ジャワッド・ウィリアムズ

重傷を負いながら異例の再合流「声で貢献できる」

アルバルク東京のベテランフォワードであるジャワッド・ウィリアムズは右足アキレス腱断裂の重傷により、シーズン終盤のコートに立てなかった。しかし、彼の存在はチームにとって大きな助けとなった。

3月23日の名古屋ダイヤモンドドルフィンズ戦で負傷した後、すぐにアメリカに帰国し手術を受けたウィリアムズは、チャンピオンシップの琉球ゴールデンキングス戦でチームに合流した。右足をブーツ型の装着具で固めながらベンチサイドにいることは大きな驚きを与えた。

外国籍選手がシーズン途中に手術が必要な大ケガを負った場合、すぐに治療のために帰国。そして復帰できないのであれば、帰国したままでシーズンを終えるのが一般的だ。今回のウィリアムズのように、プレーできない上に装着具を着けて移動もままならない中、チームの一員であることを示すのは稀有なこと。しかも「ノースカロライナからミネアポリスまで3時間、そこから羽田まで12時間、羽田から沖縄まで3時間くらいかかった。ためらうことはなかったけど、移動は長かったね」と本人が語るロングフライトを経てのチーム合流である。

ただ、当の本人にとっては「手術のために帰国する前、スタッフにはプレーオフには戻ってくると伝えてあった。新潟とのクォーターファイナルが始まる前から、沖縄行きの飛行機のチケットの準備はしていたんだ」と予定通りの行動だった。

「ケガの後、すぐに地元のノースカロライナで手術の日程を決めた。だから帰国してからスムーズに物事を進められた。チームがセミファイナルに勝ち上がることも含めて、沖縄での合流は予定通り。練習をサポートして声援をおくる。コートに立てなくても声でチームを助けることはできる」

ジャワッド・ウィリアムズ

「ルカと僕は、勝利を強く渇望している点で似ている」

外国籍選手のウィリアムズがここまでA東京のために尽くすのは、チームとの間に深い絆を感じているからこそ。「僕はチームに忠誠を示す人物でありたい。アルバルクはチーム、マネージメント、ファンが僕のことをとても大事に思ってくれている。だから、戻ってサポートするのは当然のことだ」

この一体感は、アメリカカレッジ界随一の名門である母校ノースカロライナ大に在籍していた時に匹敵するものだ。「本当の家族のような雰囲気を感じられるのは、長らくなかったことだ。これは僕にとって大きな意味を持つ。自分に大きな関心を持ってくれる人々のためなら、仕事はやりやすいもの。それにアルバルクは僕だけでなく、妻や子供たちにもとても良くしてくれる。これは本当に自分にとって重要なんだ」

もう一つ強調したのは、ファンのサポートだ。「プレーしない選手のことは気にしないチームのファンだっている」と過去の経験を振り返る彼は、自身が戦線離脱した後も気にかけ続けてくれたことに大きな感銘を受けた。

「ファンの支えは本当に素晴らしい。ロードゲームにも応援にかけつけて、チームを勇気づけてくれる。そして僕が大ケガをした後、SNSで『with31』のハッシュタグをつけて励ましてくれた。これを見た妻は感動して泣いていたよ。ファンもアルバルクファミリーの一員だ。こういう繋がりは簡単に得られるものではない」

セミファイナルで再合流してからのウィリアムズは、次のようなことを意識して振る舞ったと言う。「ベンチではメンターでいることを心掛けた。ルカ(パヴィチェヴィッチ)やコーチ陣は、いろいろと考えないといけないことがある。そこで自分はコーチとは違う視点を提示することで、より良い決断ができる助けをする。選手たちを元気づけ、ポシティブな雰囲気をもたらしたいと思っていた」

コーチと異なる見方を提案する、これができるのは指揮官のパヴィチェヴィッチと深い信頼関係があるからこそ。「ルカとは言いたいことを言える素晴らしい関係にある。僕たちはテクニック、細かい部分を大切にし、勝利を強く渇望している点で似ている。彼はベテランとして僕に意見を求めてくれる」と語る。

ジャワッド・ウィリアムズ

「同じチームでリーグ連覇は初めて。今回は特別だ」

千葉ジェッツとのファイナル、第4クォーターに猛追を浴びた時間帯には、「我慢しよう。負けないためではなく、勝利をつかむためのプレーをしよう」と、受け身にならないようアドバイスし続けたそうだ。

苦しんだ末に勝ち取った連覇に「自分がプレーしていなくても優勝はうれしい。NCAA、フランス、トルコでタイトルを取ってきた。前にフランス、トルコで2年続けてカップ戦を勝ったことはあったけど、ただ、同じチームでリーグを連覇するのは初めてだ。今回は特別だ」と喜ぶ。

36歳で今回のような大ケガを負えば、キャリアの幕引きを考えてもおかしくない。ただ、ウィリアムズにその意思は全くない。A東京はリーグでも屈指のタフな練習を行なっているチームだが、年齢を理由に自分だけ練習を軽くしてほしいと思ったことはない。

「それはチームメートに対してフェアじゃないからね。僕はゲームが好きだし、ゲームに勝つための練習も好きだ。年を取って他の選手と一緒の練習量をこなせない、となったら引退すべきだろうけど、まだそのつもりはないから、チームメートと同じ練習量をこなすだけだよ」

今は来シーズンの復帰に向けて高いモチベーションを持っている。「このオフシーズンはリハビリを週5日、ワークアウトを週4日こなす。ジムに毎日6時間いて、リハビリ、プールやウェイトトレーニングを行う。6月末にはバスケットボールの練習を再開するつもり。それ以外にもオフシーズンは自分が主催するキャンプとかやることは多いけど、やっぱりバスケが好きだから」

今シーズンの挑戦を「素晴らしい旅だった」とウィリアムズは総括する。「選手、スタッフ、チームに関わる全員が、チームを第一に考えて自分を捧げた。何かトラブルが起きたら誰かがステップアップして穴を埋めてくれた。齋藤(拓実)やキャプテン・ショウ(正中岳城)と普段プレータイムが少ない選手も、出番がきた時はしっかり活躍してくれた。そういうメンバーが揃うチームは多くはない」

「僕のバスケットボールへの飢え、試合への情熱に変わりはない」とウィリアムズはプレーすることに意欲満々。勝者のキャリアはまだまだ続きそうだ。