「僕たちへの期待値が高くないのは分かっているよ」

NBAにおいて『ビッグ3』はもはや時代遅れで、サンズの挑戦は盛大に失敗した。『チームの顔』であるデビン・ブッカーに、ケビン・デュラントとブラッドリー・ビールを組ませた2シーズンは、1年目はプレーオフのファーストラウンドでのスウィープ負け、2年目はNBAで最も高額なサラリーを負担しながらプレーオフ進出さえ逃す結果となった。

失敗の代償は大きく、指名権は何年も先までないし、ビールの高額年俸はここから5年間に分割して支払うことになる。これはチームの再建を極めて難しくする負担だ。それでも1カ月後に29歳となるブッカーは、今オフに2年総額1億4500万ドル(約210億円)の契約延長に合意し、キャリアの最盛期をこのチームに捧げようとしている。

シーズン始動の会見で「君のような選手がこのチームに残るのは普通じゃない。その理由を説明してほしい」と問われたブッカーは、「今のNBAでは選手は常に移籍するし、チームも選手をトレードする。でも、これはパートナーシップであり信頼なんだ」と答えた。

「僕はドン底からスタートし、もう少しで目標を達成できるところまで行った。つまり、僕にはここでやり残した仕事がある。それがこの街とチームにとってどれほどの意味を持つのか、僕は理解している。これはリーダーであり『チームの顔』としての僕の責任だ」

『ビッグ3』の時代は、勝てなくても大きな注目は集めていた。再スタートを切ろうとする今は、勝てるとは思われていないし、注目度も大幅に下がった。「僕たちへの期待値が高くないのは分かっているよ」とブッカーは微笑む。

「僕たちは成熟していないチームだと見られているだろうけど、それでいいんだ。僕たちは若いチームで、これから成長していく。そこで自分の声がどれだけ重要なものになるかは理解しているつもりだ」

「同じことがこの瞬間から始まろうとしている」

ブッカーは『声』を強調した。「チームの年齢層、そして僕がこれまでに得た経験からすると、今回はリーダーシップが今まで以上に重要となるだろうね。昨シーズンも意見は言ってきたつもりだけど、チームは結果を出せなかった。誰かと問題を抱えていたというわけじゃなく、望んだレベルまで連携を高められず、チームとしての結び付きも足りなかった」

ブッカーはキャリアを重ねる中で、サンズ生え抜きのエースとしての自覚を強め、リーダーシップを発揮しようとした。それでもかつてはクリス・ポール、直近ではデュラントとビールという実績豊富な選手がいて、声を出すよりもプレーで結果を出すことが求められてきた。しかしNBAキャリア11年目を迎えた今、彼は真のリーダーシップを発揮するつもりだ。

「チームにとって有益だと感じれば声を上げていく。それが今の若いチームには重要だと思う。若い選手に失敗は付き物だけど、同じミスを犯すことを最小限に抑えれば、若さが持つ可能性を最大限に引き出せる。そこで自分のアドバイスが有用になればと思っているよ」

「大事なのは、何が起きてもプロフェッショナルであることだ。僕だってキャリア初期は順風満帆じゃなかったけど、粘り強くやり続けた。2021年に優勝することはできなかったけど、底辺からほぼ頂点というところまで登り詰めた。日々の努力がそれを可能にするのを僕は見たんだ。そして今、同じことがこの瞬間から始まろうとしている。今いる選手全員が学ぶ意欲を持っていて、練習場は熱気に満ちている。大きなエネルギーを感じるし、それは周囲に広がっていく。現時点で僕にとって最も重要なのはそれなんだ」