7327人の大観衆が見守るクロスゲーム、千葉ジェッツが終盤の集中力とクラッチシュートで秋田ノーザンハピネッツを撃破

2017/05/04
Bリーグ&国内
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文=鈴木健一郎 写真=B.LEAGUE

秋田の足を使ったディフェンスに苦しみリズムを作れず

5月3日、千葉ジェッツが秋田ノーザンハピネッツと対戦した。千葉はホーム最終戦で『大感謝祭』と銘打った様々な企画を実施し、7327人の観客を集めた。会場となった千葉ポートアリーナは選手入場前から熱気に満ちていた。

序盤は互いのディフェンスが目立つ展開に。中2日のスケジュールも影響してか、あるいはアリーナの熱気に気合が入りすぎたか、千葉はボールの回りが良くない。揺さぶっても秋田はしっかりと足を使ってズレを作らせず、ドライブでもゴール下に入り込めない。これをチームではなく個人で打開しようとしたことで状況は悪化。オフェンスリバウンドからマイケル・パーカーの得点、ヒルトン・アームストロングがリング付近へのパスをそのままタップで押し込むなど、豪快ではあるが難しい得点が続き、流れができない。

互いに外国籍選手オン・ザ・コート「1」の第1クォーター、帰化選手のパーカーがいる千葉に対して不利があった秋田だが、ディフェンスから素早い展開に持ち込む良い展開はできていた。惜しむらくはシュートタッチが良くなかったこと。オープンで放った3ポイントシュートが1本でも決まっていれば、一気に流れをつかんでもおかしくなかった。

第1クォーターのラストプレー、タイラー・ストーンがタイミング良くドライブで中央に切り込みレイアップを沈め14-10、千葉にとってはこの試合で初めてのイージーシュートだった。第2クォーターの最初にはストーンが正面から3ポイントシュートを決め、次のポゼッションでは西村文男が細かなドリブルでマッチアップした中山拓哉を振り切り3ポイントシュートを決めて、20-10と一気に突き放す。

それでも千葉はその後が続かない。秋田はオン・ザ・コート「2」の利点を生かし、レオ・ライオンズとイバン・ラベネルにボールを集めて追い上げを開始。田口成浩のスティールからの速攻で中山が得点し20-20の同点に追い付くと、中山が先ほどのお返しとばかりに3ポイントシュートを狙った際に西村のファウルを誘い、フリースロー3本を難なく沈めて逆転する。

富樫とアームストロングのピック&ロールが猛威を振るう

前半を終えて28-29とビハインドを背負った千葉。第1クォーターと第2クォーターともに14点。点差はわずか1とはいえ、明らかに秋田のペースだった。前半を大野篤史ヘッドコーチは「オフェンスの選択肢、シュートの選択肢が良くなかった」と振り返る。ハーフタイムには「強いところをこじ開ける必要はない、フロアバランスを見て良い選択をしよう」と指示した。

それ以上に指揮官が気にしていたのはチームの態度だ。「うまく行かない場合、チームのために口を開くべきだと言いました。それをやらずにフラストレーションを溜めている素振りがあった。その時にハドルを組むなり、『これが必要だと思っている』とはっきり言うことで相互理解ができてきます」

キャプテンの小野龍猛は「正直、負けゲームだと感じていました。全然良くなかった」と振り返りながらも、「そこから試合を作って勝てたことはチームの成長です。秋田にすごく勢いがあったのですが、それに負けなかった」と語る。

第3クォーターは田口の連続得点からのスタートとなったが、ここから千葉が盛り返す。ボールムーブメントが格段に良くなり、インサイドアウトが決まり始める。そうなるとトランジションからイージーシュートの機会も出てくる。

チームオフェンスが機能し始めると、富樫勇樹とアームストロングが目立つようになる。息の合ったピック&ロールから富樫が高確率でシュートを決める。秋田もズレを作らせまいと付いていくが、アームストロングが時おり挟む、スクリーンに行くのではなくそのままボールを受けてリングにアタックするプレーが効果的に決まり、的を絞らせない。

富樫は前半2得点だったのが、このクォーターだけで15得点の荒稼ぎ。3ポイントシュートは2本中2本、2ポイントシュートは4本中3本、フリースローも3本すべて成功と、良い形を作ってしっかりと決めることで流れを作った。

48-44で迎えた残り2分30秒、前からの激しいチェックでスティールに成功したストーンが、ライオンズに後ろから止められ、これにアンスポーツマンライクファウルがコールされる。ストーンはフリースロー2本を決め、続くポゼッションで富樫のパスを受けて豪快なアリウープ・ダンクを叩き込み、観客を総立ちにさせた。

