野本大智

昨シーズン、新体制で臨んだ滋賀レイクスは8勝51敗のリーグ最下位に終わった。特別指定選手時代を含めて在籍最長の6シーズン目を迎える野本大智は、悔しさを糧に新シーズンの躍進を誓う。昨シーズン苦しみながらも得たことが、新シーズンでどのように生かせるのか展望を聞いた。

「チームを勝たせられる存在が滋賀には必要」

──昨シーズンの振り返りをお願いします。

チームとして悔しい結果でした。シーズンが始まる前に、周りから最下位を予想されていたので、それを覆したい気持ちで挑みましたが、最下位で終わってしまいました。勝利数もかなり少なく、レイクスを取り巻く人たちの期待に応えられなかったです。皆さんを笑顔にする試合が少なかったなと。

──チームの結果だけを見れば苦しいシーズンでしたが、野本選手個人としては得るものが大きい1年だったと思います。

それは間違いないです。選手としてもそうですが、キャプテンを任せてもらって成長に繋がるシーズンでした。悔しい思いをたくさんした分、得られたモノも多かったです。

──メンタル的にキツかったり、キャプテンとして悩むことはありましたか?

常に全力疾走しているイメージだったので、キツいと思うことはなかったですね。結果はネガティブな試合が多かったですが、自分自身の成長を感じることができましたし、チームとしても成長のないシーズンではなかったです。やりたいことがハマって、良い試合もありましたし、ずっとネガティブな気持ちで過ごしていたわけではないです。

──全力疾走で駆け抜けたということですが、シーズンが終わってみて「こうすればよかった」と思うことはありますか?

そういうのもないです。自分が考えられる範囲でやるべきことはやり切りました。連敗もありましたし、自分が試合に絡めない時期もありましたけど、その中でもやるべきことはぶらさずにできました。ただ、自分の責任で落とした試合もあったと感じているので、それは課題と受け止めて、今シーズンに向き合っていきます。

──2月のバイウィークにインタビューした時は「強豪に勝ってこそ力が示せる」と言っていました。再開後、千葉ジェッツや名古屋ダイヤモンドドルフィンズにも勝利しました。うまくいく試合といかない試合の違いは何か見えましたか?

その試合ごとに敗因は違っていました。前半はリバウンドで苦しみましたが、後半は修正できました。クロージングでのガードの責任は大きい要素だと思っています。例えば、最終戦の京都ハンナリーズ戦は競った展開までは持っていきましたが、最後は岡田(侑大)選手に決められて負けました。チームを勝たせられる存在が滋賀には必要なので、僕はあのように試合を決められる選手になりたいです。

野本大智

「もう1度、滋賀でチャレンジしたい思いが強かった」

──オフにはアメリカへトレーニングに行っていましたね。これは何か気持ちの変化があったのでしょうか?

シンプルに誘ってもらっただけですね。以前も誘ってもらったのですが、その時は予定が合わなくて。今回は断る理由は特にないし、違う環境で新たな刺激や知見が得られると思ったので行ってきました。1週間でこんなに得られるのかと思うほど充実した時間になって、身体の動かし方や使い方、歩き方、走り方、ジャンプの仕方とか、1からいろいろと学べました。スキルコーチが1人いるくらいの規模だと思って行ったんですが、9人くらいいてビックリしました(笑)。

──家から出ないことで有名な野本選手が海外に行っているとみんな驚いていました。ちなみに今までのオフもスキルコーチに習ったりすることはあったんですか?

習うことはあまりないです。体育館に行ってシューティングしたりとか、いつもオフは決まった過ごし方で、あまり外に出ていかないです(笑)。

──このオフに新たに複数年契約を結びました。リリースのスピードを見ると早い段階から継続を決めていたのかなと。

次のシーズンも滋賀でやりたいと考えていましたし、他の選択肢を探すという感覚はまったくなかったです。本当に昨シーズンの悔しさがありますし、自分がチームを勝たせられなかった分、もう一度滋賀でチャレンジしたい思いが強かったです。

──引き続き、前田健滋朗ヘッドコーチが今シーズンも指揮を取りますが、昨シーズン一緒にやってみてどのような印象を持っていますか?

