサイドアウトの形を体現した。

王者を追い詰めるSR渋谷の意地の粘り

一方のSR渋谷はオフザボールの動きでズレを作り、ウイングからインサイドにパスを入れようとするが、川崎の激しいディナイディフェンスによってスムーズにパスが入らない。またそのプレーを待ってしまうことでショットクロックが残り少なくなり、タフショットを打たされ得点が伸びなかった。

伊藤駿は「僕らはインサイドにこだわりすぎて、2番と3番の選手の足が止まってしまった。インサイドにパスを入れてからの動きがうまくいかず、打たされるシュートが多かったです」と振り返った。

ところが、川崎が51-26と大量リードを奪い、このまま楽勝ムードに見えた後半、SR渋谷が意地を見せる。

サクレやアイラ・ブラウンがパワープレーを仕掛け、開始からわずか2分弱で川崎のチームファウル4つを誘発した。これで攻守ともに激しさを出せなくなった川崎に対し、盛んにドライブを仕掛けて怒涛の追い上げを開始。広瀬のパスカットからベンドラメ礼生の速攻が決まり、今度はベンドラメのスティールから広瀬の速攻が決まるなど得意の速い展開にも持ち込んだ。

そして第4クォーターの残り2分29秒、サクレのフリースローで78-87と点差を1桁に戻したが、川崎を崩すには及ばなかった。点差は詰めるが時計を気にして焦り始めたSR渋谷のディフェンスに対し、川崎は落ち着いてインサイドを攻めてファウルを誘い、フリースローで得点を重ねる。結局、インサイドの強みを生かしつつ、最後まで3ポイントシュートの確率を落とさなかった川崎が、前半のリードを守って98-82で勝利した。

『状況判断力』と『層の厚さ』に決定的な差

北ヘッドコーチは「非常にハードなディフェンスから走って、あそこで大量リードを奪えたことでイニシアチブを取ることができた。自分たちのペースにできた一番の要因。今日も3ポイントが54.5%(25分の12)なので、これは脅威的だと思います」と、出だしの猛攻と3ポイントシュートが一番の勝因と語った。

敗れたSR渋谷はこれでシーズン終了。テーブスヘッドコーチは「競るゲームを目的にしていたわけではなく、去年のNBLチャンピオンチームを倒すことが我々の目標だったが、1歩及ばなかった」と落胆の色を隠せなかった。

テーブスコーチは言う。「彼らは正しいプレー選択を毎回している。ボールをしっかり動かしてシェアをする、そしてエクストラパスが出るというのは素晴らしい。サブの選手が出てきてもバスケットの質が落ちないというところが一番大きい」。これに対して北コーチは「ここで自分が何をしなきゃいけないということが理解できてると思います。セカンドユニットになっても得点が止まらないのは非常に良い」と、表現は違えど『チーム力の差』という部分で共通の認識を示していた。

各地でも激戦が繰り広げられ、順当にホームコートアドバンテージを持つ上位チームがセミファイナルに駒を進めた。第1シードの川崎は東地区2位のアルバルク東京と激突する。