「身体の声に耳を傾けながら、日々を大切に過ごす」

ジョエル・エンビードは朗らかな表情でシーズン開始の会見場に現れた。彼が会見で話すのは2月以来のこと。左膝の状態はずっと悪く、そこをかばってプレーすると別の場所にも痛みが出た。そして2月、19試合に出場しただけで、膝の治療に専念するためにシーズンを終えることを決断した。「いろんな人の後押しを受けて頑張ろうとしているが、正直キツい。今はただこの時期が過ぎ去るのを待っている」と小さな声を絞り出した。

あれから7カ月半。4月に膝の手術を行ったエンビードは、トレーニングキャンプ開始時点で練習メニューをすべてこなせるわけではない。それでも、彼は明るい声で「調子はかなり良い」と語り始めた。

「ここ数カ月でかなり良くなっている。スケジュールは定まっているし、チェック項目を順番にクリアしているところだ。今はただ毎日を大切にすごし、コンディションを高めている。僕らが重視しているのは、期限を追うのではなく、すべてを正しい方法で進めていくことだ。目標はコンスタントにプレーすることであり、昨シーズンのような状況に陥らないことだ」

1年前の始動時とは全く状況が異なるとエンビードは言う。「去年のトレーニングキャンプ開始時には、自分に何ができるのか全く分からず、結局何もできなかった。今回は違うよ。メンタル的にもかなり良いし、素晴らしい人々のサポートがある。みんなが僕を鼓舞してくれるおかげで、前向きな気分でいられる。おかげで良いスタートを切ることができる。あとは進み続けるだけだ」

2023-24シーズンは、2月に膝を手術した後、プレーオフに向けて戦線復帰したが、準備が整っていないのは明らかだった。パリオリンピックにも出場し、チーム力で金メダルを獲得したものの、エンビード自身のコンディションは上がらなかった。結局、それらの無理が昨シーズンを台無しにした。

「僕らにとって最も重要なのは健康であることだ」

「僕を知っている人なら誰でも、僕がどれだけプレーしたいかは分かっているはずだ」と彼は言う。「ただ、その点で昨シーズンは上手くいかなかった。これまでも多くの試合を欠場してきたけど、昨シーズンは自分の身体を全くコントロールできなくなり、精神的にも消耗した。打ちのめされて、立ち上がるために自分を鼓舞し続けなきゃいけなかった。でも今はただ前進し続ければいいだけだ」

「正しい道を進んでいるか、その一点だけに僕は集中している。その間に何かトラブルが起きても、修正して前に進む。それは身体の声に耳を傾けながら、日々を大切に過ごすと言い換えてもいい。自分が置かれている状況を理解している。僕にとってはそれが大事なんだ」

ポール・ジョージもケガの影響で出遅れる。ジャレッド・マケインはチーム始動前に戦線離脱した。新シーズンもシクサーズは対戦相手より前にケガと向き合わなければならないだろう。それでも、エンビードは立ち向かう精神的な準備ができている。これは1年前と比べて決定的な違いだ。

「僕らにとって最も重要なのは健康であることだ。ただ、そのためには日々正しいことをするしかない。このチームにはタレントが多いけど、チームとしてまとまらなければ意味はない。日々を大切に、そしてチームとして結束すること。それを大事にしていくよ」