文=丸山素行 写真=B.LEAGUE

新人王の有力候補「活躍していれば自ずと付いてくる」

9月に開幕したBリーグも残すところあと3試合。チャンピオンシップ出場チームは出揃ったものの、東地区では優勝争いがまだ続いていて、残留プレーオフ回避に向けた戦いも熾烈を極めている。チームの行方に注目が集まる一方で、各個人賞の行方も興味深い。

4月29日に行われた富山グラウジーズ戦に勝利し、チャンピオンシップ行きの切符を手にしたSR渋谷で、『新人賞』の座を虎視眈々と狙っているのがベンドラメ礼生だ。

「レギュラーシーズンで最も活躍した新人選手1名に与えられる」とBリーグが定義する『新人賞』を狙っているかと尋ねると、「もちろん、もらえるものならもらっておきたい」と落ち着いたトーンで答えた。もっとガツガツと意欲を燃やしているかと思っていたので、その口調は少々意外だった。

ただ、それは取材で新人王への気持ちを語るのではなく、コート上でのプレーで勝ち取るという意欲の表れだ。「活躍していれば自ずとそれは付いてくると思っています」とベンドラメは言う。「今は一つひとつの試合で活躍することを目標に頑張っているので、試合で印象付けられるプレーがしたいです」

「他の新人たちも頑張っていますから、どうなんですかね」と他の候補選手のことも気にかけるが、「自信はもちろんあります」と強気な言葉を口にした。候補選手は多いが、シーズンを通じて主力として活躍してきた選手は決して多くない。有力候補であることは間違いなく、あとはプレーでライバルの上を行くだけだ。

Bリーグで得た手応えと、そこから生まれた責任感

新人とはいえ、2016年1月にアーリーエントリーで日立サンロッカーズ東京に加入し、昨シーズンのNBLではプレータイムは十分でなかったが17試合出場と経験を積んでいる。そしてBリーグ開幕前にはアメリカで充実したトレーニングを行った。開幕前の『TIP OFFカンファレンス』では新人ながらSR渋谷の選手を代表して参加。この時点から「新人王を狙う」と公言してきた。

開幕当初はベンチスタートが主だったが、恐れを知らぬ果敢なプレーでチームに貢献。今年に入ってからは先発起用も増えた。シーズンが進むにつれて、ベンドラメ自身も自分のプレーが通用するという手応えを感じていったという。

「開幕からやってきて、自分のプレーで流れを変えられるというのは、自分の中でも感じていました」

ただ、プロの世界でその手応えを楽しんでいる余裕はない。チームの戦力として認められることで、彼の中では責任感が増していった。

「良い流れを作ることもあるし、悪い流れも作ってしまうプレーもあるので、すごく考えるようになりました。時間がない時にボールを預けられることが多くなってきて、ミスはできないし、気持ちの良い終わり方をしないといけない。そういう意味で責任というのはすごく感じるようになりました」

『新人賞』の資格がある新人はベンドラメを含め26人いる。その中であえて1人ライバルを挙げるならばと問いかけると、「小島元基」の名前を挙げた。京都ハンナリーズの小島は、ベンドラメとともに東海大学でインカレを制覇した同期のメンバーだ。だが小島は日本代表候補強化合宿で故障し、約3カ月間戦列を離れた。

「ケガする前は俺か小島のどっちかだろうなって思っていたんです。だけど、あいつはケガをしちゃったんで、ないかと思います」。気の知れた仲だけに、ケガを心配する言葉はない。そして落ち着いた口調で「第一有力候補だと思ってます」とコメントし、自信をみなぎらせた。

Bリーグの記念すべき初代新人王は、ベンドラメの手の届くところにある。それをしっかりとつかみ、自分のものにできるか。それはシーズンの最後をどう『締めくくるか』次第だ。

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