角野亮伍

昨シーズン、シーホース三河は3921敗の好成績を収め、激戦となった中地区からチャンピオンシップ進出を果たした。しかし角野亮伍は、クォーターファイナル敗退という結果を受け「良いシーズンだったとは言えない」と言う。攻守に渡って存在感を示し、3ポイントシュートの成功率でキャリアハイの40.2%を記録するなど多くの手応えも得た角野に、昨シーズンを振り返ってもらった。

「出たら出ただけ得点できることは証明していきたい」

──昨シーズンの振り返りをお願いします。

2023-24シーズンはチャンピオンシップで優勝まで6勝を残した状態で敗退し、昨シーズンもまた6勝を取れずでした。「チームとして成長できた」と言えば聞こえは良いかもしれないですが、結果を見たら「良いシーズンだった」とは言えないのかなと。

──クォーターファイナルで宇都宮ブレックスと対戦し、良い試合ができずに敗退しました。いま振り返ると何が足りなかったと思いますか?

宇都宮と対戦するにあたって、 組織力や経験などで僕らが劣ってしまうのは分かっていたことでした。もちろんチームとしての結束力を高めるのは大切なことですが、「負けたら終わり」のトーナメントで奇策を講じたり、気合で押し切ることも必要だったのかもしれません。全員が足を攣るくらい激しくオールコートでディフェンスしたり、もっと何かやれたことがあったんじゃないのかなと思います。

──それを痛感したからこそ、今シーズンは新しいことにも挑戦していけそうですね。

新しいことはやっていかないといけないと思っています。日本人メンバーは変わらないので、そこを強みにしつつ、トップチームと対戦した経験を糧にしてステップアップして、良い成績を残したいですね。

──ライアン・リッチマンヘッドコーチは、着任した2023-24シーズンはディフェンスを重視したチーム作りを進めてきましたが、昨シーズンはチームオフェンスの成長を感じました。

継続選手が多かったですし、ヘッドコーチが大きくシステムを変えることなくやってくれたので、打っていいシュートや打つべきシュートが明確でした。それがシュートの成功率が良かった要因だと思います。

──角野選手個人のパフォーマンスに目を向けると、3ポイントシュートが平均試投数3.7本で成功率40.2%と高い数字をマークしました。

もともと3ポイントは自分の武器だと思っていなかったのですが、ライアンは打たないほうが怒るし「絶対入るから自信を持って打ってくれ」と言われて打ち続けました。宇都宮の比江島慎選手やD.J・ニュービル選手のように、3ポイントの印象が強くなればなるほどインサイドが生きてくると思います。相手のスカウティングに印象付けられる40%という数字が残せたので、今シーズンはドライブや持ち味のミドルジャンパーなど自分がやりたいプレーに繋げられると思います。

──角野選手はディフェンスが良い選手というイメージがありますが、学生時代は世代を代表するスコアラーでした。オフェンスでの活躍は、自身ではあまり驚きはないですか?

3ポイント成功率が40%を超えたとはいえ、シーズンの平均得点は6.5得点です。昔、1試合で30点以上取っていた自分としては全然足りないなと思っていますが、そこに近づける兆しが見えたシーズンでした。いきなり平均6点を30点に持っていくのは厳しいですが、まずは2桁に乗せるところからかなと。プレータイムを勝ち取らないとその点数を取る土俵にも立てないので、ライアンに言われたことをしっかりこなして、あとは貪欲に点を取りにいくだけだなというマインドです。

──チームの得点源である西田優大選手とジェイク・レイマン選手が欠場した3月の広島ドラゴンフライズ戦は、第1戦が20得点、第2戦が19得点とチームハイを記録して勝利に貢献しました。スコアを期待されれば、このくらいはできる自信や感触はありますか?

出してくれたら、やりますよ(笑)。どんな出場時間でも「縁の下の力持ち」的な渋い活躍をすることが大事だと分かっていますが、出たら出ただけ得点できることは証明していきたいですね。

角野亮伍

「ディフェンスは人生で1番やったんじゃないかな」

──3ポイントシュートだけでなく、オフボールの動きからの得点が効果的な試合も多かったですよね。プレーの幅の広さを見せたシーズンになったのではないかと思います。

自分はドリブルをたくさんついてプレーするのが苦手です。ドリブルをつかずにオフボールで相手を振り切って、シュートを打つなりドライブなりをするのが得意だし好きで、ヘッドコーチもそういうプレーをどんどんセットに導入してくれていました。その中で正しい判断をして、自分がオフェンスの中心になっていけたらいいなと思います。

──それこそ3月の広島戦では、試合開始から角野選手がオフボールでディフェンスを剥がして得点するというセットプレーが連続で決まりましたね。

あれは本当に気持ちよかったですね(笑)。最初のスリーからレイアップ、レイアップと続けて決められたので。3本連続で決められたことよりも、いろんなバリエーションの得点で幅を見せられたことに手応えを感じて嬉しかったのを覚えてます。

──では、ディフェンス面は自身でどのような評価を持っていますか?

人生で1番やったんじゃないかなと思うシーズンでしたし、それによって手応えを感じました。自分が出ている時間帯に相手の得点がグッと減ったり、チャージングや24秒を誘ったり、セカンドユニットでディフェンスのインテンシティが上がって、グッとハマる感覚がありました。ディフェンスで5人全員が連携して守りきるということを昨シーズン何度も経験できました。「ディフェンスってこうやってやるもんなんだな」って、バスケ人生で初めて学んだ感じがありました。

──個人で守れるのも良いですが、やはり全員で守れると嬉しいですよね。

三河の選手は遂行力が高いんですよね。特に石井講祐さんや長野誠史さんは僕の動きにしっかりリアクションして、やることをやってくれているので、「これ、練習でやった通りだ!」と思えるシーンが多かったです。ハマる感覚があるのは楽しかったですね。

──連動や遂行力と口で言うのは簡単ですが、やり切るのはすごく難しいことだと思います。秘訣はなんでしょうか?

ヘッドコーチの指導だと思います。「自分たちでやりやすいように組み立てていい」というコーチもいますが、バチッとハマったときは強さを出せても、ハマらない時に自分たちから崩れてしまうこともあります。ライアンはベースをしっかり作って「これはやりましょう」と約束ごとを組み、それを超えてくる相手選手がいた時は違う守り方をするといったように柔軟に変化させます。すごくやりやすいですし、困ったときに立ち返れる場所があるので心強いですね。