白熱のクロスゲーム、勝負どころの攻守で千葉が上回る

第3クォーターで22-31と圧倒され、8点ビハインドで最終クォーターを迎えた秋田だが、B1残留に向け必死だった。そして千葉だけでなく秋田もシーズン終盤に入りチームとして向上している。第2クォーターと同様にオン・ザ・コート「2」の利点を生かし、ライオンズとラべネルを軸にインサイドを攻め、彼らが外に出ることで作ったゴール下のスペースに安藤誓哉がカットインする形で追い上げる。さらに威力を発揮したのが10本を記録したオフェンスリバウンド。4本のライオンズだけでなく、藤江建典、菅澤紀行もボールへの執着心を見せて千葉を苦しめた。

安藤の3ポイントシュート、セカンドチャンスポイントからのラべネルのバスケット・カウントなど8-0のランで差を詰め、ライオンズのこの試合20点目となる3ポイントシュートで残り5分で66-65と逆転。ここからは得点のたびにリードが入れ替わる白熱のクロスゲームとなった。

試合時間残り1分で73-73の場面、秋田は素早いパスワークからインサイドで待つスコット・モリソンにボールを託す。モリソンのジャンプシュートを背後からブロックしたアームストロングに対しファウルがコールされたものの、ビデオ判定の結果、24秒オーバータイムで攻撃機会が千葉に移ることに。この貴重なポゼッションで富樫がクラッチシュートを決める。

ボールを持つ富樫はアームストロングを呼び、そのスクリーンを使って右へと抜ける。スイッチして正対したモリソンとカバーに来た安藤、2人が富樫に行ってしまったがために、安藤の飛び込みはわずかながら雑になり、モリソンは距離を開けてしまった。一瞬ではあるが、絶好調の富樫にとっては十分な余裕。迷わず放った3ポイントシュートが決まり、76-73と千葉がリードを奪う。その直後、秋田が取ったタイムアウトの間に、東地区2位を争うアルバルク東京の負けが場内アナウンスで伝えられ、アリーナは大いに沸いた。

続くディフェンスでは石井講祐が寄せてライオンズのエアボールとなるタフショットを誘う。残り16秒からファウルゲームに持ち込まれるも乗り切り、千葉が79-76で大接戦を制した。

残留に向け苦しい戦いが続く秋田にも収穫のある一戦に

秋田は敗れたとはいえ、ベストに近いパフォーマンスを見せた。それでも、ここは1勝が欲しかったところ。残り1分までどちらに転ぶか分からない試合を落としたことに、長谷川誠ヘッドコーチは「このゲームを次につなげて、最後の2試合を戦わなければ」と悔しさを噛み殺す。勝負を決めた富樫の3ポイントシュートについても、それが決定打ではなかったと言う。「その前に1対1で負けてしまっている。もっと前の段階でマッチアップを変えるなりの対応をするべきでした。安藤のディフェンスが悪かったわけではないし、富樫の3ポイントが入ったから負けたわけでもない。チームとしての総合力の差です」

問題はむしろ31失点を喫した第3クォーターだ。前半を28失点で耐えて作ったリードが消し飛んでしまった。「1対1でやられて、我々のディフェンスがうまく機能しなかった。早い時間帯にファウルがかさんでしまい、速い攻めに対しファウルで止めるしかなかった。残念な第3クォーターのディフェンスでした」と振り返る。

最終節のアルバルク東京との2試合に向けて、この善戦を生かす必要がある。セカンドユニットの健闘は間違いなく収穫だ。長谷川ヘッドコーチは言う。「第2クォーターに(安藤)誓哉を休ませたのは彼が悪かったからではなく、第1クォーターから出ていたメンバーが良かったので、その流れのまま。控えの選手も結果が出れば自信になる。それは次につながる部分です」

大接戦の勝敗を分けた要因を石井講祐に問うと、しばし考えた後に「最後の勝負どころで焦らずに、互いに声を掛け合ってプレーの確認ができたからだと思います」と答えた。「それぞれが落ち着いて局面の対処ができました」。そういう意味では富樫の3ポイントシュートよりも、その次のライオンズのタフショットを誘った石井のプレーこそが大きかったのかもしれない。

アルバルク東京が栃木ブレックスに敗れ、42勝16敗で並んだ。ただし直接対決は3勝3敗のイーブン、得失点差わずか-4で下回る。ただ、『ハナ差』で最後の直線に入った2位争いについても大野ヘッドコーチは「別に何とも」と素っ気ない。「自分たちにコントロールできるところしかフォーカスする必要がないと思っています。マインドセットして、バスケットに集中します」

キャプテンの小野も同じで「僕たちは試合に集中するだけなので」と言う。ただ、彼の場合はもう一歩進んで、チャンピオンシップの1戦目をホームで行うことにさえ執着していない。「前半戦の戦いで自分たちが落としてきた試合が多くて、後半戦に良くなってきたのが一番。もちろんホームで開催するのが良いのですが、それも気にせずに自分たちの戦いをしたいです」