ニックスの面談を受けるも就任はならず
数年前、NBAではリーグ初の女性ヘッドコーチ誕生の機運が高まっていた。しかし、当時スパーズのアシスタントを務め、その座に近いと見られていたベッキー・ハモンは2022年からWNBAラスベガス・エイシーズのヘッドコーチに就任し、NBAを去った。そして今オフ、アメリカバスケットボール界随一の実績を誇る女性コーチのドーン・ステイリーが、ニックスの新ヘッドコーチ候補として面談を受けたが、周知の通りニックスが選択したのはマイク・ブラウンだ。現在、NBAで女性ヘッドコーチが誕生する可能性はより低くなっている。
55歳のステイリーは現役時代、3個の五輪金メダルを獲得するトップ選手として活躍。指導者としてもテンプル大で結果を残すと、2008年からサウスカロライナ大のヘッドコーチに就任し、昨シーズンまで同大を2017年、2022年、2024年とNCAAトーナメント優勝に導き、475勝110敗、勝率8割を超える圧倒的な成績を残している。また、東京五輪では女子アメリカ代表のヘッドコーチとして金メダル獲得したカリスマだ。その彼女をもってしてもNBAの指揮官には届かず、「(自身が生きている間にNBAで女性ヘッドコーチが生まれるとは)信じていない。この予想が間違うことを望んでいる」と語っている。
サウスカロライナ大が所属するサウスイースタン・カンファレンスのメディアデーにて、ステイリーは、ニックスの面談に応じたのは球団首脳陣と30年来の知己であったためと説明。さらに彼らが面談において、女性初のヘッドコーチを迎えるチームは、周囲の厳しい視線に対する準備が欠かせないと強調したことを明かした。
「もし、(女性ヘッドコーチの下で)ニックスが5連敗したとして、負けが続いていることが問題になるわけではない。女性が率いることが問題視されることになる。だから女性ヘッドコーチを採用する際にはこうした事態を予測し、周囲の声を無視できる強さを持たないといけない」
NBAでの女性ヘッドコーチ誕生に悲観的なステイリーだが、一方でこの偉業にチャレンジしようとする人物へのサポートは惜しまないと続ける。「もしNBA初の女性ヘッドコーチを目指す人がいれば、私が持っているすべての情報を提供します。面接対策も行えるので、ぜひとも会いにきてください」
ステイリーの予想が良い意味ではずれ、歴史の扉を開くコーチは果たして出現するだろうか。