言葉にするのは難しいですけど、 自由な印象があります。今までは「これはしないでください。これをしてください」というコーチが多かったです。もちろん「ここは変えないといけない」とか話しますが、その中でも選手に委ねる部分が大きいコーチです。僕も自分の判断でプレーできましたし、それがあったからこそ成長に繋がりました。それぞれが強みや役割がある中で、たくさんトライさせてもらっています。ステップアップを求めるのは当然ですが「こういうことにもチャレンジして欲しい」と幅を広げてくれます。

──先日のチームの記者会見では「勝率5割を目指して、CSや優勝の可能性を繋ぐ」という具体的な数値目標がクラブから出ていました。選手同士で目標について話すことはありますか?

チームの中で話す機会は多いです。この間も大きな目標に対しての中期や短期の目標を話しました。昨シーズン最下位だったチームが、ここからどこまで上がっていけるかは注目されるポイントだと思いますので、勝率5割を目指すのはすごく面白いチャレンジになるし達成したいと話しています。

野本大智

「ディフェンスを伸ばさないと勝ちは見えてこない」

──外国籍選手は入れ替わった一方、日本人選手の多くは継続しました。ロスターに関してはどのような印象ですか?

新しい日本人選手は入ってこないので、言ってしまうと最下位の日本人メンバーがそのまま残った形です。この中で自分たちがどれくらいステップアップして成績を変えられるかというチャレンジになります。昨シーズンから一緒にやっているメンバーなので、ケミストリーは高めていけるシーズンです。外国籍選手のライアン(・クリーナー)は2シーズン前のB2の時に一緒にプレーしていて、僕は彼と相性が良い印象があるのですごく楽しみです。

──新加入のザック・オーガスト選手とトーマス・ウィンブッシュ選手の印象はどうでしょうか?

オーガスト選手はアスレチックで、ディフェンスでも貢献してくれる選手だと思います。あとはロブパスに合わせてくれるイメージがあります。僕ももちろんそうですけど、游(艾喆)のロブパスからオーガストがダンクしてくれるんじゃないかなと。ウィンブッシュ選手は何でもできるので、昨シーズンのキース(マーキース・カミングス)みたいなポジションかなと。2人ともハードワークな印象があります。僕らは受けて立つ立場ではなく自分たちからつかんでいかなきゃいけないので、すごい合うと思います。

──記者会見でフロント陣からはディフェンス強化への言及がありましたが、選手としてはどのように受け止めていますか?

そこが一番大きな課題ですね。ディフェンスを伸ばさないと勝ちが見えてこないのは間違いないです。選手一人ひとりが責任を持って、1対1を守ったり、ディフェンスリバウンドの意識を持ったりすることが重要になってきます。今回の補強でリバウンドの高さを生かせる選手が入ってきてくれました。もちろんガードの僕らも積極的に絡むし、昨シーズンよりもエナジーを持って臨んで、簡単にやられる場面を減らしていきます。

──開幕節がアウェーで佐賀バルーナーズ戦、ホーム開幕が京都戦です。何にフォーカスして臨みますか?

一つひとつの試合に向き合って、勝ちに貪欲にやっていくしかないです。勝率5割は1回勝って1回負けてを繰り返していたら達成できない目標です。相手がどうこうではなくて、常に僕たちのやるべきことにフォーカスして、 毎試合大事に戦っていきたいです。

──最後に応援してくださる方にメッセージをお願いします。

昨シーズンの悔しさを晴らす大事なシーズンになります。僕自身、強い気持ちを持って挑みますし、ファンの皆さんを笑顔にして、喜んでもらえるゲームをたくさんします。チームみんなで良いシーズンにしていきますので、応援よろしくお願いします。