NBAでの実績に加え国際経験もある異色のキャリア
Bリーグの誕生による大きな変化の一つに、外国籍選手のレベルアップが挙げられる。アルバルク東京のディアンテ・ギャレット、千葉ジェッツのヒルトン・アームストロング、サンロッカーズ渋谷のロバート・サクレなどNBAで数シーズンに渡ってプレーした経験のある選手たちの存在が、リーグの活性化に大きく貢献したのは間違いない。
そんな『元NBA』の中でも一番のネームバリューを持つのが、三遠ネオフェニックスのジョシュ・チルドレスだ。
チルドレスの経歴を簡単に紹介すると、2004年のNBAドラフトで全体6位指名を受けてアトランタ・ホークスに入団。プロ1年目から4シーズン連続でチームの主力として、1試合平均2桁得点を記録する。
2008年からは、欧州を代表するギリシャの名門オリンピアコスBCに在籍。当時は今以上にNBAで十分に契約可能なアメリカ人選手の海外挑戦は異例なものであり、彼のオリンピアコス加入は、アメリカスポーツ界における大きな話題となった。
2010年にはNBAに復帰。フェニックス・サンズ、ブルックリン・ネッツ、ニューオリンズ・ペリカンズに在籍。他にシドニー・キングス(オーストラリア)などでのプレーを経て、三遠に加入している。NBA通算391試合出場、平均9.1得点、4.7リバウンドの成績は、現在Bリーグに在籍している元NBA選手の中では頭一つ抜け出ている。
大学でもNBAでもバスケで『生涯の友人』を得る
「バスケットボールを始めたのは6歳で、兄がプレーしたので自分も続いたんだ」とチルドレスはきっかけを語る。ちなみにバスケ以外のスポーツに関しては「野球、アメリカンフットボール、サッカーなどいろいろなスポーツに挑戦したけどうまくいかなかった」と本人曰く才能がなかった模様だ。
高校時代には「バスケの上達を助ける」とのコーチのアドバイスを受け入れてバレーボール部に在籍したが、しっくりいかずに1年間のプレーで終わっている。
一方『本職』のバスケットボールでは早くから頭角を現した。高校生の時には全米中から選抜された有望株を集めて行われる伝統の『マクドナルド・オールアメリカン』に出場。この試合への出場は、全米有数の評価を得ている高校生であることを意味しており、当然のようにチルドレスの元には数多くの大学から奨学金のオファーがあった。その中で彼が選んだのは地元カリフォルニア州の、アカデミックの分野でも全米有数の名門であるスタンフォード大学だ。
「多くの学校から誘いがきた中で、スタンフォードを選んだ理由はチームの雰囲気だ。チームメートの人柄も自分と似ていて、ここが自分に合っていると感じたんだ」
このように大学選びの理由を語るチルドレスは、1年生から試合に出場し、2年、3年とエースを務める。そして3年生の時、チームを所属するPac10カンファレンス優勝に導き、その時のカンファレンス最優秀選手賞を受賞している。
このような華々しい大学時代だったが、その中で最も印象に残っていることを聞くと「フレンドシップ」と言う。彼にとって生涯の友人を作ることができたのが大学時代なのだ。また、バスケットボールに関しては3年生の時、全米中継での(同じカンファレンスの強豪)アリゾナ大戦でブーザービーターを決めた試合が一番の思い出だ。
上記のような活躍により、3年生のシーズンを終えるとチルドレスはNBAドラフトにエントリーする。「ドラフト前、代理人からは全体5位から19位の間で指名されるだろうと言われていた」という事前予想の中、チルドレスは全体6位でアトランタ・ホークスから指名を受ける。これには「とても驚いたし、NBA選手という子供の頃からの夢が叶った」と振り返る。
最初はギリシャ、今は日本へと旅するキャリア
ここまでで触れたようにNBAで確固たる実績を残したチルドレスだが、NBAでの一番の思い出を語ると、ここでも「フレンドシップ」という言葉が出てくる。「僕にとって、バスケットボールとは友情を育むものでもあるんだ。NBA時代もたくさんの友人ができた。特にマービン・ウィリアムス、ザザ・パチューリア、チャニング・フライといった選手たちとはとても仲が良いよ」
「フレンドシップ」とともにチルドレスのバスケットボール人生を語る上で大事な要素となってくるのが「チャレンジ」だ。当時、バリバリのNBA選手の欧州行きで大きな話題となったギリシャへの移籍も「良いオファーをもらったし、新しいチャレンジをしたかったからだ」と言う。オーストラリアでのプレーも彼自身が新たな経験を望んだからであり、それは今回の三遠への加入にも通じるものがある。
大学時代に一緒にプレーしたマット・ロティックは、大阪エヴェッサなどbjリーグで長らくプレーしていた選手。また、ドリュー・ヴァイニー(富山グラウジーズ)、マーカス・ダブにローレンス・ヒル(京都ハンナリーズ)も旧知の選手だ。ただし「三遠に入る前、日本でプレー経験があったり、プレーしている知人たちに特に相談することはなかった」と、チルドレスは彼らに連絡することなく日本行きを自分で決めたという。この思い切りの良さは彼らしい「チャレンジ」なのだろう。
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