山之内勇登

家族の『売り込み』で発掘された発展途上のビッグマン

6月13日から23日の日程で、バスケットボール日本代表の『第1次育成キャンプ』が実施されている。日本代表の将来的な強化を目的とするだけあって、招集メンバーの平均年齢は22歳と若い。その中でも目立っていたのが最年少の山之内勇登だ。

アメリカ人の父親と日本人の母親を持つ山之内は、現在カリフォルニアのリベットアカデミーに通う。まだ16歳だが身長202cmと恵まれた体格をしている。バスケットボールを始めたのは埼玉県で暮らしていた5歳の時。真剣に取り組むようになったのは中学2年の夏で、189cmだった身長が10cm以上伸びたことで「自分はバスケットで何かできるかもしれない」と、真剣にバスケットに向き合うようになった。

小学校5年生で日本を離れ、ハワイとカリフォルニアで育った山之内が今回の合宿に招集されたのは、祖母の売り込みがきっかけ。「去年、祖母が日本代表チームの関係者に『孫にこういう選手がいるよ』と、連絡をしてくれたんです。そこから、父が自分のプレーのビデオをチームに送りました。その後、3月のU21キャンプに招待されて、練習自体には参加しませんでしたが、スキルワークなどをさせてもらった経緯があります」と山之内は語る。

父親が送った一本のビデオから始まった山之内の日本代表での活動だが、今回の初招集に対しては、「自分の国のために、日本代表のメンバーの一員として招待を受けて本当にワクワクしています」と、緊張や不安よりも楽しみのほうが大きいと言う。

山之内勇登

「年上の選手と当たるので、パワーの違いは感じています」

もっとも、身長は202cmあっても体重は87kgと、まだ成長期で線の細さは否めない。「自分よりも年上の選手と当たっているので、パワーの違いはすごく感じています」と日本代表選手と一緒にプレーした第一印象を語る。プレーもインサイドで当たるのではなく、アウトサイドからシュートを打っていく姿が多く見られた。

山之内も自身の強みを「ペリメーターのプレー」と話す。それでもこの合宿に臨むにあたっては「必要とされることを何でもやりたい。それが外のシュートを求められているのであれば、外のシュートを打ちたいですし、インサイドを求められるのであれば、中でプレーをしたいと思います」と経験することすべてを貪欲に吸収するつもりだ。

育成キャンプではあっても日本代表の合宿に参加しているのだから、可能性はわずかであっても来年の東京オリンピックへの道は開かれている。実際にコーチ陣からはそう伝えられており、山之内も大いに刺激を受けている。「オリンピックに参加できるかもしれないと毎日考えます。この合宿が終わってカリフォルニアに戻っても、自分がチャンスをもらえるように毎日努力をして、日本のために戦いたいという気持ちが強いです」

今回の合宿を指揮するエルマン・マンドーレは「若手をどんどん育てて、サイズのある選手、タレントのある選手を揃えて、こういった世代から新しい選手を発見したい」と、新戦力発掘に意欲を見せる。山之内のような若い選手にとって、ナショナルトレーニングセンターに招かれてトップレベルの練習ができるのは最高の経験になるに違いない。